いつかそれは廻るもの

小乃先ユメ

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第一章

はじまり

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「協力しろ。お前の大学に探してほしい女性がいる」



久々に顔を見た叔父は、眉間にしわを寄せてそう言った。
もう大半の人が半袖を着るような天候に、若干くたびれたオールシーズン用の薄い黄土色のスーツを着た叔父は、大学キャンパスの中で悪目立ちしていた。


「…もう聞いたのか。俺の力がわかったこと」


ああ、ともうう、とも言える呻きのような肯定の返事をしながら、目の前の叔父は目頭あたりを抑えている。

この人こんなに老けていただろうか。
中学生の卒業式が最後だったので、恐らく空白期間は4年程だが、記憶の中の叔父とはだいぶ乖離がある。


「力があることだけ聞いた。そしてそれが戦闘能力に関係するものだということも」

「荒事なのかよ。初めての人間にやらせることじゃないだろ」

「…仕方ないんだ、事情が事情でな。歳が近くて女性なら尚よかったんだが、いない上にお前が通っているこの大学に在学しているという情報があった。適任過ぎて他に頼めなかった」


こういう日がくることは前々から聞いてはいたが、あまりにも早いな、と心の中でだけため息をついた。







第七感。

実際にそういう名称であるわけではないが、便宜上そう呼んでいる、俺の親戚筋にだけ現れる「力」。
世界中に100人前後はいるらしいが、勿論のこと全員に会ったことはない。
叔父は、その親戚…血族たちが「力」を自覚したときに保護をしたり、力の使い方をレクチャーしたり、場合によっては「力」を持つ血族に「仕事」の協力を持ちかけたりする役割にあるらしい。



「で、誰を探すんだ。写真くらいはあるのか?」

「いや、無い。天樹さんが能力の行使の瞬間だけを

「天樹さんが視てるなら誰かの親戚だろ?何で具体的な情報が無いんだ」

「お前はまだ知らなかったか。ーーいるんだよ、血族でないのに力を発現する人もな」


それだけ言うと叔父…ヒューは、周りを見渡しつかつかと歩いていく。
アコースティックギターを背負いなおし、その後ろに付いていく。


大学二年の初夏のことだった。



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