転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

捕縛回避?

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 目の前に滑り込んで来た人物の正体とは、それは先程見かけたはずの人物…


「「「テルボーさん!!」」」


「皆、息ぴったりだな!!そんなに俺の登場を喜んでくれるとは嬉しいものだな!」


 いや別に皆、テルボーさんの登場に喜んでいるわけではないよ。


「テルボーさん、コイツら貴族の名を語るだけでは飽き足らず王家の紋章を刻んだ許可証を盗んで来たようなのです!!」


「何!?それは大罪ではないか。貴族の真似事だけでなく王家の許可証を盗むとは……ブハッ!ククク…」


「テルボーさん?」


 賛同してくれたはずのテルボーさんが急に笑い出したことに目を丸くする検問所の兵たち。



「いや、これを笑うなって…ヒヒっククク。あははは!!あ~面白れぇー!!貴族にも見えない、王家直々の許可証を見せても信頼されないって…エリック最高すぎだろ(爆笑)」


「ひでぇー。テルボーさんだって人の事言えないだろ。」


「ほら俺の場合はパッチーナ名物に入るくらい有名だしぃ?エリックよりは信頼あるんじゃないか?」


 それは信頼があると言っていいのだろうか。吊るされていたのを見る限り、見世物としての有名というか…


「あの…テルボーさん?」


「あーコイツらの言ってることは全部事実だぞお前ら。捕縛なんてした暁にはお前たちの方が牢屋行き確定な。」


「「「へっ!?」」」


 ポカンとする検問所の兵たち。


「だからだな、この貴族らしくない御者をやっている変わり者は紛れもなく公爵家の者で、実力もお前たちより上の第1騎士団の隊長殿だぞ。」


「「「…………………はぁっ!?」」」


 だいぶ間があったな!!これにテルボーさんは大爆笑。エリック隊長は苦い顔して、ニールさんは出番がなくなったことで私の所へこっそり戻って来ていた。


「サラッと馬車に戻った人物もかなりの大物だぞ?なんたって元第1魔法師団の魔法師長殿だしな。今は王都のサブギルドマスターをしている人物だ。」


 ニールさんは私の横で「私は別に大物ではないと思うのですが…」と呟いている。間違いなくニールさんも大物だと思うよ!?


「テルボーさん、後ろの馬車にはバンや、デュースも乗ってるぞ。」


「なにっ!?ハハッ!!それはなんて濃いメンツなんだ。大物揃いじゃないか。各団の長ばかりが集結してるなんてな。こりゃ王都に残っているだろう副長たちは大変そうだな!」


 言われてみればびっくりするほど濃いメンツだ。そして1つ言えることは、エリック隊長の相棒、副隊長のセシルは高確率で大変な思いをしているに違いない。エリック隊長が溜めていた書類とかありそうだ。バンさんやデュースさん達の副長達は分からないけれど。今度会ってみたいな。



「「「す、す、すみませんでしたぁ!」」」


 ひょわっ!!思わずぴょんと跳ねた私をスノウが笑っている。ニールさんも「ティアさんは可愛いですねぇ」などと言って外の声など聞こえてないように振る舞う。


 どうやら検問所の兵達が謝罪した声だったようだ。馬車の窓からそろっとその光景を覗き見る。すると後ろの馬車に乗っていたバンさんとデュースさんが横を通り過ぎるところだった。


「エリック、騒がしいが何をやらかしたんだ?」


「遅い……これ…どういう状況?」



「おぉ!本当にバンとデュースじゃないか!久しぶりだな。元気にしてたか?」


 痛いくらいにバンさんたちの肩を叩くテルボーさん。デュースさんはバランスを一瞬崩しかけた。


「ほ、本物だぞ…」
「ヤバい、バン様かっこ良すぎ…」
「魔法師長のデュース様だ…」
「やっぱオーラが違うぜ…」


 あれ~?エリック隊長の時と反応が違うな。姿を見せただけで受け入れられるって…エリック隊長も有名なはずなのに。


「テルボー殿、久しいな。それで、これは一体?」


「あ~、これはだな、完全にこちらの不手際だ。きちんとした検問を行わず、留めてしまった。」


 カクカクシカジカで説明するテルボーさん。



「おかしい…こっちは…一般検問所じゃ…ないはず。……何故…対応も…経験も…浅い者達が?」


「本来なら特別検問所にはそれなりの者たちが配置されているんだが…今はちょっと間が悪い時でな。人手が足りず、やむを得ずコイツらが配置されていたんだ。」


「何か…問題?」


 なんだろう。嫌な予感がするなぁ。波乱の予感というか…面倒事が待ち構えているような。巻き込まれる事がなければいいけど。








 そんなティアの思いは見事に打ち砕かれる事になる事を今はまだ知らない。

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