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015:地下3階1
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次に目指すのは地下3階だ。
調査としては最低限5階までは到達する、可能ならば昇降機を発見することと、さらに6階への階段を発見してほしいと決まっている。
最低限到達すべき目標のちょうど中間地点までは来たということだ。ここからは目標フロアへ到達するだけでも時間がかかるようになってくる。そろそろ長時間の探索を考える段階へ入りつつあり、その点でもギルドの方ではセルバ家から委託されているというキャンプ用品をあれこれと見せられ、これらの評価もと頼まれている。ローグといってもサバイバル系の能力に振っているフリアなどは興味津々ではあった。
1階は相変わらず角を曲がったところにいるラットをエディが盾で押しやっている間にさっさと通り抜ける方法で通り抜けると、以降は罠も魔物も遭遇することはなく真っすぐ階段へ。
さらに2階もフリアの気配察知を頼りに魔物との遭遇そのものを回避する方向で最短で3階への階段に到達した。
問題はここからだった。階段を下りた場所が今回も安全な部屋だったので、ここで準備を整える。そして階段の正面にある扉にフリアが取り付いたところでさっそくこれまでとは違う展開を迎えた。
「鍵なし、罠なし、気配あり。なんだろ、動かないね」
「いきなりか、動かないのなら仕方がない。まずは3階の最初の魔物ってのを確かめるか。エディ、頼む」
「分かった。場所を換わろう」
フリアが下がり、クリストが扉が開いたところから中を確認、状況次第では即座に戦闘に移行できるように待機。体勢が調ったところでエディが扉に手をかけると、それをそっと押し開けた。
薄暗い部屋の中にランタンの光が差し込む。その光の中でズリズリと何かがこすれる音が響き、太く長くとぐろを巻いていたものがゆっくりと動き出した。
「ジャイアント・スネークか、見たところそこまででかくはないのが救いだな。エディ、頭を頼む。俺が後ろから行く」
部屋に入ったエディに対してジャイアント・スネークが頭をもたげ、とぐろを解く。頭からかみつきにくるか、それとも尻尾を振り回して打撃を狙うか。
エディが盾を構えたところへ、頭上からかぶりつこうかという勢いで頭が高く上がり、そして降ってくる。それをじっくりと見定めていたエディは構えていた盾を大きく振り回し、襲いかかってきた頭部を殴りつけた。
かみつきに行ったところを大きく横へと弾かれたジャイアント・スネークは、その勢いを尻尾へと移し、振り回して盾を振り上げて開いたエディの胴体へたたきつけようと狙う。
だが、それを待っていたのがクリストだった。エディの背後から付いてくるようにしていたクリストが左側へ大きく踏み出し、たたきつけようと向かってくる尻尾に対して剣を構え体ごとぶつけるようにして突撃した。
尻尾の勢いを利用して剣は深々と刺さり、そしてクリストの突撃の勢いが振り回された尻尾の力を上回ったことでジャイアント・スネークの体が引っ張られ伸びてしまう。そうなればあとはエディが目の前に落ちてきた頭部に剣を突き刺して終わりだ。
全長5メートルにはなろうかというジャイアント・スネークも、より強度の高い冒険者の前ではなすすべもなかった。
「よし、片付いたな。もういいぞ」
いくら部屋が広いとはいってもジャイアント・スネークが全力で暴れ回るには手狭で、戦闘のために入っていたのはエディとクリストだけだった。他の仲間は戦闘終了を確認してからの入室になる。振り回される尻尾に巻き込まれることは避けたかったし、部屋の外からでも魔法は届く。
さっそく頭部と首の付け根から魔石を取り出し、念のため討伐証明として牙を切り取る。ギルドへ持ち帰ればこのジャイアント・スネークの正式な名称や毒の有無などがわかるだろう。
その間にフリアは入ってきた扉から見て左右の壁にある次への扉を調べていた。
「右、鍵あり、罠なし、気配なし。左、鍵なし、罠なし、気配なし」
「鍵あり? 早速か。ひとまず鍵は置いておいて、なしの方から埋めていくか」
方針が決まったところでフリアが扉を開ける。
「あれ、同じ広さの部屋だね。正面と左右に扉」
階段室、そして先ほどの部屋と続いて、さらに同じ広さの部屋だった。違いは扉の枚数くらいのものだ。
フリアは引き続き扉を順番に調べていく。
「うーん、全部鍵なし、罠なし、気配なしだよ」
「よし、まずは正面から」
部屋に入ったところから真っすぐに部屋を横切り、正面の扉を開ける。
「おー、やったね。宝箱発見」
「来たか。今回は早かったな。てーか部屋のサイズはまた一緒か? ここは同じ大きさの部屋が連続する作りか?」
「そうかも、この部屋は箱あり、扉なし、罠もなさそう。さっきの部屋の扉の先が同じ広さの部屋なら、そういうエリアっていうことだろうね」
部屋の中には罠などはなく、そして今回は扉もなかった。その代わりに部屋の奥、壁際には宝箱が静かに座していた。
「鍵なし、罠なし」
そそくさと宝箱に近寄ったフリアが確認する。
「開けていいぞ」
わーいと言わんばかりに蓋に手をかけてさっと開けた。
中を見てその結果に満足したのかにっこりと笑う。
「何だ、いいものだったのか?」
「うん、宝石だね。5個ある」
「宝石! 2階は結構良かったけれど、今回はどうかしら」
その結果にカリーナが反応する。やはり結果が分かりやすいものは盛り上がる。
半透明で中央に金色の入った茶色いもの1つ、細いしま模様のある緑色のもの1つ、桃色の石に緑色の模様の入ったもの1つ、青い石の中に黄色の斑点のあるもの1つ、暗い灰色のもの1つ。
「宝石というよりも石っていう感じね‥‥ちょっと地味じゃないかしら」
「鑑定を楽しみにしておけばいいさ。だが幸先はいいな」
まだ3階の探索は始まったばかりなのだ。戦闘もあったが、まださして移動すらしていないというのにすでに宝箱があったのだ。これは先行きに期待が持てる展開だった。
「さあ次だ。戻って右へ行こう」
部屋を一つ戻り、左右の扉のうち右を選択。そちらへ進むとそこもまた同じ広さの部屋になっていた。そして扉は正面と右。
「どちらも鍵なし、罠なし、気配あり。何となくだよ、何となくだけど正面の扉の方が気配が大きい気がする」
「サイズ違いか種類違いか、よし、まずは右を見よう。さっきのやつと同じくらいか? わかった、エディ頼む」
気配の大きさが先ほどの部屋にいたものと同じ程度ということであれば脅威度もそこまで差はないだろうと思われた。であればやることは同じだ。正面にエディ、脇にクリスト。できるだけ魔法は使わずに片付ける。
「なるほどジャイアント・スネーク、ここはそういうエリアか」
開けた扉の先では、先ほどの部屋と同じ程度の大きさのジャイアント・スネークが、こちらも同じように頭をもたげ、ズリズリと尻尾を移動させようとしていた。
同じ魔物、同じ状況ということであれば、やることも同じだ。
エディが盾を構えて頭を誘い、これを弾く。そしてたたきつけようと動いてきた尻尾めがけてクリストが突撃し、これを縫い留める。あとは頭をつぶして終わりだ。
「よし、終わりだ。部屋の大きさも同じだし、違いは扉がどこにあるかだけか。もしかしたらどの部屋にいるのかは来るたびに違うのかもな」
「ありそうだな、魔物のいる部屋、宝箱のある部屋がそのたびに違う。ありそうだ」
この部屋にはあとは扉が1つ、左側の壁にあるだけだった。
「鍵なし、罠なし、気配あり。これは同じパターンだね」
「決まりだな。あとはその大きそうな気配というのがどうなのかくらいか。続けて進むぞ、エディ頼む」
そうなれば展開はまったく同じだ。扉を開け、エディがジャイアントスネークを正面から相手取り、クリストが尻尾を止める。やることは変わらない。
「うん、左の扉が鍵なし、罠なし、気配大きいのあり、これがさっきの扉の先と同じところだろうね。それで右が鍵なし、罠なし、気配なし。うん。最後正面、あれ?」
「どうした?」
左右の扉を確認して、正面の扉を確かめようと近寄ったフリアの動きが止まった。反応は危険があってのものではない。何か違うものがあったのだ。
「見て、これ、何かはめるようになっているよ」
フリアが指し示した場所、扉のノブの上に5センチ程度の幅の何かをはめ込むような形のスロットが付いていた。
「これは、別にカギが必要とか、そういうものか?」
「ちょっと調べてみる、待ってね‥‥うん、駄目だね、強引に開けられるようなものでもなさそう。これはここ用の鍵が必要なんじゃないかな」
ここに来て初めての展開だった。扉を開けるためには専用の鍵が必要になりそうだった。
「これは考えたところで意味はなさそうだな。別のエリアで鍵を見つけてこいってことだろう。まずは他を埋めていこう。次はそっちの、大きなやつがいそうな所を確認してみるか」
現状専用の鍵といっても何の手がかりもない。地図を埋めていくうちにどこかで手に入るなり手がかりを得られるなりするだろうと考えられた。今することは地図の他の部分を埋めていくことだ。
大きめな気配が感じられるという扉に取りかかる。
基本的にやることは同じだ。エディが前で構え、クリストが攻撃に入る。他の仲間は必要とあれば参戦できるように準備して待機だ。
「なるほど今までの奴らよりは大きいな。だがこの程度ならやることは同じだ」
扉を開けて確認された部屋にいたのは今までと同じジャイアント・スネークだったが、大きさが違っていてこちらの方が明らかに大きい。これだけ大きさに違いがあれば脅威度も上がりそうなものだが、それもこのパーティーにとってはそれほど意味はなかった。自分たちもまた十分な経験を積んだ強力なパーティーなのだ。
これまで通りエディが構えて頭部を待ち受けこれを弾く、振り回される尻尾に対してはクリストが剣を差し動きを押さえる。それで終わる。フリアが参加する分には構わないが、魔法が必要になる段階までは行かなかった。
「よし、こんなもんだ。確かに大きいが、しょせんはジャイアント・スネークだな」
「色が違うような気はするね。こっちの方が茶色いのかな。さっきまでのは少し紫が入っていなかった?」
ここまで出番のないフェリクスがジャイアント・スネークの魔石を取り出しながら感想を言う。言われてみれば確かに少し色は違うか。これもただのサイズ違いなのか、種類が違うのか、ギルドに戦果を持ち帰れば鑑定でわかるだろう。
「扉に鍵なし、罠なし、気配あ。さっきまでの大きさになるかな。たぶん同じだね」
部屋の広さも同じ、扉のタイプも同じ、気配も同じ。
ここはそういうエリアということで確定で、この扉の先も同じなのだろう。
扉を開けた先にいたのは今まで通りのサイズのジャイアント・スネークで、これまでどおり手早く処理されて終わった。
そして部屋の広さも変わらず、扉も正面に一つ。
「鍵なし、罠なし、気配なし、と。開けるね」
開けた先は同じ広さの部屋で、今度は扉がなかった。
「残念何もなし。運が良ければ宝箱があった部屋なのかも」
「そんな感じだな。これでこっち側が埋まったか。戻ってその鍵が開けられないところまで戻って正面だな」
同じ広さの部屋が続くエリアも一方の端が確認できたことになった。
その向こう側は専用の鍵がなければ開けられない扉の先ということになるのだろう。その鍵が必要な部屋まで戻ると、残る正面の扉の先を確認した。
「お、部屋じゃないな。そうなると部屋が続くエリアはここで終わりってことか」
扉の先は通路になっていた。
フリアが先行して先へ進むと、通路は右へと曲がっている。その先もしばらく続き、そして扉へと行き着いた。
「鍵あり、罠なし、気配あり。うーん、大きいよ。かなり大きい。それに音がするね、これは特別大きなジャイアント・スネークだと思う」
「このエリアのボスってことか? よし、エディと俺が突っ込む。フェリクス、一発頭に魔法を頼む。ダメージを稼ぐだけでいい。フリアとカリーナは支援を」
鍵を外したフリアが後列に移動、エディが扉に手をかけそっと開けると、すぐに今までとは比較にならないほど大きな、シュルシュル、ズルズルというヘビの動く音が聞こえてきた。
「マジック・ミサイル!」
戦闘開始を告げたのは頭部めがけて放たれたフェリクスの魔法だった。ミサイル3発が勢いよく頭部に命中し、確実にダメージを与える。
15メートルはあろうかという巨大なヘビが痛みに身もだえする。部屋を埋めようかという巨体が動く様はそれだけで恐怖を感じさせるものだったが、部屋の広さ自体は今までとそう変わらないように見え、そうなるとその巨大すぎる体を思うがまま動かすには少し狭かった。
強い力を込めて尻尾をたたきつけたかったかもしれないが、長い助走を付けられない分だけ勢いは落ちる。尻尾の直撃もエディの盾の前に押さえ込まれてしまった。そしてそこへすかさずクリストが斬りかかり、尻尾へ大きな傷を残す。
「ベイン! よっし、入った! これでもうそこまで強い攻撃はできないわ」
カリーナの魔法が決まる。相手の攻撃力を削ぐ弱体化が入ったのだ。
ジャイアント・スネークの攻撃は基本的にその巨体を生かしたかみつきやたたきつけ、締め付けといった行動だ。その肝心の攻撃力を削られてしまってはエディの防御力を突破できなくなってしまう。
正面に立つエディが盾でかみつきを受け止め、剣で切りつける。クリストもそこへ参加して剣で、そして頃合いと見たフリアもナイフで、それぞれ攻撃を加え、最後にもう一度フェリクスのマジック・ミサイルが命中したところで戦闘は終了した。
調査としては最低限5階までは到達する、可能ならば昇降機を発見することと、さらに6階への階段を発見してほしいと決まっている。
最低限到達すべき目標のちょうど中間地点までは来たということだ。ここからは目標フロアへ到達するだけでも時間がかかるようになってくる。そろそろ長時間の探索を考える段階へ入りつつあり、その点でもギルドの方ではセルバ家から委託されているというキャンプ用品をあれこれと見せられ、これらの評価もと頼まれている。ローグといってもサバイバル系の能力に振っているフリアなどは興味津々ではあった。
1階は相変わらず角を曲がったところにいるラットをエディが盾で押しやっている間にさっさと通り抜ける方法で通り抜けると、以降は罠も魔物も遭遇することはなく真っすぐ階段へ。
さらに2階もフリアの気配察知を頼りに魔物との遭遇そのものを回避する方向で最短で3階への階段に到達した。
問題はここからだった。階段を下りた場所が今回も安全な部屋だったので、ここで準備を整える。そして階段の正面にある扉にフリアが取り付いたところでさっそくこれまでとは違う展開を迎えた。
「鍵なし、罠なし、気配あり。なんだろ、動かないね」
「いきなりか、動かないのなら仕方がない。まずは3階の最初の魔物ってのを確かめるか。エディ、頼む」
「分かった。場所を換わろう」
フリアが下がり、クリストが扉が開いたところから中を確認、状況次第では即座に戦闘に移行できるように待機。体勢が調ったところでエディが扉に手をかけると、それをそっと押し開けた。
薄暗い部屋の中にランタンの光が差し込む。その光の中でズリズリと何かがこすれる音が響き、太く長くとぐろを巻いていたものがゆっくりと動き出した。
「ジャイアント・スネークか、見たところそこまででかくはないのが救いだな。エディ、頭を頼む。俺が後ろから行く」
部屋に入ったエディに対してジャイアント・スネークが頭をもたげ、とぐろを解く。頭からかみつきにくるか、それとも尻尾を振り回して打撃を狙うか。
エディが盾を構えたところへ、頭上からかぶりつこうかという勢いで頭が高く上がり、そして降ってくる。それをじっくりと見定めていたエディは構えていた盾を大きく振り回し、襲いかかってきた頭部を殴りつけた。
かみつきに行ったところを大きく横へと弾かれたジャイアント・スネークは、その勢いを尻尾へと移し、振り回して盾を振り上げて開いたエディの胴体へたたきつけようと狙う。
だが、それを待っていたのがクリストだった。エディの背後から付いてくるようにしていたクリストが左側へ大きく踏み出し、たたきつけようと向かってくる尻尾に対して剣を構え体ごとぶつけるようにして突撃した。
尻尾の勢いを利用して剣は深々と刺さり、そしてクリストの突撃の勢いが振り回された尻尾の力を上回ったことでジャイアント・スネークの体が引っ張られ伸びてしまう。そうなればあとはエディが目の前に落ちてきた頭部に剣を突き刺して終わりだ。
全長5メートルにはなろうかというジャイアント・スネークも、より強度の高い冒険者の前ではなすすべもなかった。
「よし、片付いたな。もういいぞ」
いくら部屋が広いとはいってもジャイアント・スネークが全力で暴れ回るには手狭で、戦闘のために入っていたのはエディとクリストだけだった。他の仲間は戦闘終了を確認してからの入室になる。振り回される尻尾に巻き込まれることは避けたかったし、部屋の外からでも魔法は届く。
さっそく頭部と首の付け根から魔石を取り出し、念のため討伐証明として牙を切り取る。ギルドへ持ち帰ればこのジャイアント・スネークの正式な名称や毒の有無などがわかるだろう。
その間にフリアは入ってきた扉から見て左右の壁にある次への扉を調べていた。
「右、鍵あり、罠なし、気配なし。左、鍵なし、罠なし、気配なし」
「鍵あり? 早速か。ひとまず鍵は置いておいて、なしの方から埋めていくか」
方針が決まったところでフリアが扉を開ける。
「あれ、同じ広さの部屋だね。正面と左右に扉」
階段室、そして先ほどの部屋と続いて、さらに同じ広さの部屋だった。違いは扉の枚数くらいのものだ。
フリアは引き続き扉を順番に調べていく。
「うーん、全部鍵なし、罠なし、気配なしだよ」
「よし、まずは正面から」
部屋に入ったところから真っすぐに部屋を横切り、正面の扉を開ける。
「おー、やったね。宝箱発見」
「来たか。今回は早かったな。てーか部屋のサイズはまた一緒か? ここは同じ大きさの部屋が連続する作りか?」
「そうかも、この部屋は箱あり、扉なし、罠もなさそう。さっきの部屋の扉の先が同じ広さの部屋なら、そういうエリアっていうことだろうね」
部屋の中には罠などはなく、そして今回は扉もなかった。その代わりに部屋の奥、壁際には宝箱が静かに座していた。
「鍵なし、罠なし」
そそくさと宝箱に近寄ったフリアが確認する。
「開けていいぞ」
わーいと言わんばかりに蓋に手をかけてさっと開けた。
中を見てその結果に満足したのかにっこりと笑う。
「何だ、いいものだったのか?」
「うん、宝石だね。5個ある」
「宝石! 2階は結構良かったけれど、今回はどうかしら」
その結果にカリーナが反応する。やはり結果が分かりやすいものは盛り上がる。
半透明で中央に金色の入った茶色いもの1つ、細いしま模様のある緑色のもの1つ、桃色の石に緑色の模様の入ったもの1つ、青い石の中に黄色の斑点のあるもの1つ、暗い灰色のもの1つ。
「宝石というよりも石っていう感じね‥‥ちょっと地味じゃないかしら」
「鑑定を楽しみにしておけばいいさ。だが幸先はいいな」
まだ3階の探索は始まったばかりなのだ。戦闘もあったが、まださして移動すらしていないというのにすでに宝箱があったのだ。これは先行きに期待が持てる展開だった。
「さあ次だ。戻って右へ行こう」
部屋を一つ戻り、左右の扉のうち右を選択。そちらへ進むとそこもまた同じ広さの部屋になっていた。そして扉は正面と右。
「どちらも鍵なし、罠なし、気配あり。何となくだよ、何となくだけど正面の扉の方が気配が大きい気がする」
「サイズ違いか種類違いか、よし、まずは右を見よう。さっきのやつと同じくらいか? わかった、エディ頼む」
気配の大きさが先ほどの部屋にいたものと同じ程度ということであれば脅威度もそこまで差はないだろうと思われた。であればやることは同じだ。正面にエディ、脇にクリスト。できるだけ魔法は使わずに片付ける。
「なるほどジャイアント・スネーク、ここはそういうエリアか」
開けた扉の先では、先ほどの部屋と同じ程度の大きさのジャイアント・スネークが、こちらも同じように頭をもたげ、ズリズリと尻尾を移動させようとしていた。
同じ魔物、同じ状況ということであれば、やることも同じだ。
エディが盾を構えて頭を誘い、これを弾く。そしてたたきつけようと動いてきた尻尾めがけてクリストが突撃し、これを縫い留める。あとは頭をつぶして終わりだ。
「よし、終わりだ。部屋の大きさも同じだし、違いは扉がどこにあるかだけか。もしかしたらどの部屋にいるのかは来るたびに違うのかもな」
「ありそうだな、魔物のいる部屋、宝箱のある部屋がそのたびに違う。ありそうだ」
この部屋にはあとは扉が1つ、左側の壁にあるだけだった。
「鍵なし、罠なし、気配あり。これは同じパターンだね」
「決まりだな。あとはその大きそうな気配というのがどうなのかくらいか。続けて進むぞ、エディ頼む」
そうなれば展開はまったく同じだ。扉を開け、エディがジャイアントスネークを正面から相手取り、クリストが尻尾を止める。やることは変わらない。
「うん、左の扉が鍵なし、罠なし、気配大きいのあり、これがさっきの扉の先と同じところだろうね。それで右が鍵なし、罠なし、気配なし。うん。最後正面、あれ?」
「どうした?」
左右の扉を確認して、正面の扉を確かめようと近寄ったフリアの動きが止まった。反応は危険があってのものではない。何か違うものがあったのだ。
「見て、これ、何かはめるようになっているよ」
フリアが指し示した場所、扉のノブの上に5センチ程度の幅の何かをはめ込むような形のスロットが付いていた。
「これは、別にカギが必要とか、そういうものか?」
「ちょっと調べてみる、待ってね‥‥うん、駄目だね、強引に開けられるようなものでもなさそう。これはここ用の鍵が必要なんじゃないかな」
ここに来て初めての展開だった。扉を開けるためには専用の鍵が必要になりそうだった。
「これは考えたところで意味はなさそうだな。別のエリアで鍵を見つけてこいってことだろう。まずは他を埋めていこう。次はそっちの、大きなやつがいそうな所を確認してみるか」
現状専用の鍵といっても何の手がかりもない。地図を埋めていくうちにどこかで手に入るなり手がかりを得られるなりするだろうと考えられた。今することは地図の他の部分を埋めていくことだ。
大きめな気配が感じられるという扉に取りかかる。
基本的にやることは同じだ。エディが前で構え、クリストが攻撃に入る。他の仲間は必要とあれば参戦できるように準備して待機だ。
「なるほど今までの奴らよりは大きいな。だがこの程度ならやることは同じだ」
扉を開けて確認された部屋にいたのは今までと同じジャイアント・スネークだったが、大きさが違っていてこちらの方が明らかに大きい。これだけ大きさに違いがあれば脅威度も上がりそうなものだが、それもこのパーティーにとってはそれほど意味はなかった。自分たちもまた十分な経験を積んだ強力なパーティーなのだ。
これまで通りエディが構えて頭部を待ち受けこれを弾く、振り回される尻尾に対してはクリストが剣を差し動きを押さえる。それで終わる。フリアが参加する分には構わないが、魔法が必要になる段階までは行かなかった。
「よし、こんなもんだ。確かに大きいが、しょせんはジャイアント・スネークだな」
「色が違うような気はするね。こっちの方が茶色いのかな。さっきまでのは少し紫が入っていなかった?」
ここまで出番のないフェリクスがジャイアント・スネークの魔石を取り出しながら感想を言う。言われてみれば確かに少し色は違うか。これもただのサイズ違いなのか、種類が違うのか、ギルドに戦果を持ち帰れば鑑定でわかるだろう。
「扉に鍵なし、罠なし、気配あ。さっきまでの大きさになるかな。たぶん同じだね」
部屋の広さも同じ、扉のタイプも同じ、気配も同じ。
ここはそういうエリアということで確定で、この扉の先も同じなのだろう。
扉を開けた先にいたのは今まで通りのサイズのジャイアント・スネークで、これまでどおり手早く処理されて終わった。
そして部屋の広さも変わらず、扉も正面に一つ。
「鍵なし、罠なし、気配なし、と。開けるね」
開けた先は同じ広さの部屋で、今度は扉がなかった。
「残念何もなし。運が良ければ宝箱があった部屋なのかも」
「そんな感じだな。これでこっち側が埋まったか。戻ってその鍵が開けられないところまで戻って正面だな」
同じ広さの部屋が続くエリアも一方の端が確認できたことになった。
その向こう側は専用の鍵がなければ開けられない扉の先ということになるのだろう。その鍵が必要な部屋まで戻ると、残る正面の扉の先を確認した。
「お、部屋じゃないな。そうなると部屋が続くエリアはここで終わりってことか」
扉の先は通路になっていた。
フリアが先行して先へ進むと、通路は右へと曲がっている。その先もしばらく続き、そして扉へと行き着いた。
「鍵あり、罠なし、気配あり。うーん、大きいよ。かなり大きい。それに音がするね、これは特別大きなジャイアント・スネークだと思う」
「このエリアのボスってことか? よし、エディと俺が突っ込む。フェリクス、一発頭に魔法を頼む。ダメージを稼ぐだけでいい。フリアとカリーナは支援を」
鍵を外したフリアが後列に移動、エディが扉に手をかけそっと開けると、すぐに今までとは比較にならないほど大きな、シュルシュル、ズルズルというヘビの動く音が聞こえてきた。
「マジック・ミサイル!」
戦闘開始を告げたのは頭部めがけて放たれたフェリクスの魔法だった。ミサイル3発が勢いよく頭部に命中し、確実にダメージを与える。
15メートルはあろうかという巨大なヘビが痛みに身もだえする。部屋を埋めようかという巨体が動く様はそれだけで恐怖を感じさせるものだったが、部屋の広さ自体は今までとそう変わらないように見え、そうなるとその巨大すぎる体を思うがまま動かすには少し狭かった。
強い力を込めて尻尾をたたきつけたかったかもしれないが、長い助走を付けられない分だけ勢いは落ちる。尻尾の直撃もエディの盾の前に押さえ込まれてしまった。そしてそこへすかさずクリストが斬りかかり、尻尾へ大きな傷を残す。
「ベイン! よっし、入った! これでもうそこまで強い攻撃はできないわ」
カリーナの魔法が決まる。相手の攻撃力を削ぐ弱体化が入ったのだ。
ジャイアント・スネークの攻撃は基本的にその巨体を生かしたかみつきやたたきつけ、締め付けといった行動だ。その肝心の攻撃力を削られてしまってはエディの防御力を突破できなくなってしまう。
正面に立つエディが盾でかみつきを受け止め、剣で切りつける。クリストもそこへ参加して剣で、そして頃合いと見たフリアもナイフで、それぞれ攻撃を加え、最後にもう一度フェリクスのマジック・ミサイルが命中したところで戦闘は終了した。
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その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
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