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第1話 幼馴染が親友と仲良くしている
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恋という言葉は幼馴染という関係性にそぐわないような気がする。昔から一緒にいて、遊んだり、勉強したり、風呂に入ったり。そんなの当たり前のことだったし、それを不自然に思うことなんて一度もなかった。
梅宮朱里__あかり__#は幼稚園時代からの幼馴染だ。今の俺は高校二年生なので、ざっと十数年の付き合いということになる。率直に言えば、俺は朱里のことが好きだ。今朝だって、教室に入ってくるや否や顔を赤くしてこちらに寄って来る朱里のことを見て内心ではニヤニヤしていた。
「し、しまちゃん!」
「おはよう、朱里」
「おはようっ……!」
もちろん、俺はカッコつけてクールに振る舞う。ちなみにしまちゃんとは、嶋田周平__しゅうへい__#という名前から朱里がつけたあだ名である。コイツは超がつくほどの恥ずかしがり屋さんだ。長い付き合いだというのに、いまだに挨拶をするだけでこの緊張である。
「あー、また寝ぐせついてるー!」
「えっ? 直したつもりだったんだけどなあ」
「おばさんに怒られないの?」
「うちのかあさんはもう諦めてるからな」
「もうっ、ちゃんとしてよ!」
朱里は黒髪のボブを揺らし、ぷりぷりと頬を膨らませていた。かわいい。その様子をハハハと笑って受け流し、机の中に教科書なんかを入れていると、朱里もいつの間にかいなくなっていた。おや、自分の席に行ったのかな――
「あの、菊池くんっ!」
「えっ、俺?」
そう思っていると、前の方から朱里の声がした。話している相手は――洋一? 朱里、どうしたんだろう。洋一というのは中学時代からの親友だ。万年帰宅部の俺とは違い、中高とサッカー部でフォワードを張っているすごい奴で、そのうえ顔もイケメン。背も高いし足も長いし、こう言っちゃなんだが男として勝てる要素が何一つない奴だった。
「どうしたの、梅宮さん?」
「えーっと、その……」
いつも通り、洋一は紳士的に相手をしていた。洋一は人格面も大変すばらしく、誰に対しても分け隔てなく接する。たとえ朱里が言葉に詰まっていてもそれを急かしたりはしない。……朱里、俺以外の男と話すことも出来たんだな。なんか悔しい。
「ちょっと、相談があって……」
「相談?」
行儀悪く二人の会話に聞き耳を立てていると、朱里が気になることを言い出した。相談だったら俺にしてくれればいいじゃないか。部屋にハエが出たとか、高いところにしまった本が取り出せないとか、どんな些細な相談であってもいつだって俺が引き受けていたのに。少しヤキモチを焼いていたところ、朱里が顔を真っ赤にして口を開いた。
「その、ここでは話せないことなので……放課後とか、時間ありませんかっ?」
「えっ? い、いいけど……」
えっ? 洋一と同様に、思わず困惑して声を上げてしまった。朱里が相談? それも教室では話せないこと……? 居ても立っても居られなくなり、席を立つ。
「ちょっと、朱里――」
「よーしお前ら、席につけー」
しかしタイミングが悪いことに、ちょうど担任が教室に入ってきてしまった。俺はしぶしぶ席に戻る。
相談事、それもみんなの前では話せないこと。……まさか、恋の話じゃないだろうな。しかもわざわざ洋一にするなんて。
悶々とした気持ちが晴れないまま、その日はただただ時間が過ぎていった。しかしこの日から、朱里と洋一の距離はどんどんと縮まっていくことになる――
梅宮朱里__あかり__#は幼稚園時代からの幼馴染だ。今の俺は高校二年生なので、ざっと十数年の付き合いということになる。率直に言えば、俺は朱里のことが好きだ。今朝だって、教室に入ってくるや否や顔を赤くしてこちらに寄って来る朱里のことを見て内心ではニヤニヤしていた。
「し、しまちゃん!」
「おはよう、朱里」
「おはようっ……!」
もちろん、俺はカッコつけてクールに振る舞う。ちなみにしまちゃんとは、嶋田周平__しゅうへい__#という名前から朱里がつけたあだ名である。コイツは超がつくほどの恥ずかしがり屋さんだ。長い付き合いだというのに、いまだに挨拶をするだけでこの緊張である。
「あー、また寝ぐせついてるー!」
「えっ? 直したつもりだったんだけどなあ」
「おばさんに怒られないの?」
「うちのかあさんはもう諦めてるからな」
「もうっ、ちゃんとしてよ!」
朱里は黒髪のボブを揺らし、ぷりぷりと頬を膨らませていた。かわいい。その様子をハハハと笑って受け流し、机の中に教科書なんかを入れていると、朱里もいつの間にかいなくなっていた。おや、自分の席に行ったのかな――
「あの、菊池くんっ!」
「えっ、俺?」
そう思っていると、前の方から朱里の声がした。話している相手は――洋一? 朱里、どうしたんだろう。洋一というのは中学時代からの親友だ。万年帰宅部の俺とは違い、中高とサッカー部でフォワードを張っているすごい奴で、そのうえ顔もイケメン。背も高いし足も長いし、こう言っちゃなんだが男として勝てる要素が何一つない奴だった。
「どうしたの、梅宮さん?」
「えーっと、その……」
いつも通り、洋一は紳士的に相手をしていた。洋一は人格面も大変すばらしく、誰に対しても分け隔てなく接する。たとえ朱里が言葉に詰まっていてもそれを急かしたりはしない。……朱里、俺以外の男と話すことも出来たんだな。なんか悔しい。
「ちょっと、相談があって……」
「相談?」
行儀悪く二人の会話に聞き耳を立てていると、朱里が気になることを言い出した。相談だったら俺にしてくれればいいじゃないか。部屋にハエが出たとか、高いところにしまった本が取り出せないとか、どんな些細な相談であってもいつだって俺が引き受けていたのに。少しヤキモチを焼いていたところ、朱里が顔を真っ赤にして口を開いた。
「その、ここでは話せないことなので……放課後とか、時間ありませんかっ?」
「えっ? い、いいけど……」
えっ? 洋一と同様に、思わず困惑して声を上げてしまった。朱里が相談? それも教室では話せないこと……? 居ても立っても居られなくなり、席を立つ。
「ちょっと、朱里――」
「よーしお前ら、席につけー」
しかしタイミングが悪いことに、ちょうど担任が教室に入ってきてしまった。俺はしぶしぶ席に戻る。
相談事、それもみんなの前では話せないこと。……まさか、恋の話じゃないだろうな。しかもわざわざ洋一にするなんて。
悶々とした気持ちが晴れないまま、その日はただただ時間が過ぎていった。しかしこの日から、朱里と洋一の距離はどんどんと縮まっていくことになる――
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