勘違いから始まる反逆王

わか

文字の大きさ
上 下
23 / 59
開拓

第23話 久びさの帰還

しおりを挟む

 「はぁー。生き返るぅー。久びさのお風呂たまんねぇなー。」

 俺は、旅の疲れを癒すため、現在入浴中。村に着いても、濡れた布で身体を拭くことしか出来なかったからな。ほぼ、日本と同じように作っている浴室。

 「いつになったら、浴室に壁が出来るんだよぉー。」

 湯気でメガネが曇っているシェリーさんに文句を言う。

 「そ、それは、我が主の身を守るためです。決して、我が主の身体を舐め回すためではありません、はい。」

 嘘だ。嘘をついている。超ガン見しているじゃん。
 女風呂も壁がなく、丸見え。シェリーさん曰く、気にしないそうだ。よく分からん。

 「ねぇー、シェリーさん。そこでカメラを回している変態たちをどうにかしてくれよー。」

 ぐへへっ。じゅるり。はぁ、はぁ。

 目が血走っている、サリーちゃんとその仲間たち。イレーナさんなんて、服を脱いで自慰行為をしている。
 全く何しているんだか。まったり湯に浸かれないじゃんかよ。

 「それは...難しいです。申し訳ありません、我が主。」

 メガネの曇りを拭き取り、チラチラ俺を見るシェリーさん。俺の裸見て興奮するとか、頭おかしいだろ。

 「なんか、取り引きでもしたのかなー?」

 「さすが、我が主。おっしゃる通りです。ふふっ。」

 「はぁぁ。普通逆だと思うんだけどなぁ。」

 気にしたら負け。本当は負けたくないが面倒なので、負ける。
 風呂から上がり、軽く食事を済ませてから執務室の椅子に座る。シェリーさんが作成した資料に目を通す。
 魔物の出現、生態系の変化、作物の状況に状態、今回の旅での出費、アデス村での物資の支出など、報告書は多岐に渡る。

 「魔物の出現による生態系の変化。これは要観察。もしくは排除。いや、魔物が来てくれた方が人間共を立ち寄らせないように出来るのか?うーん...」

 報告書に俺の意見や感想を記す。こういう仕事も大事なこと。知ることをやめてしまったら、どこかでしっぺ返しを食らう。見落としがないか、隅々まで読み解き、考える。

 コンコン。

 「どうぞー。」

 執務室に入ってきたのは、アリエスさんとエマさん。
 アリエスさんは、追加の書類を持ち込み、エマさんは、コーヒーの用意をしに来てくれた。

 「ナイン様が不在の間、私たちが潰した開拓村に立ち寄る人間がおりました。詳細はこちらの書類に記載しております。」

 「変化?」

 俺は、エマさんが用意してくれたコーヒーを飲みながら書類を確認する。
 どうやら、開拓村に立ち寄った人間がいたそうだ。監視任務についていた、エマさんの部隊が発見し尾行しているとの事。俺たちが向かったアデス村ではなく、別の村、スヴェン村の者らしい。

 「スヴェン村ねぇ...最果ての地エタンセルを知られるわけにはいかない。早めに手を打つとするか。」

 「それでは、こちらの魔道具の設置の許可をお願いします。」

 アリエスさんから渡された申請書類。幻惑の霧を発生させる魔道具の設置。元々エタンセルを覆い隠すために設置してあったが、キメラによって破壊されていたと思われ、その魔道具を回収し、復元した。

 「魔石にも限りはあるが、ここで渋って被害が出るのは愚策。分かった、承認しよう。」

 申請書類に判を押し、アリエスさんに書類を渡す。

 「エマさん、魔物の警戒をしていた人員を全員エタンセルに戻してくれる?」

 「魔物を放置するのは愚策では?」

 「うん。そうかもしれない。だけど、人間がこの地に入ってくることは避けたい。魔物には、我々の隠れ蓑になってもらう。それに、魔物が強くなってくれたら、良質の魔石が取れるからね。メリットのほうが多いよ。」

 「分かりました。警戒に当たらせている者たちへ、声をかけてきます。それ以外の指示はないですか?」

 「そうだな...次の村までの旅の同行者の選別をお願い。やり方は任せる。」

 「ふふっ。分かりました。みんな張り切って喧嘩にならないといいのだけど。楽しみ。」

 笑いながら執務室をあとにしたエマさん。どんな選別をするのやら。
 アリエスさんも申請書類をもって執務室を退出する。

 「動き出したばかりだし、問題が山積みだ。そろそろ日本に戻って物資の調達をしないといけないし...」

 今日は、書類を整理するだけで一日が終わりそうだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...