転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

【小話】節分

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「これより~豆まきを開催しまーす!!鬼役はこの方、ガル様です!!皆んな拍手でお出迎えしましょう。」


パチパチパチ♪


「はっはっは!!私は王…じゃなくて鬼のガルジールだぞっ。」


「ぎゃー!父上、なんですその恰好!!全身赤に角、牙に金棒なんか持って…ちょっ、こっちに来ないで下さいよー!」


 ぷぷっ。レオンは何も知らされてなかったからパニックになってるよ。






 今日は節分。豆まきしたいって前日にエリック隊長に言ったら「何だそれ?」って言われて説明したのが始まり。簡単に厄災を鬼に例えて豆を投げて追い払うんだよって説明したの。それからエリック隊長はお城へお仕事行っちゃったんだ。帰ってきたら凄く落ち込んでて何事だって思って聞いたら「明日一緒に豆まき出来ない…すまん。」ってとても残念そうに言うの。なんでも魔物が集落を作ったらしく危険だから討伐に行くらしい。代わりにガル様が豆まきに参戦するんだって。豆まきの話しをガル様に話したらエリック隊長の代わりにやる!って張り切って返事をしたのだとか。



 そういうわけで今日はお城にやって来て、豆まきを開催したわけ。鬼のイメージをガル様に伝えておいたらなんと特殊メイクと言うべきか本格的な鬼になりきって登場してきた。レオンは直前まで何するか教えてなかったからガル様の登場にギョッとしてたね。本当は夜にするのがいいらしいけど日中でも問題ないよね!


「どうしたレオンハルトよ。何故逃げ回る。ふはははー!!」


 ガル様ノリノリなんですけど~


「ぎゃーー!父上、正直に言います!!気持ち悪いです!」


「あらあら~レオンハルト豆よ。ちゃんと豆は渡したでしょう?」


「はぃ!?豆は渡されましたが何に使うのかは聞かされてませんよ!?」


 おっとそういや豆の使い方も言ってなかったな。セルーナ様の声で思い出したよ。ごめんごめん。


「レオン、こうやってするんだよ!!」


 私は豆を手に握ると…


「鬼は外、福は内!!」


 ていっと豆をガル様に向かって投げる。ペチッとガル様の背中に当たった。


「ぐぁああー!い、いたいなぁ~」


 痛そうな振りをするガル様。


「いいわよティアちゃん!さぁ私もやるわよー!」


 セルーナ様も片手に豆を持っている。そのまま目にも見えぬ速さで…


バチーン!!


 私が当てた時とは違う音だよ。私の場合はペチッだったのに。


「ぐぎゃあ!いってぇー」


 あ、これ本気で痛いやつ。


「あらー?この鬼まだ倒れないわー。」


 さすが鬼ねと微笑むセルーナ様。美しい微笑みなのにやってる事はどちらかと言えば鬼です。


「なるほど豆まきとはこういう事なのですね。ティア見てて!僕が父上…いやこの鬼をやっつけてやるから!」


 レオンもやる気を出して豆をガル様に投げ出した。それをニヤリと笑ったガル様はサッと避ける。


「なっ!?」


「そんなしょぼい豆攻撃いつまでたっても当たるわけないぞレオンハルト。」


 たしかにセルーナ様のと比べると全然遅かったけど私のよりは速かったよ。


「ふふっ。ねぇあなた達も参戦していいのよ?鬼を追い払いましょう。言いたい事あれば言えるチャンスよ。なにせ相手は王ではなく鬼ですもの。」


 周りで見守っていたルドルフ叔父さんを含めたお城に仕えてる人達の目が変わった。それはもうギラギラと悪い笑みを浮かべてる。


 私とレオンは早急に後ろへと下がる。ガル様はまだ状況が読めてないみたい。


「では宰相である私…おほん。僕からいきますね。ふぅ…これでもくらえぇー!!」


 ルドルフ叔父さんの目やばいよ。


「仕事サボっていつもいつも迷惑かけるなぁ!宰相としての仕事だってあるし、シェリアにも全然会えないだろう!!ストレスで禿げたらどうしてくれるんだぁああ」


 おうおう。だいぶ溜まってたんだね。でも、ルドルフ叔父さん一応文官だからね。ほとんど当たってない。


 ルドルフ叔父さんの心の声を聞いた他の人たちも…


「陛下、いや鬼殿。私の恨み聞いてくれますよね?陛下はカッコ悪いからしたくないだの面倒臭いから動きたくないだので時間通りに動いて下さらない故、我々の行動も不規則で交代時間になっても伝達が上手く行ってない時は時間外労働してるんです!!」


「「「そうだそうだ!!」」」


「陛下はよく政務から逃れて街へお忍びで行かれますが、せめて置き手紙くらいして欲しいのです!最悪の状況も考えて行動しなくてはならないので手間が増えるんです。本当迷惑なんです!!」


「「「その通り!!!」」」


 全方位から囲まれたガル様。これなら避ける場所もない。


「「「鬼は外ー!!福は内ー!!」」」


 手加減も何もない。本気と書いてガチと読むとはこの事だ。


「ちょっ…やめ…いてっ…うわっ!セ、セルーナ!助けてくれっ」


「何かしら?鬼が何か言ってるわ。鬼の言葉は私には分からないの。鬼さんなーに?」


 顔を引き攣らせるガル様。


「お、鬼はこれにて退散させてもらう!!」


 ガル様はそれはもう脱兎の如く走り去って行った。

 その後はルドルフ叔父さんが鬼の役をしてくれて(簡易お面をつけただけ)私とレオンは楽しく豆まきをしたのだった。




♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
おまけ
魔物討伐に向かったエリック



「セシル、あれオーガの集落だな。」


「ええ。そのようですね。」


「ティアが言ってたんだ。今日は節分で厄災に例えた鬼を追い払う豆まきがあるって。鬼ってオーガみたいだよなー。本当は今日、ティアと一緒に豆まきっていうのをする予定だったんだ。なのに、討伐のせいで一緒に出来なかったんだよ。これ厄災じゃね?一体何の魔物だよって思って来てみたらオーガだぜ?まさに厄災の鬼だよな。俺さ、豆まき用に豆持ってきてるんだ。ククク…オーガがちょうど目の前にいるんだよなぁ。俺の憂さ晴らしに付き合ってくれるよなぁ?」


 セシルはやれやれといった感じで少し豆をエリックから分けてもらう。


「行くぜぇ?これが本場の豆まきだ!……鬼は~外っ!!!」


 エリックが投げた豆はオーガの頭を貫き、オーガは倒れる。横ではセシルも「鬼は外?何の掛け声です?」と言いつつエリック同様豆でオーガを倒す。流石に他の騎士達は豆も持っていないので剣で倒している。だがノリの良い第1騎士団の騎士たちは剣で攻撃する度に鬼は外と言ってオーガを斬っていく。はっきり言って異様な光景だ。



 きっとオーガたちは思ったに違いない。
〈鬼は外って怖ぇ…そもそも外なのに…〉






「あっ。福は内って言うの忘れた。」


 エリックはふと討伐終了後に呟いたのだった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 皆さんは豆まきしましたか?恵方巻は食べましたか?

ティア「エリック隊長おかえりー」

エリック「ただいま!ちゃんとオーガ倒してきたぞー。豆まき楽しいな!」

ティア「え"?追い払うとかじゃなく倒した?一体何を討伐したんだろ(ボソッ)」











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