どーも、反逆のオッサンです

わか

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カンナ王朝編

第142話 どーも、村です

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前書き

前回のあらすじ

主人公一行、村への警戒心を強める


本文


 隠密スキルを発動させ、村の付近まで接近したおっさんです。村に接近する頃には夜になっており、村人は殆どの者が就寝している。ただ、夜の見張りが数名、柵の近くで座っている。

 (出来れば、穏便に済ませたいんだけど...うん?あの見張りをしている人、もしかして...)

 俺は、柵の手前で座っている1人のご老人に声をかける。なぜ声をかけたかと言うと、俺たちの姿を目で捉えていたから。捉えておきながら、なぜ誰にも伝えないのか。

 「そこのご老人。その目...見えているのか?」

 「少し待ちな。他の者をワシから遠ざけるからのぉ。」

 『ケンさん。あのご老人が何をするのか確認の為に追わなくてよろしいのですか?』

 ユリさんから小声で問われるが、俺は首を横に振りユリさんとヨリさんに告げる。

 「隠密スキルを解いて。あのご老人は、俺たちの姿が見えている。」

 MPの無駄使いになるし、意味をなさないならスキルを使う必要はない。それに、あの老人に補足されている限り逃げれないと俺の勘が告げている。

 「あのご老人、何者でしょうか?」

 ヨリさんの疑問は、俺だけでなくユリさんも思っているだろう。

 「それが分かれば、近寄らないわよ。本人に聞くしかないわね。」

 「それはそうですが、何かしらの対策をしておいた方がいいでしょう?明らかに実力者ですよ、あのご老人…」

 (ユリさんとヨリさんも分かるのか...存在感、それにプレッシャーを肌で感じる。はぁ。世の中、どこにでも強い奴がいるんだな...)

 老人が見張りをしていた者に声をかけると、その者達は村の中へ歩き出した。

 「ふむ。待たせてすまんのぉ。」

 「いえ。こちらから突然声をかけたのだから、謝罪はいらない...です。」

 ぎこちない敬語で返事をする俺。それに対し、笑って髭をさする老人。

 「ほっほっほ。敬語を使わんでも構わんよ。それより、周囲には誰もおらんのじゃから座れ。」

 「では、遠慮なく座るよ。」

 俺たちは、老人が座るのを確認してから腰を下ろす。

 「それで、この村になんの用じゃ?」

 眼光が鋭くなるご老人。声も少し低くなり、先程よりも圧を感じる。

 「特に何もないんだけど...一晩泊まらせてくれると助かるくらいにしか考えていなかった。初めての長旅だからな、警戒しながら接近したんだが、まさか俺たちの姿を捉える人がいるとは...何者なんだ、ご老人?」

 「ほっほっほ。何、儂はただの老いぼれ。じゃが、そうよな...お主らのぶら下げている武器の素材は、儂がゲンツという鍛冶師に渡した。そして、今、お主らが武器を持って儂の所に来た。何かの縁じゃ。ほれ、何か話せ。」

 「ただの老いぼれが、身体中に魔力を循環させるかのように練れるかよ。はぁ。色々と聞きたいことはあるが、先に自己紹介させてもらう。俺はケン。そして、右にいるのはユリさん。左にいるのはヨリさん。俺の旅仲間...」

 「そして、ケンさんの嫁よ。」

 「ふふっ。ケンさんのお嫁さんです。」

 そこまでドヤ顔で自己紹介しなくても良くない?っと思いながら、訂正すると何されるか分からないから、そのまま話しを進める。

 「旅の目的は、復讐と安心して暮らせる土地を確保すること。ついでに因縁ある奴を潰すことかな。自称、老いぼれさん。名前を教えてくれ。」

 先程の眼光がなくなり、興味が湧いたかのように目を見開くご老人。

 「お主ら闇を抱えすぎて笑えてくるわな。ほっほっほ。儂からも色々聞きたいことが出来たが、先に名乗ろうかのぉ。儂は、ヴィルヘルムじゃ。元法国の炎の守護者でもあったのぉ。おっ?なんじゃ?そこの女たち、因縁でもあるのか?」

 元法国の守護者という単語に、ユリさんとヨリさんが反応して鞘から剣を抜く。

 「ユリさん、ヨリさん。元法国の守護者であって、現では無い。それと、法国のイカれた信仰心を持っているようにも見えない。だからこちらから攻撃しない限り大丈夫だと思うから武器を下げて。」

 「ケンさん、あの法国よ?内通者かもしれない。私たちの情報を売られたら...」

 「赤いの。あー、エルフじゃな。安心せい。法国から捨てられた身じゃ。片目、片足が無くなってすぐ捨てられたわい。ほっほっほ。」

 (自虐ネタにしてもキツい。片目、片足ないと私生活に支障がでるじゃん。まぁ、本人がいいなら、別にどうでもいいけど。)

 「それに、青いの。お主も心配せんでもよい。どうせ、元女王じゃろ?」

 ヴィルヘルムからの一言で、更に警戒を強めるヨリさん。

 「なぜ、私が元女王だと分かったのですか?」

 公国を出て、さほど時が経っている訳でもない。前の世界みたく、すぐに情報を手に入れられる訳でもない。ではなぜ、ヴィルヘルムがヨリさんの正体をしっているのか。

 「簡単なことじゃ。儂は、お主を見たことがある。一度だけな。お主の兄...レフト?レイト?はて、名前はなんであったかのぉ。まぁよい。そやつが人種の敵である魔人族と何か企んでいるということで公国に出向いた際、海龍と同じ魔力を持つお主を見たのじゃ。ほれ、これをくれてやる。」

 ヴィルヘルムから投げられた杖を拾うヨリさん。

 「ッ!これは...仕込み刀。しかも、海龍の素材?」

 「やはり持ち手を選ぶか...儂には抜けなかったのだが、これはこれは、愉快じゃ。儂の杖として使っていたものだが、間違いなく海龍の鱗から造られた武器じゃ。ゲンツが造った一振よ。」

 海龍の素材でできた刀。まさか、こんな辺鄙な村で手に入るなんて思いもしなかった。


後書き

次回 ヴィルヘルム

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