転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

キャワルンズ再び

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 ほんの何時間ぶりのキャワルンズ3人。その3人は地面に転がされて縛られていた。キャワルンズは私に気付くと睨みをきかせて叫ぶ。


「このクソガキ!!あんたのせいよ!」
「なんで私たちがこんな目にあわなきゃいけないのよぉ!!」
「絶対に許さないから!!」


 ビクッとした私を守るようにデュースさんが抱き締める。


「なんだあの女たち!」


「ティアちゃんに言っているようですが…」


 状況が上手く理解できていないアルベルタとビスは困惑しつつも、ティアを悪く言っているだろう女3人組に苛立ちを隠せない。


「ふざけるな!!黙れ!それ以上その口を開こうものなら二度と喋れないようにしてやるぞ!!」


「エリックさん、それは立場的にもいけませんよ?ここは秘密裏にるのがコツですよ。ここでは目撃者が多すぎますから………ねぇ?」


「「「ヒィッ!!」」」


 キャワルンズはニールさんにガクブル状態。会話は聞こえるけどニールさんの表情までは私には見えない。


 心なしか野次馬のような人だかりもニールさんから距離をとった気がしてならない。いや、確実に距離をとっているな。


「ティアを送ったら別れるつもりだったが…なにやらティアが迷子になっていたのには理由がありそうだ。」


「そうですね。私も気になりますし、アルベルタ様も事情を聞かずに去るつもりは無さそうですし…ちょうど宿屋も探すつもりでしたから空いていれば此処にしましょうか。」


 ビスは同じ獣人でもあるバンに声をかけた。


「すみませんが、ティアちゃんの迷子の件について事情をお聞かせ願えませんか?主人が気になって気になって仕方がない様子なので。もちろん私も気になりますし。」


「おい、何故俺が気になって仕方ないって言うんだ!しかも気になっての部分2回言わなかったか!?」


「ちゃっかり聞いていましたか。それで、同席しても宜しいでしょうか?」


「俺たちもティア嬢がどうしていたのか説明して欲しかったから助かる。」


 バンはビスに返事を返すも、鋭い視線はキャワルンズに向けたままだ。













「すみません~今日泊まれる部屋はありますか?」


「ん?あ、あぁ。大丈夫だよ。泊まろうとしいた客は店の外でやってる騒ぎで逃げて行っちまったからねぇ。今日の新規客は少ないから部屋はいくつか空いているよ。」


「そ、そうですか。では、2人部屋をお願いします。それと、夕食と朝食もセットで。期間は…とりあえず5日間で。」


「あいよ。1泊銅貨8枚、朝晩付きで銅貨6枚貰うからね。先払いで5日間だから銀貨7枚だよ。」


 ビスは銀貨7枚を支払い、部屋の鍵を受け取る。無事に部屋を取れたとアルベルタに伝えようと外に出る。


「アルベルタ様、部屋の鍵を……って何をやってるんですか。」


 ビスが見た光景は、アルベルタとエリックが何やら言い争いをしている場面であり、オロオロとしているティアが2人の間に入り仲介しているというものだ。


 ニールやバン、デュースはというとキャワルンズの相手をしている。




「すまん!遅くなった。こいつらの処分を正式にギルドで登録してきた。処分書を持って来たぞ!」


「「「遅い!!」」」


「うおっ!だから最初に謝ったんだが!?それでティアちゃんは………って無事に見つかったのか!!」


 キャワルンズを見張っていた3人に睨まれ登場したのは、パッチーナの冒険者ギルドのマスターであるテルボーだ。テルボーはティアが合流している事に安堵の息を吐く。



「おいエリック!これからキャワルンズの処分を言い渡すから聞いとけ。」


 エリックはテルボーに呼ばれ渋々そちらへと向かう。不意にアルベルタとティアをチラリと確認すると、アルベルタが「フンッ」と鼻で笑うようにティアの手を握っていた。


「な、な、ぬぁぁああ!!」


 再びアルベルタとティアのもとへと戻ろうとするエリックをテルボーが捕まえ、引っ張っていく。


 その姿に勝ち気に手を振るアルベルタだった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 次回、キャワルンズの処遇が下されます!お楽しみに(°▽°)
 








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