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第三部 怪物の夢
第四十話 始まりの地
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準決勝の観戦を終え、雄大たちは学校に戻っていた。決勝戦は明日の13時からである。甲子園を懸けた最後の戦いに向け、部員たちは部室でミーティングに臨んでいる。まなは皆の前に立ち、真剣な表情で口を開いた。
「いよいよ正念場だね。分かっているとは思うけど、明日の相手は自英学院。ここを越えれば、甲子園に届く」
その言葉を聞き、部員たちも背筋を伸ばす。明日の試合に勝てば、甲子園に行ける。高校球児なら誰でも憧れる、あの舞台に立つ権利を得ることが出来るのだ。
「でも――去年と一昨年、私たちは自英学院に負けた。正直言って、総合力ではとても敵わない」
まなは厳しい目で、はっきりとそう言い切った。部員たちは、準決勝で自英学院の実力を散々見せつけられた。皆、自分たちの地力が遠く及ばないことなど分かり切っていた。
「けど、野球はそんなに単純なスポーツじゃない。弱いチームが強いチームに勝つことだって、あり得ないわけじゃない」
「つまり、何が言いたいんだ?」
「単純だよ、雄大。私たちは――勝つよ」
部員たちが一斉に前を向いた。あの準決勝を観戦した後でも、まなは闘志を失っていない。彼女は選手たちを信じ、勝利を確信していたのだ。
「……そうか。じゃあ、勝つしかねえな」
「うん、その通り」
すると、雄大は立ち上がって皆の方を向いた。そしてまなをちらりと見ると、大きな声を張り上げた。
「お前ら、勝ってこの監督を甲子園に連れていくぞ!!」
「「よっしゃあ!!」」
まなは驚き、目を丸くしていた。選手たちが、自分を勝たせるためにその実力を発揮してくれる。監督という立場として、それほど嬉しいことはなかった。彼女は目に少し涙を浮かべながら、皆に応えた。
「……ありがとう、みんな」
「まだはえーよ、明日にとっておけ」
皆がハハハと笑うと、まなも笑顔を見せた。決勝を前にしているにも関わらず、部員たちは特段の緊張を見せていない。普段から団結して、互いを信頼しているからこその現象だったのだ。
仕切り直して、いつも通りのミーティングが始まった。まなは、まず自英学院の打線について話し始めた。
「みんなも見たと思うけど、打線はかなりの攻撃力だね。一番の島田くんから始まって、五番の森山くんまで打点を稼ぎまくってる」
「竹内と森山がよく打ってるな」
「二人とも、当たったら飛ぶタイプ。投手陣は要警戒ね」
「まあでも、健二は別格みたいだな」
「ここまで三本ホームランを打ってるからね」
「ちょっといいすか?」
まなと雄大が話していると、雄介が口を挟んできた。彼はいつになく真面目な顔つきで、二人に対して話し始めた。
「健二は単純な打力もすごいっすけど、それ以上に配球を読む能力が高いっす」
「どういうことだ?」
「予想外の球を打つんすよ。明らかにボールの釣り球を狙ったり、相手の決め球を狙ったり」
「松澤先輩と似てるな」
今の話を聞いて、雄大は二年前のことを思い出していた。健二の兄である健太は、竜司の配球を読んで本塁打を放ったことがある。その高度な野球センスが、弟にも受け継がれているのだ。
「とにかく、なんかアイツの打席は気味が悪いんすよ。マジで気をつけた方がいいっす」
「お前がそう言うんなら間違いないな。ありがとよ」
打線の話が終わり、まなは自英学院の投手陣について話し始めた。なんといっても、その核となるのはエースの森山だ。
「今年の森山くんはフォークを使うようになった。ストレートとの見極めはかなり難しいと思う」
「でも、基本の狙いは真っすぐだろ?」
「そうだね。変化球はきちんと低めに来るし、直球を打つしかないかな」
森山の持ち球は、曲がりの鋭いスライダーと落差の大きいフォークボールである。直球とそれらを効果的に組み合わせることによって、彼は打者を手玉に取っているのだ。
「問題は、彼が明日も先発するかってこと」
「今日六回まで投げてるしな」
「そういうこと。森山くんを後ろに持ってくる可能性もあると思う」
二人の言う通り、森山は今日も登板している。彼が先発なのか、それともリリーフなのか。大林高校の打線にとっては重要な事項だった。
「そして、明日の先発なんだけど――リョウくんにお願いするわ」
「えっ!?」
予想だにしていない発言に、リョウは意表を突かれていた。部員たちも、雄大でなくリョウを先発させることを不思議がっている。すると、まながその理由を説明した。
「今日の試合、雄大もリョウくんも加賀谷くんもみんな投げてる。疲労を考えれば、明日は必ず継投が必要になる」
「それで、僕が先発に?」
「うちが勝つには序盤で点を取って逃げ切るのが理想。試合後半で雄大に全力投球してもらうためにも、最初の何イニングかはリョウくんに抑えてもらう必要があるってこと」
「分かりました。頑張ります」
「それに、別のメリットもあるからね」
まなはニヤリと笑みを浮かべた。試合前半をリョウが抑え、後半でいよいよ雄大を投入する。自英学院から得点するのがそう簡単でない以上、これが最善の作戦だった。
その後、部員たちはさらに細かい作戦を詰め、ミーティングを終えた。今日はこれで解散となり、各自が明日の健闘を誓っていた。
「まな、ちょっといいか?」
「なあに?」
「一緒に帰ろうぜ」
***
そうして、二人が向かったのは――「滝川バッティングセンター」だった。雄大は財布から小銭を取り出し、機械に投入する。
「今日は試合後だから、一セットだけだな」
「こうするの、久しぶりだね」
雄大はバットを手に取り、バッターボックスで構えた。基本通り、彼はマシンから放たれるボールをセンター方向に弾き返している。そこには寸分の狂いもなく、三年間で磨き上げた打撃技術が遺憾なく発揮されていた。
「初めて会ったときもすごかったけど、あれからずっと上手くなったんだね」
「ははは、ずっと部活ばっかやってたらそうなるよ」
「……あっという間だったね」
「そうだなあ」
カキンカキンと小気味よく打ち返しながら、雄大は昔を懐かしんでいた。野球を諦めつつも、未練がましくバッティングセンターに通っていたあの頃。まなと出会い、彼の野球人生は再び動き始めた。そして今、甲子園まであと一勝というところに迫っていたのだ。
やがてマシンからの球が止まり、雄大はケージを出た。ベンチに座っていたまなの隣に腰掛け、ふうと息をつく。すると、彼の目の前にペットボトルのお茶が現れた。
「これ、お父さんから。決勝戦も頑張ってくれって」
「お、ありがとよ」
そう言って、雄大はお茶を受け取った。彼は右手で蓋を開け、ぐびぐびと飲んでいる。まなはその様子を感慨深げに眺めていた。
「本当に、右腕が治ったんだね」
「なんだよ、今更」
「あの時は怪我をしてるなんて知らなかった。単に野球が上手い人だなって思ってた」
「ははは、そうか」
雄大はふと、壁に貼ってある色紙を見た。そこに記されているのは、竜司のサインと三桁の背番号。
「……二年前、俺は竜司さんを勝たせることが出来なかった。結果的にはプロ入り出来たけど、今でも申し訳なく思うことがある」
「そんな、雄大が謝ることないよ」
「そうじゃない。もっと勝ち進んでいれば、支配下でドラフトにかかったかもなって」
まなはその言葉を聞き、複雑な気持ちだった。何も言えずにいたが、やがて静かに口を開いた。
「……そのことなんだけどね、明日の二軍戦でおにーちゃんが投げるんだ」
「えっ?」
「支配下登録の期限、そろそろでしょ? 明日の試合で結果が残せなければ、今年の支配下はないって」
「……そうだったのか」
「いまのおにーちゃんは『当落線上』なんだって。必死に頑張ってるけど、プロの世界だからどうなるか」
なんの偶然か、大林高校が甲子園を懸けて戦う日に、竜司も人生を左右する重要な試合に臨むことになるのだ。しかし、雄大は明るい声でまなを励ました。
「なーに言ってんだ、竜司さんなら絶対大丈夫だって」
「え?」
「竜司さんの一番のファンはお前だろ? そのお前が信じないでどうするんだ」
「……そうだね、ありがとう」
「お前は何も心配しないで決勝のことだけ考えておけばいいんだ。必ず勝たせてやるからよ」
「ふふ、雄大は変わらないね」
「ちげえよ、お前が俺を変えてくれたんだ」
まなは首をかしげていたが、雄大は帰り支度を始めた。あの出会いが、まさに久保雄大という野球選手の運命を変えた。彼にとって、まなは自分を導いてくれた恩人だったのだ。
***
そして、翌日――大林高校の選手たちは球場にやってきた。いよいよ決勝とあって、スタンドには多くの観客が詰めかけている。テレビ中継も入り、大会最後の一戦を飾るのにふさわしい盛り上がりだった。
「よう、お前ら!」
「あっ、岩沢先輩!! それに神林先輩も!!」
雄大たちが球場の前を歩いていると、岩沢が声を掛けてきた。その横には神林もいる。二人とも地元の大学で野球を続けており、今日は後輩たちの応援のために駆けつけたというわけだ。部員たちは二人と会話を交わしている。
「へー、神林先輩は二年生で正捕手なんですか?」
「そうなんだよ、本当にすげえよ。俺なんて内野全部たらい回しされてるのによ」
「えっ、岩沢先輩がショート守ってるんですか!?」
「おい芦田、なんか言ったか」
懐かしい出会いに、皆の緊張も和らいでいる。決勝ということでどこか固くなっていたナインだったが、すっかり落ち着いていた。
「心配してたけど、なんだか大丈夫そうだな。あと一つなんだし、頑張ってくれよ」
「俺は神林先輩とスタンドで見てるからな、ほんと頼むぜ」
「「ありがとうございます!!」」
部員たちは二人に一礼し、球場内へと向かっていった。先輩に勇気づけられ、ナインの士気はますます高まっている。さあ、いよいよ決勝戦が始まる――
「いよいよ正念場だね。分かっているとは思うけど、明日の相手は自英学院。ここを越えれば、甲子園に届く」
その言葉を聞き、部員たちも背筋を伸ばす。明日の試合に勝てば、甲子園に行ける。高校球児なら誰でも憧れる、あの舞台に立つ権利を得ることが出来るのだ。
「でも――去年と一昨年、私たちは自英学院に負けた。正直言って、総合力ではとても敵わない」
まなは厳しい目で、はっきりとそう言い切った。部員たちは、準決勝で自英学院の実力を散々見せつけられた。皆、自分たちの地力が遠く及ばないことなど分かり切っていた。
「けど、野球はそんなに単純なスポーツじゃない。弱いチームが強いチームに勝つことだって、あり得ないわけじゃない」
「つまり、何が言いたいんだ?」
「単純だよ、雄大。私たちは――勝つよ」
部員たちが一斉に前を向いた。あの準決勝を観戦した後でも、まなは闘志を失っていない。彼女は選手たちを信じ、勝利を確信していたのだ。
「……そうか。じゃあ、勝つしかねえな」
「うん、その通り」
すると、雄大は立ち上がって皆の方を向いた。そしてまなをちらりと見ると、大きな声を張り上げた。
「お前ら、勝ってこの監督を甲子園に連れていくぞ!!」
「「よっしゃあ!!」」
まなは驚き、目を丸くしていた。選手たちが、自分を勝たせるためにその実力を発揮してくれる。監督という立場として、それほど嬉しいことはなかった。彼女は目に少し涙を浮かべながら、皆に応えた。
「……ありがとう、みんな」
「まだはえーよ、明日にとっておけ」
皆がハハハと笑うと、まなも笑顔を見せた。決勝を前にしているにも関わらず、部員たちは特段の緊張を見せていない。普段から団結して、互いを信頼しているからこその現象だったのだ。
仕切り直して、いつも通りのミーティングが始まった。まなは、まず自英学院の打線について話し始めた。
「みんなも見たと思うけど、打線はかなりの攻撃力だね。一番の島田くんから始まって、五番の森山くんまで打点を稼ぎまくってる」
「竹内と森山がよく打ってるな」
「二人とも、当たったら飛ぶタイプ。投手陣は要警戒ね」
「まあでも、健二は別格みたいだな」
「ここまで三本ホームランを打ってるからね」
「ちょっといいすか?」
まなと雄大が話していると、雄介が口を挟んできた。彼はいつになく真面目な顔つきで、二人に対して話し始めた。
「健二は単純な打力もすごいっすけど、それ以上に配球を読む能力が高いっす」
「どういうことだ?」
「予想外の球を打つんすよ。明らかにボールの釣り球を狙ったり、相手の決め球を狙ったり」
「松澤先輩と似てるな」
今の話を聞いて、雄大は二年前のことを思い出していた。健二の兄である健太は、竜司の配球を読んで本塁打を放ったことがある。その高度な野球センスが、弟にも受け継がれているのだ。
「とにかく、なんかアイツの打席は気味が悪いんすよ。マジで気をつけた方がいいっす」
「お前がそう言うんなら間違いないな。ありがとよ」
打線の話が終わり、まなは自英学院の投手陣について話し始めた。なんといっても、その核となるのはエースの森山だ。
「今年の森山くんはフォークを使うようになった。ストレートとの見極めはかなり難しいと思う」
「でも、基本の狙いは真っすぐだろ?」
「そうだね。変化球はきちんと低めに来るし、直球を打つしかないかな」
森山の持ち球は、曲がりの鋭いスライダーと落差の大きいフォークボールである。直球とそれらを効果的に組み合わせることによって、彼は打者を手玉に取っているのだ。
「問題は、彼が明日も先発するかってこと」
「今日六回まで投げてるしな」
「そういうこと。森山くんを後ろに持ってくる可能性もあると思う」
二人の言う通り、森山は今日も登板している。彼が先発なのか、それともリリーフなのか。大林高校の打線にとっては重要な事項だった。
「そして、明日の先発なんだけど――リョウくんにお願いするわ」
「えっ!?」
予想だにしていない発言に、リョウは意表を突かれていた。部員たちも、雄大でなくリョウを先発させることを不思議がっている。すると、まながその理由を説明した。
「今日の試合、雄大もリョウくんも加賀谷くんもみんな投げてる。疲労を考えれば、明日は必ず継投が必要になる」
「それで、僕が先発に?」
「うちが勝つには序盤で点を取って逃げ切るのが理想。試合後半で雄大に全力投球してもらうためにも、最初の何イニングかはリョウくんに抑えてもらう必要があるってこと」
「分かりました。頑張ります」
「それに、別のメリットもあるからね」
まなはニヤリと笑みを浮かべた。試合前半をリョウが抑え、後半でいよいよ雄大を投入する。自英学院から得点するのがそう簡単でない以上、これが最善の作戦だった。
その後、部員たちはさらに細かい作戦を詰め、ミーティングを終えた。今日はこれで解散となり、各自が明日の健闘を誓っていた。
「まな、ちょっといいか?」
「なあに?」
「一緒に帰ろうぜ」
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そうして、二人が向かったのは――「滝川バッティングセンター」だった。雄大は財布から小銭を取り出し、機械に投入する。
「今日は試合後だから、一セットだけだな」
「こうするの、久しぶりだね」
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「初めて会ったときもすごかったけど、あれからずっと上手くなったんだね」
「ははは、ずっと部活ばっかやってたらそうなるよ」
「……あっという間だったね」
「そうだなあ」
カキンカキンと小気味よく打ち返しながら、雄大は昔を懐かしんでいた。野球を諦めつつも、未練がましくバッティングセンターに通っていたあの頃。まなと出会い、彼の野球人生は再び動き始めた。そして今、甲子園まであと一勝というところに迫っていたのだ。
やがてマシンからの球が止まり、雄大はケージを出た。ベンチに座っていたまなの隣に腰掛け、ふうと息をつく。すると、彼の目の前にペットボトルのお茶が現れた。
「これ、お父さんから。決勝戦も頑張ってくれって」
「お、ありがとよ」
そう言って、雄大はお茶を受け取った。彼は右手で蓋を開け、ぐびぐびと飲んでいる。まなはその様子を感慨深げに眺めていた。
「本当に、右腕が治ったんだね」
「なんだよ、今更」
「あの時は怪我をしてるなんて知らなかった。単に野球が上手い人だなって思ってた」
「ははは、そうか」
雄大はふと、壁に貼ってある色紙を見た。そこに記されているのは、竜司のサインと三桁の背番号。
「……二年前、俺は竜司さんを勝たせることが出来なかった。結果的にはプロ入り出来たけど、今でも申し訳なく思うことがある」
「そんな、雄大が謝ることないよ」
「そうじゃない。もっと勝ち進んでいれば、支配下でドラフトにかかったかもなって」
まなはその言葉を聞き、複雑な気持ちだった。何も言えずにいたが、やがて静かに口を開いた。
「……そのことなんだけどね、明日の二軍戦でおにーちゃんが投げるんだ」
「えっ?」
「支配下登録の期限、そろそろでしょ? 明日の試合で結果が残せなければ、今年の支配下はないって」
「……そうだったのか」
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なんの偶然か、大林高校が甲子園を懸けて戦う日に、竜司も人生を左右する重要な試合に臨むことになるのだ。しかし、雄大は明るい声でまなを励ました。
「なーに言ってんだ、竜司さんなら絶対大丈夫だって」
「え?」
「竜司さんの一番のファンはお前だろ? そのお前が信じないでどうするんだ」
「……そうだね、ありがとう」
「お前は何も心配しないで決勝のことだけ考えておけばいいんだ。必ず勝たせてやるからよ」
「ふふ、雄大は変わらないね」
「ちげえよ、お前が俺を変えてくれたんだ」
まなは首をかしげていたが、雄大は帰り支度を始めた。あの出会いが、まさに久保雄大という野球選手の運命を変えた。彼にとって、まなは自分を導いてくれた恩人だったのだ。
***
そして、翌日――大林高校の選手たちは球場にやってきた。いよいよ決勝とあって、スタンドには多くの観客が詰めかけている。テレビ中継も入り、大会最後の一戦を飾るのにふさわしい盛り上がりだった。
「よう、お前ら!」
「あっ、岩沢先輩!! それに神林先輩も!!」
雄大たちが球場の前を歩いていると、岩沢が声を掛けてきた。その横には神林もいる。二人とも地元の大学で野球を続けており、今日は後輩たちの応援のために駆けつけたというわけだ。部員たちは二人と会話を交わしている。
「へー、神林先輩は二年生で正捕手なんですか?」
「そうなんだよ、本当にすげえよ。俺なんて内野全部たらい回しされてるのによ」
「えっ、岩沢先輩がショート守ってるんですか!?」
「おい芦田、なんか言ったか」
懐かしい出会いに、皆の緊張も和らいでいる。決勝ということでどこか固くなっていたナインだったが、すっかり落ち着いていた。
「心配してたけど、なんだか大丈夫そうだな。あと一つなんだし、頑張ってくれよ」
「俺は神林先輩とスタンドで見てるからな、ほんと頼むぜ」
「「ありがとうございます!!」」
部員たちは二人に一礼し、球場内へと向かっていった。先輩に勇気づけられ、ナインの士気はますます高まっている。さあ、いよいよ決勝戦が始まる――
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