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開拓
第52話 あっ!ちょっ。
しおりを挟む闇ギルド所属のアッシュさんとキールさんと別れて、ゆっくり歩いて宿に戻る。
「おかえりなさい。ある...ナインさん。」
宿の部屋のドアを開けたら、ペトラさんのお出迎えを受ける。ペトラさんは、主と言いかけたが、途中で言い直した。誰かお客さんでもいるのかと思い、部屋の中を見ると、アッシュさんとキールさんがいた。
「やっぱり...俺を尾行していたんだな。」
ひょこっとペトラさんの背後から顔を出すアルマさん。
「尾行じゃないよ?護衛だよ?」
可愛らしい仕草。ちょっと、ぐっとくる。あざといんだけど、それがまた、イイ...
「そうか...。護衛ありがとう、アルマさん。そこのボロボロになっている二人はどうしたの?」
「ふふっ。ナインさんにちょっかいかけたから、捕まえて拷問したんだよ?当然だよね?ボクの、ボクたちの王様に喧嘩売ったんだから。」
さも当然かのように言うアルマさん。これは...うん。アルマさん、キレてるね。目が笑ってないもん。
「そ、そう。仕事が早くて助かるよ。それで、その二人をどうするつもり?」
「殺して、闇ギルドに送り付けるよ?ダメ?」
怖可愛いアルマさんは、俺の胸に手を当ててから、身体を密着させてくる。うん、これで落ちない男性は、いないな。
「ダメじゃないよ。ルナさんと協力して、闇ギルドさんにご挨拶しておいで。」
「やったね!ふんふんふーん。久しぶりの解体、すっごく楽しみ...ふふっ」
ノーラさん...アルマさんに何を教えたのさ。
「主、主!部屋が血だらけになってしまいます!」
「あっ!ちょっ。」
ぎゃぁぁ!っと叫ぶアッシュさん。あぁ...部屋の床と壁にびっしり血が...。遅かった。アルマさんを止めるのが遅かった。
「主、主。アルマのあざとさに負けてました。でも、仕方ないと思います。あのあざとさは、女の私から見ても、可愛いですから。」
フォローしてくれるペトラさん。
「ありがとう、ペトラさん。あとで、部屋の掃除だね...はぁ。」
エタンセルに一度戻ってお風呂に入ってきた、ミィちゃん、セイラさん、ルナさんが血まみれの部屋に戻ってきた。まぁ、その後、もう一度入り直すはめになったのは言うまでもない。
解体ショーを見た、次の日。俺は、セイラさんと一緒に情報収集に出掛けていた。
「最悪。アルマやりすぎ...」
「セイラさん。俺が悪いんだ...アルマさんに許可を出したせいで、部屋が赤く染まった。ごめんね。」
「うん...手を繋いでくれたら許す。」
セイラさんは、俺の手を握り...しめず、肩を掴み、抱き寄せ、抱擁する。突然の出来事に、身体が固まる。
「ど、どうしたの?セイラさん。」
「すーはー。すぅぅぅ、はぁぁ。ナインさんの匂い。好き...」
抱きしめて匂いを嗅ぐセイラさん。とりあえず、機嫌が治ったのなら、それでいいんだけど。公衆の面前は、恥ずかしい。
「普通、逆だと思うんだけどなぁ...それはともかく、そろそろ離れてくれると嬉しい。ね?」
「うー。仕方ない…」
名残惜しそうな声を出しながら離す。相変わらず、黒騎士の面々は、強引である。
少し早歩きでその場を離れ移動する。行き先は、冒険者ギルド。セイラさんが見た、S級冒険者パーティを確認するのと、クレイモラン領の調査について、ギルドに依頼がないか確認を行う。
さすが首都イスパニアの冒険者ギルド。中々、大きな建物である。この世界の人間の識字率は低い。その為、特徴を表した絵を看板を掲げることが多い。冒険者ギルドの絵は、剣が交差している。クレイモラン領にあった冒険者ギルドも同じ絵を掲げていた。
俺とセイラさんは、冒険者ギルドの扉を開き、中に入る。ムワッとアルコールの匂いがして、つい、俺は顔をしかめてしまう。チラッとセイラさんの方を見たけど、フードを被っているから分からない。
「セイラさん。マスクいる?」
この世界に日本と同様なマスクはない。布を当てる、もしくは、口元を隠すように巻く。その二つしかない。
セイラさんに渡したマスクは、日本で販売されている立体マスク。使い心地が良いと評判だ。
「ありがとう。ナインさん...」
マスクを受け取り、すぐ着用するみたい。相当、臭いんだろうな。匂いを我慢しながら、掲示板の方へ歩き、情報収集を始める。
「ふっ。今日はどんな情報が手に入るか楽しみだ...」
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