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4 待ち合わせ
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「ま、待たせたわね」
ふっと笑って(当人としては)クールに銀髪を掻き上げてはいるが、リリアは内心ドキドキだった。
結局、あまりにもキメすぎるのはまずいと思って、至って普通な私服…というより、部屋着を着てきていた。
シンプルな白のタンクトップと黒のスポブラ、太腿の半分くらいまでの丈の黒のスパッツというリリア定番の部屋着に、体のラインを隠すための大きめのだぼっとしたジップアップパーカーを羽織っている。
長い銀髪は、頭頂部付近でゴムでくくってポニーテールにし、ゴムを隠すように黒のリボンを結んでいた。
あたかも、ちょっと気が向いたから、パーカーを羽織って、ぱっと来てみた、という格好である。
そう見えていて欲しい。
神様お願い。
(ジャックのためにそれだけ気を遣ったってバレたら恥ずかしいし……、なにより不審がられたら、せっかく本国に帰れるのに全部パーになっちゃうもの)
それは避けたかった。
展望台のガラスドームは三角形の大きなガラスパーツをいくつも組み合わせた多面体の丸い形をしている。照明が落とされたそこは、星空に包まれてまるで宇宙空間のなかにいるようだった。
足元にてんてんと配置された、小さな間接照明のぼんやりとした温かな光が、あたりをロマンチックに演出している。
ベンチの一つに腰掛けていたジャックが、側に立つリリアをぽかんと見ていた。
(な、なんか言いなさいよ……!)
ジャックも私服で、黒のライダーズジャケットを羽織り、ラフなTシャツに、軍支給の迷彩柄のカーゴパンツを履いていた。
どうもすでにシャワーは浴びたようで、髪のワックスが落とされ、いつも上がっている赤い髪が目元に下りているのが、なんともオフっぽくて……可愛かった。
「中尉?」
「そうよ」
「ホワイト中尉?」
「……なにか問題でも?」
むすっとして聞き返せば、ジャックがぴょんっと立ち上がった。
さっきまでちょうどいい目線だったのに、立ち上がられると目線の高低格差が顕著になる。
大体、ジャックの胸元あたりにリリアの目線が来て……。
「中尉ッ!!!」
「きゃっ」
ぎゅっと思い切り抱きしめられ、リリアは心底びっくりした。
「中尉の……これ部屋着ですよね? 初めて見た」
「変……?」
「そんなことないです! 俺これ好きです。……中尉可愛い。いい匂いがする」
「ばっ! 嗅ぐな、馬鹿者!」
べしべしとジャックを叩くが解放されない。
(しゃ、シャワー浴びてきてよかったぁ……)
軍人スキルを発動させて、電光石火でなんとか済ませてきておいてよかった。最新式のヘアドライヤーで、それなりに乾かしてきたし……。
(ちょっと湿ってるけど、大丈夫よね)
髪を乾かしている間に、別の申請も済ませて来たし。
三十分の戦果としては上々だろう。
リリアはそっと手を伸ばして、ジャックの背中を抱きしめた。
(あったかい……。ジャックの匂い、好きかも)
Tシャツ越しに、ジャックの胸板がリリアの頬に触れていた。こちらもお返しに、すんと鼻を鳴らせば、シャボンの良い匂い。
よしよしと髪を撫でられ、温かくて、いい匂いで。安心する。
このまま寝てしまいそうになる。
(はっ、駄目だめ!)
……とはいえ、どうやって誘ったものか。
今夜しかチャンスはないと思って、思い切って部屋を予約してしまったものの、いきなりそんな話になったらジャックも驚いてしまうだろう。
「中尉も匂い嗅いでるじゃないですか」
「……嗅いでない」
「もー中尉って、小悪魔ってーか、天邪鬼ってーか。ま、そういうとこも好きなんですけど」
「わっ」
ふわっと体が浮いたと思ったら、さらっと姫抱きにされてしまっていた。さすがに予測ができなくて、咄嗟の条件反射で手が出そうになり、慌てて寸止めした。
「お、っこわ。中尉の手刀とか洒落になんねーっすよ」
「きゅ、急にやるからでしょ」
「ってか中尉、超軽い~」
「だからって上げ下げしないの!」
「へへっ、りょーかい」
ジャックは、リリアを姫抱きにしたまま、ベンチに再び腰を下ろした。
近い距離にどぎまぎしてしまう。
「あー俺、中尉のこと、街に誘えばよかったなぁ……」
「な、なんで?」
「だって中尉、わざわざ風呂入ってきてくれたんでしょ? なんかちょっと髪湿ってるし。でも俺の部屋、なんか壁薄くて、ときどき、隣のやつの声が聞こえるんすよね。だから、ホテルに誘えばよかったなって。中尉の部屋だと違うんですか?」
(ば、バレてるじゃない! お風呂入ってきたこと!)
リリアはかぁっと顔が熱くなるのを感じた。
「そ、そういうことは気づいても言わないの!」
「あ、やっぱ風呂入ってきてくれたんですね。もしかしたら、連絡したときに風呂入ってただけかなとも思ってたんすけど」
「なっ」
つまり、鎌をかけられたということだ。
なんたる不覚。
リリアの手がわなわなと震えてしまう。
(いくらオフとはいえ、七つも下の少尉にしてやられたなんて……!)
一瞬、軍人としてのリリアになりかけたのを引き戻したのは、至近距離にいるジャックだった。
「でも……わざわざ会う前に風呂って、つまり。…………中尉、俺」
「そそそそんな目で見ないでよ!」
近づいてくるジャックの顔を、リリアはぎゅっと両手で押さえてしまった。
すると、その手を掴まれて、手のひらにキスされてしまう。
「ホワイト中尉、いつもしっかりしてるのに、こういうときは駄目なんすね。意外」
じっと見つめられ、いたたまれなさすぎて、リリアは自分の膝に視線を落とすことしかできなかった。
ジャックの手がそっとリリアの髪を撫でてくれる。
「中尉……来てくれたってことは、俺、期待してもいいってことですよね?」
俯いたリリアの顎に、手がかかって優しく仰向かされ、リリアはまともにジャックの目と目があってしまった。
満点の星空を背に、足元の穏やかな間接照明にぼんやりと照らされたジャックの顔。
その焦茶の瞳は、熱を含んでリリアを真っ直ぐに見つめていて。
(死んじゃうかも……)
リリアの心臓が、ばくばくと早鐘を打っていた。
言葉も出ず、こくんと頷けば、ジャックの顔が嬉しそうにほころんだ。
「中尉……」
ジャックの顔が再びそっと近づいてくる……。
「ま、待った!」
「ぶっ!」
リリアはまたもや、ジャックの顔を両手で阻止した。
さすがに、ジャックの顔がむぅっと不機嫌になる。
「なんですか中尉、二回も! キス拒絶とか、俺、結構傷つくんですけど!」
「それについては本当にごめんなさい! でも、ほら……一応ここも、外、だからさ」
ぱっと見、監視カメラは無いように見えるが、基地内の隅々までハッキングをかけたリリアは知ってる。ここにもカメラがあるということを。
(後でデータ改竄しておかないと……)
姫抱きにされたあたりから、……いや、ハグされたあたりから、それはもうしっかり改竄しておかないと。
リリアはジャックにそっと、「404番地って、知ってる?」と聞いた。
「404番地ぃ……? あ、そういえば先輩たちがときどき話してた気がします。なんですかって聞いても、お前にはまだ早いって、はぐらかされてばっかなんですけど」
404番地は、基本、この基地での勤続三年を越えないと、教えてもらえないし、予約できない。
その前に知るには、先輩にそういう目的で部屋に連れて行かれるか、口の軽い先輩にねだって教えてもらうかなかった。
リリアは後者で情報を仕入れたわけだが、ジャックはまだようやく勤続一年と少しで、特に熱心にねだったり、根回しもしていないのなら、教えてもらえていなくて当然だった。
(そして、誰ともまだ、入ったことないのね)
その事実に安堵する自分の心を押し隠しつつ、リリアはジャックの右手をそっと掴んだ。
「じゃあ、私が連れて行ってあげるわね?」
ふっと笑って(当人としては)クールに銀髪を掻き上げてはいるが、リリアは内心ドキドキだった。
結局、あまりにもキメすぎるのはまずいと思って、至って普通な私服…というより、部屋着を着てきていた。
シンプルな白のタンクトップと黒のスポブラ、太腿の半分くらいまでの丈の黒のスパッツというリリア定番の部屋着に、体のラインを隠すための大きめのだぼっとしたジップアップパーカーを羽織っている。
長い銀髪は、頭頂部付近でゴムでくくってポニーテールにし、ゴムを隠すように黒のリボンを結んでいた。
あたかも、ちょっと気が向いたから、パーカーを羽織って、ぱっと来てみた、という格好である。
そう見えていて欲しい。
神様お願い。
(ジャックのためにそれだけ気を遣ったってバレたら恥ずかしいし……、なにより不審がられたら、せっかく本国に帰れるのに全部パーになっちゃうもの)
それは避けたかった。
展望台のガラスドームは三角形の大きなガラスパーツをいくつも組み合わせた多面体の丸い形をしている。照明が落とされたそこは、星空に包まれてまるで宇宙空間のなかにいるようだった。
足元にてんてんと配置された、小さな間接照明のぼんやりとした温かな光が、あたりをロマンチックに演出している。
ベンチの一つに腰掛けていたジャックが、側に立つリリアをぽかんと見ていた。
(な、なんか言いなさいよ……!)
ジャックも私服で、黒のライダーズジャケットを羽織り、ラフなTシャツに、軍支給の迷彩柄のカーゴパンツを履いていた。
どうもすでにシャワーは浴びたようで、髪のワックスが落とされ、いつも上がっている赤い髪が目元に下りているのが、なんともオフっぽくて……可愛かった。
「中尉?」
「そうよ」
「ホワイト中尉?」
「……なにか問題でも?」
むすっとして聞き返せば、ジャックがぴょんっと立ち上がった。
さっきまでちょうどいい目線だったのに、立ち上がられると目線の高低格差が顕著になる。
大体、ジャックの胸元あたりにリリアの目線が来て……。
「中尉ッ!!!」
「きゃっ」
ぎゅっと思い切り抱きしめられ、リリアは心底びっくりした。
「中尉の……これ部屋着ですよね? 初めて見た」
「変……?」
「そんなことないです! 俺これ好きです。……中尉可愛い。いい匂いがする」
「ばっ! 嗅ぐな、馬鹿者!」
べしべしとジャックを叩くが解放されない。
(しゃ、シャワー浴びてきてよかったぁ……)
軍人スキルを発動させて、電光石火でなんとか済ませてきておいてよかった。最新式のヘアドライヤーで、それなりに乾かしてきたし……。
(ちょっと湿ってるけど、大丈夫よね)
髪を乾かしている間に、別の申請も済ませて来たし。
三十分の戦果としては上々だろう。
リリアはそっと手を伸ばして、ジャックの背中を抱きしめた。
(あったかい……。ジャックの匂い、好きかも)
Tシャツ越しに、ジャックの胸板がリリアの頬に触れていた。こちらもお返しに、すんと鼻を鳴らせば、シャボンの良い匂い。
よしよしと髪を撫でられ、温かくて、いい匂いで。安心する。
このまま寝てしまいそうになる。
(はっ、駄目だめ!)
……とはいえ、どうやって誘ったものか。
今夜しかチャンスはないと思って、思い切って部屋を予約してしまったものの、いきなりそんな話になったらジャックも驚いてしまうだろう。
「中尉も匂い嗅いでるじゃないですか」
「……嗅いでない」
「もー中尉って、小悪魔ってーか、天邪鬼ってーか。ま、そういうとこも好きなんですけど」
「わっ」
ふわっと体が浮いたと思ったら、さらっと姫抱きにされてしまっていた。さすがに予測ができなくて、咄嗟の条件反射で手が出そうになり、慌てて寸止めした。
「お、っこわ。中尉の手刀とか洒落になんねーっすよ」
「きゅ、急にやるからでしょ」
「ってか中尉、超軽い~」
「だからって上げ下げしないの!」
「へへっ、りょーかい」
ジャックは、リリアを姫抱きにしたまま、ベンチに再び腰を下ろした。
近い距離にどぎまぎしてしまう。
「あー俺、中尉のこと、街に誘えばよかったなぁ……」
「な、なんで?」
「だって中尉、わざわざ風呂入ってきてくれたんでしょ? なんかちょっと髪湿ってるし。でも俺の部屋、なんか壁薄くて、ときどき、隣のやつの声が聞こえるんすよね。だから、ホテルに誘えばよかったなって。中尉の部屋だと違うんですか?」
(ば、バレてるじゃない! お風呂入ってきたこと!)
リリアはかぁっと顔が熱くなるのを感じた。
「そ、そういうことは気づいても言わないの!」
「あ、やっぱ風呂入ってきてくれたんですね。もしかしたら、連絡したときに風呂入ってただけかなとも思ってたんすけど」
「なっ」
つまり、鎌をかけられたということだ。
なんたる不覚。
リリアの手がわなわなと震えてしまう。
(いくらオフとはいえ、七つも下の少尉にしてやられたなんて……!)
一瞬、軍人としてのリリアになりかけたのを引き戻したのは、至近距離にいるジャックだった。
「でも……わざわざ会う前に風呂って、つまり。…………中尉、俺」
「そそそそんな目で見ないでよ!」
近づいてくるジャックの顔を、リリアはぎゅっと両手で押さえてしまった。
すると、その手を掴まれて、手のひらにキスされてしまう。
「ホワイト中尉、いつもしっかりしてるのに、こういうときは駄目なんすね。意外」
じっと見つめられ、いたたまれなさすぎて、リリアは自分の膝に視線を落とすことしかできなかった。
ジャックの手がそっとリリアの髪を撫でてくれる。
「中尉……来てくれたってことは、俺、期待してもいいってことですよね?」
俯いたリリアの顎に、手がかかって優しく仰向かされ、リリアはまともにジャックの目と目があってしまった。
満点の星空を背に、足元の穏やかな間接照明にぼんやりと照らされたジャックの顔。
その焦茶の瞳は、熱を含んでリリアを真っ直ぐに見つめていて。
(死んじゃうかも……)
リリアの心臓が、ばくばくと早鐘を打っていた。
言葉も出ず、こくんと頷けば、ジャックの顔が嬉しそうにほころんだ。
「中尉……」
ジャックの顔が再びそっと近づいてくる……。
「ま、待った!」
「ぶっ!」
リリアはまたもや、ジャックの顔を両手で阻止した。
さすがに、ジャックの顔がむぅっと不機嫌になる。
「なんですか中尉、二回も! キス拒絶とか、俺、結構傷つくんですけど!」
「それについては本当にごめんなさい! でも、ほら……一応ここも、外、だからさ」
ぱっと見、監視カメラは無いように見えるが、基地内の隅々までハッキングをかけたリリアは知ってる。ここにもカメラがあるということを。
(後でデータ改竄しておかないと……)
姫抱きにされたあたりから、……いや、ハグされたあたりから、それはもうしっかり改竄しておかないと。
リリアはジャックにそっと、「404番地って、知ってる?」と聞いた。
「404番地ぃ……? あ、そういえば先輩たちがときどき話してた気がします。なんですかって聞いても、お前にはまだ早いって、はぐらかされてばっかなんですけど」
404番地は、基本、この基地での勤続三年を越えないと、教えてもらえないし、予約できない。
その前に知るには、先輩にそういう目的で部屋に連れて行かれるか、口の軽い先輩にねだって教えてもらうかなかった。
リリアは後者で情報を仕入れたわけだが、ジャックはまだようやく勤続一年と少しで、特に熱心にねだったり、根回しもしていないのなら、教えてもらえていなくて当然だった。
(そして、誰ともまだ、入ったことないのね)
その事実に安堵する自分の心を押し隠しつつ、リリアはジャックの右手をそっと掴んだ。
「じゃあ、私が連れて行ってあげるわね?」
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