勘違いから始まる反逆王

わか

文字の大きさ
上 下
39 / 59
開拓

第40話 反逆王と呼ばれる所以

しおりを挟む

 「ひゃああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」

 城壁の上から飛び降りる俺。
 空気の抵抗を受け、叫び声が掠れる。
 俺は、フレアさんを信じている。

 「ひゃはははははっ!最高だな、我らの王は。イカれてんぜぇ!!」

 「これ、毎度毎度、やる必要あるの?ハーフエルフ、獣人でも魔力なしでやらないわよ?」

 なんか、グチグチ言われているが気にしない!テンション上げていこうぜッ!これ、やると、頭のネジがぶっ飛ぶんだわ!

 「死ぬぅぅうううう!ひゃああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」

 「世話のかかる王様ね...ふふっ」

 家の屋根に衝突しそうになった時、身体に風が纏われる。仁王立ちしたまま、屋根を貫通して床に突き刺さる。着地の瞬間、ふわっと、浮き、そっと着地する。
 そして、着地した後、身体に纏っていた風が、俺を中心に竜巻を起こし、周囲を塵に変える。

 「クレイモラン領の皆さま、初めまして。私は、エタンセル国の王、ナインでございます。そして、さよなら。クレイモラン領の皆さま。領主の伯爵であるホープ、ご息女のクレアを恨んで死んでください。」

 ネックレス型の拡声の魔道具を使用し、クレイモラン領の全域に、全ての人間の耳に言葉を届ける。

 「エタンセル国が王が命ずる、この街を灰にしろっ!!」

 各所から甲高い雄叫びが上がり、魔法や爆弾が領内に打ち込まれる。
 
 フレアさんの風魔法で、俺の周囲の建物や人間が塵になってしまったが、まだ領内には、何十万人という人間、亜人、獣人がいる。

 「俺が、何故、反逆王と言われるか教えてやるよ。お代は、テメェらの命だ。」

 左手にナイフ、右手に細剣を持ち、足を止めている者たちを斬ってきって斬って斬って切り刻んでいく。
 中には、勇気を振り絞って、俺を仕留めようと立ち向かってくるが、魔力なしで純粋の自分の力での死合いなら負けはしない。

 「ぉぉおおッ!」

 「はぁ、抵抗することなく命を差し出すのであれば、苦痛を与えないのに...なぁ?どうやって死にたい?」

 立ち向かって来た青年の喉元に剣を突き刺し、左手のナイフで何度も斬りつける。命の灯火が消えるまで。

 「どうして、どうして、俺たちは、戦っているんだ?全て、テメェらが悪い。悪だと決めつけ、我々を断罪した。それは、国主導で教わったから?親に教わったから?教会がそういう教えだから?」

 命の灯火が消えた青年の首元から剣を抜き、1振りして、血を払う。

 「テメェらは、無意識下で自分より弱者がいることに安心しているだけだ!」

 再び、俺は拡声の魔道具を使用する。

 「弱者からの反逆の声、音はどうだ?心地良いだろ?もっと、もっと!奏ろっ!もっともっともっともっと激しく、滾らせろ!我らの反逆は、世界を変えるっ!!」

 誰よりも弱者であり、誰よりも弱者を尊ぶ。

 慕う者には慈悲を、それ以外は悲惨を与える。

 だから、エタンセルの皆んなは、俺を反逆の王と呼ぶ。

 暴論であり、理解されない。いや、してもらう必要はない。

 85名の愛する者だけ、分かって貰えばいいのだから。

 「クレイモラン領いる全ての者よ。世界のために、我らのために、残酷に、無惨に死んでくれ。」

 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!いいねぇ、イイねえ!やっぱ王は、私たちの王は、最高だよ!!オラァ、どけぇ。王の通る道は、真っ赤な血で染まっていると相場が決まってんだよ!!」

 俺の宣言に触発され、クレイモラン伯爵が居るとされる屋敷まで、セレナによって、血のカーペットが敷かれる。邪魔な建物や攻撃は、全てフレアさんが消滅させる。

 俺は、血のカーペットの上を歩き出す。

 「待ってろ、首魁ホープ・フォン・クレイモラン。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...