17 / 59
開拓
第17話 旅の食事事情
しおりを挟む「ふぁー。馬車って、揺れが酷いけど、慣れると楽だね。馬の世話が手間だけど、奪って良かったよ。」
「ふふっ、そうね。あの村に向かっていた商隊があって良かったわ。スヴェン村から来たと言っていたけど、立ち寄るのかしら?」
馬車に積まれていた売り物を手に取って確認しながら、フレアさんと会話する。
「うーん...、スヴェン村には寄りたくないかな。この馬車を特定されると面倒だからね。それに、裕福な村とは言えなさそうだしね。」
首を傾げるフレアさん。
「どうして、そう思うの?」
「金品と粗悪品の服だけしか積まれていない。スヴェン村代表しての商隊にしては、貧相すぎる。あと、この妙な粉。十中八九、危ない薬だろう。」
「商人で確かめようとしたら、震えていたものね。毒物なのは確実ね。」
なぜ毒を?
ただ、これだけは言える。
毒を取引きに使うスヴェン村は、ロクな村ではないだろう。
「このまま進むとスヴェン村。フレアさんたちは、スヴェン村を経由していないんだよね?」
「そうね。スヴェン村は通っていないはずよ。新しく出来た村なのか分からないけど、初めて聞いたわ。」
全ての村を潰していたら、時間がかかりすぎる。ひとまずは、アリエスさんが選んで進んだ道を辿っていく。彼女たちを虐げ、無視した村や町、そして国を潰していく予定。
「次の村は、比較的大きいんだっけ?」
「私は、あまり覚えていないのよ。記憶があやふやで...。ごめんなさい。」
「いいよ、気にしないで。見れば済む話だし。」
フレアさんもまた、酷い過去がある。辛い記憶に蓋をしているため、あやふやになるのは仕方ない。
ただ、その記憶の蓋を外すと、猛烈な怒りが溢れ、それを力にする。普通は、辛い過去に対して怯えるものなのだが...。
「そろそろ、休憩しようか。」
技術部隊の制服であるデニムのオーバーオールを着用している赤猫の獣人カーラちゃんに声をかけ、馬車をとめてもらう。
ちなみにカーラちゃんは、ノーラさんの部隊所属のエリさんの妹だ。
「王さまー、ここで休憩でありますかー?」
「そうだよ。馬の世話は俺がするから、テントの設営お願いするね。」
「はいであります!」
姉にそっくりの見た目で語尾が特徴的。ハツラツとした性格で話していて、とても楽しい。
馬に水とエサを与えた後、設営されたテントの中に入る。すぐに片付けられるよう、簡易テントである。
「そこそこ進んだと思うけど、まだ次の村が見えない...。ここまでの道のり、危険なく進めたのが収穫かな。見張りは、交代で夜を過ごそう。もちろん俺もするからね。」
「危険を感じたら、大声で私たちを呼んで。ナイン様に何かあったら、私死ぬから。」
どういう意味の死ぬ、なのか分からないけど、真剣な目を見て、俺は渋々頷く。最果ての地までは、苦しい旅をしていたと思うから、これからの旅は、楽しいと思って欲しい。
「フレアさん、分かったから。ちゃんと呼ぶ!助けを呼ぶから離れて。」
キスする5秒前くらい顔を近づけるフレアさんを引き剥がし、ご飯の支度をする。旅のご飯は、湯煎で出来上がるカレーなど。飽きないよう、様々な食事を用意してある。
「やっぱりカレーは至高であります!うまうまですっ!」
カレーを口にほうばるカーラちゃん。美味しそうに食べてくれると、食卓に笑顔が増える。
「私は、ハンバーグかしら。とっても美味しいわ。」
黙々と食べるフレアさん。カレーに対抗して、好物のハンバーグを推す。他の技術部隊の子らも、各々、好きな物を皿に乗せ食べている。中には、味噌漬けの魚を食べている子もいる。
日本の食文化に大変感謝だな。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる