20 / 59
開拓
第20話 副産物
しおりを挟むアデス村の調査をしてから1週間。
大体の情報が集まった。ゲートの設置も完了してある。浮浪者のたまり場であったボロ家の1つを、金で買取ることによって手に入れた。
「それで?君たちは、何をしに来たのかな?」
俺たちの目の前には、割れた瓶や丈夫そうな木の枝を持って乗り込んできた浮浪者たち。
「おいおい、見れば分かるだろ?俺たちには、金がねぇ。おメェに貰った金がねぇーんだよッ。」
いきり立つ浮浪者。金で解決するなら良いんだが、人間は欲が深いからな...。
「見ても理解が出来ない。が、金ならやるから、さっさと出ていってくれる嬉しい。」
金が入っている小袋を浮浪者たちに投げ渡す。
「へぇ。これだけしかねぇのか、オォイッ!ねぇーなら、そこの女を寄越せッ。村長に高く売れそうだ。ヒッヒヒヒぃ。」
はぁ。このボロ家を購入した時の3倍の金が小袋に入っているんだけど...。参ったな、ここで騒ぎが起きると作戦に支障をきたす。
「カーラちゃん、エタンセルにいるアリエスさんに伝えてくれる?ゴミを送るから、処理をお願いと。」
「はい、であります!」
「アァン?おメェ、何言ってんだ?この数を相手にやれんのかッ?オォイッ!」
「ぶふっ。三下のセリフ、どうもありがとう。そして、さよなら。」
「ッ!!は...?」
影から針が幾度も射出され、浮浪者のこめかみに刺さる。正確に、確実に刺さる針。拍手を送らざる得ないほど完璧な殺し。
「お見事、ルイズさん。素晴らしいお手並み。」
影から出てくるルイズさんは、俺の前で片膝を地面につき、胸に手を当て、頭を下ろす。
「はっ。御身に貢献出来ること、とても嬉しく思います。それに、お褒めのお言葉、まさしく天にも昇る気持ちで下着がびちゃびちゃです...」
こいつも変態だったな...。
「あ、うん。下着を替えておいで。まだ、ルイズさんに頼ることは多いからね。」
「かしこまりました。ナイン様。」
また、影に潜り、消えるルイズさん。最近、過激な発言をする子が増えた気がする。
顔を横に振り、思考を切り替える。
「フレアさん、ゲートに死体投げ捨てるの手伝って。薬剤を投与する人間の接触の時間が近い。」
エタンセルにキメラの研究の課程を書かれている資料があって良かった。アデス村に混乱を引きこせる。
「ふぅ...これで最後か、なっ!」
最後の死体の首を掴み、ゲートに放り込む。
「それじゃあ、ゲートの守護を頼むね。フレアさん、セレナ。」
「なぁ、人間の仕事はいいけどよぉ...ナイン様がへりくだる必要ないんじゃないかー?」
「セレナ、油断させるためにしていること。下に見られるだけ、作戦が上手くいくんだ。いいか?セレナ、俺に怒鳴った人間を殺すのやめろ。疑われてしまう。」
「だってー...ムカつくんだよ。ナイン様に向かって暴言をはくヤツらが。この前、殴られていたじゃん、ナイン様。アタイじゃなくても、殺していたと思うんだよね。」
アデス村に来てから、俺は調査ではなく、別行動していた。奴隷たちと一緒に土木工事や建設の仕事に就き、最底の労働環境の中、奴隷より少し良い扱いを受けている。少し良いと言っても、労働時間が15時間。ブラックすぎる。
「今日で最後だから、我慢してくれ。もう行くよ。」
立て付けの悪いボロ家の扉を開き、走って現場に行く。現場についたら、まず、殴られる。
「おい、新入り。おせーよ。奴隷じゃないからと言って甘えんなよ?5分遅刻だ。1分につき、銀貨1枚引く。あと5発な、ぐ、ら、せろ!おらぁ!」
「ぐっ、がっ...がはっ、おえ。や、やめてください。出勤時間より早く来た、はずです。かはっ。や、や、やめてぇ...。」
5発じゃない。何発殴られたか分からない。
「俺様が遅刻だと思ったら、それは遅刻なんだよ!ふっ、殴りがいがあっていいな、新入り。奴隷どもは、殴っても反応がない。新鮮でいい。ガハハはははっ。」
殴られるのは慣れている。いかに、最小限の痛みで抑えるよう避けるか、コツがある。身体に触れる瞬間、大袈裟に捻るだけなのだが、これをマスターするのに1年かかった。
「はぁ、はぁ。申し訳ございません。許してくだざいぃ。今日も、一生懸命働きますから!」
「見ろよ、コイツ。鼻血垂らしながら懇願してるぞ!くっははははは。笑えるぜ、新入り?」
現場監督が、こんなに腐っていると周りも腐る。俺を見て笑うゲス野郎共。気持ち悪い、くそ。
吐き気を抑えながら、土を掘っていく。今日の奴隷の便所作りとゴミ捨て場を作る。下っ端の作業の一つ。
「おーい、君たち。今日は、ここでしてくれよー。」
奴隷の獣人の男がぺこっと頭を下げて、お礼を言う。俺は友好的に奴隷たちに接している。現場の食料をくすねて与えたり、新鮮なキレイな水を渡したり、奴隷の環境を良くするために動いていた。そのおかげで、好意的に見られている。
「おい、新入り!飲み水持ってこい!」
「分かりました!」
現場監督と俺以外の人間どもに、やかんに入った水をコップに注いでいく。エタンセル特製の水だ。思う存分、飲みやがれ。そろそろ、薬が効いてくるだろ。
現場監督が持っていたコップが地面に落ちる。それに続くように、また一人、コップを落とし自分の首を締め上げ吐き出そうとする。
「キメラ作りの研究の副産物。どうですか?現場監督?皮膚が爛れて、腐っていく。ふふっ、魔物になるってどんな気分ですか?あはっ。バイバイ、人間...いや、食屍鬼グール」
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる