どーも、反逆のオッサンです

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カンナ王朝編

第137話 どーも、夜襲です

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前書き

前回のあらすじ

炒飯チャーハンを食べる主人公たち


本文


 昼飯食べてカンナ王朝に向かって歩を進めてかれこれ4時間。食休みでの話しが長かったせいか、思いのほか進んでいない。今回の旅は、特に急ぎではないから問題ないけどね。

 「化け物モンスターを先頭集団が倒してくれるおかげで、平和な旅が出来ているね。」

 公国を出た者たちが長い列を組んで移動している。その列にちゃっかり参加させてもらっている俺たち。

 「ええ。想定以上に善戦しているみたいですね。死ねばいいのに...」

 元公国の女王ヨリさんが吐き捨てるように言う。

 (最近思うのだけど、ユリさん、ヨリさん、言葉遣い荒くなったよな。俺の影響?いやいや、これが本来の姿なのかも。きっとそうだ。)

 「そんなことを言ってはいけないわ、ヨリ。私たちの歩く道中を安全にしてくれているのだから、役にたってもらわないと。本当に存在価値がなくなるわよ、この人たち。」

 (えっ...ユリさん。貴女、鬼ですか?)

 「確かにユリの言い分は分かります。貴女はいいかもしれませんが、ケンさんとラブラブ出来ないのが嫌なのです。」

 (えっ...ラブラブしないよ?)

 「くっ...確かにヨリの言いたいことは分かるわ。それと私もケンさんとイチャイチャしたいわよ?1人で独占しない事ね。もししたらぶっ殺すわ。」

 俺の両腕を掴んで離さない2人。俺を間に挟んで口喧嘩。もう注意するのが疲れた。これが通常運転だと思い、2人の会話を止めることなくただ眺めている。
 
 口喧嘩している2人はさておき、先頭集団の中から傭兵崩れのような男が俺たちの方へ歩いてくる。

 (あー、これ。何か言われるぞ。うるさい、黙れ、とかならいいんだけど...はぁ、穏便に頼みます!)

 傭兵崩れのような男が俺たちの所に着く頃には、ユリさんとヨリさんは口喧嘩をやめ相手の動向を探っている。
 周囲を見渡すと他の傭兵崩れや元騎士風の男たちが、何か女性に話しかけ連れていく様子が伺える。

 「よォ、兄ちゃんよォ。両手に花なんて羨ましいぜ。こっちは命と身体張ってんだ。守ってやっから、女寄越しな?兄ちゃんも、そこの女も俺たちが守っているから安全があるんだ。死にたくねぇだろォ?見ろよォ、他の連中も差し出してるぜ!」

 (えぇー、頼んだわけじゃない。ただ俺たちが行く先にお前たちがいただけじゃん!ってか、他の連中、自分の命の為に最愛の人ですら差し出すのかよ。少しは抵抗しろよ...)

 「何黙ってんだぁ?!アァん?!さっさと来い!」

 忍耐力がないのか傭兵崩れのような男がユリさんの方に手を伸ばす。

 「触るな...。誰がお前みたいな人間クズに俺の大切な人たちを差し出さないといけない?勝手に守ったつもりでいるだけだろ?」

 ユリさんに触れようとした手を払い除け、俺はクズ男の前に立ち告げる。

 「あー、もしかして、それすらも理解できない人間クズなのか。今回は見逃してやるから失せろ。」

 理解できない人間クズの辺りでクスクスと笑い始めるユリさんとヨリさん。しかも、相手を挑発するかのような笑い方。

 「チッ...。なにカッコつけてんだよオメェ。これからの移動、命の保障があるだけマシだろ!?それと、守っていたのは事実だァ。女を寄越せねぇなら、お前たちの命を守った対価を寄越せよォ?」

 「フッ...対価ね。いいよ。差し出すよ。」

 俺は煙草を取りだし火をつけ吸う。そして傭兵崩れのような男に副流煙を吹きかける。

 「ふぅー。煙草。今じゃあ、中々手に入らない品物だ。これが対価でいいだろ?」

 「嗜好品か...確かに悪くねぇ。女ならまだ沢山いるしなァ。その煙草いくつ持っているんだぁ?」

 「ふぅー。残り10本。全部お前にやるから俺たちの前から早く失せろよ。死ぬぞ?」

 脅しでも何でもない。確実に俺の後ろにいるユリさんとヨリさんによって刺し殺される。

 (早く失せろよ。マジで、死ぬぞ!事を大きくしたくないんだ!)

 「チッ...今日は煙草で許してやる。明日は、煙草以外のもんを差し出せよォ!何も出せねぇなら女だかなァ!」

 煙草を差し出し去っていく男。

 「なるほど。先に化け物モンスターと戦って安全を保障する。その場面を見せれば素直に対価を支払うと...力がないと出来ない芸当だな。」

 「ええ。少し頭が回るクズがいますね。始末しますか?」

 「始末したらここにいる人の安全がなくなり烏合の衆になる。そっちの方が面倒。それより、俺を睨めつける男たちの方が癇に障る。嫁や娘を差し出すのが嫌なら抵抗すればいいのに。」

 「そうね。誰かの庇護下に入らないと生きていけないなんて、弱い人間ね。日頃から力を蓄えていたらこんな事にならないのに、アホらしいわ。気分が悪いから少し離れた場所で天幕テントを設置しましょ?」

 弱い、ユリさんにとって嫌いな言葉。知らない男たちに弄ばれる女性たちと昔の自分を重ねているのか...確かに気分が悪くなる光景だ。今の俺たちなら、容易に助け出すことが出来る。

 「ケンさん、私のわがまま聞いてくれる?」

 集団から離れた場所に天幕テントの設置を終えた時、ユリさんから声をかけられる。真剣な目。覚悟をした表情で何のわがままを言うのか、少し身構える。

 「スッキリした気分で寝たいの。だから、クズたちの掃除手伝ってくれるかしら?」

 (良かった…ここで抱いてとか言われなくて。)

 安堵な息を吐き、肩の力を抜き、ユリさんに返事をする。

 「お易い御用だよ。我が最愛の人。」

 返事を聞いた途端、笑顔で抱きつくユリさん。しっかり受け止め...る前に俺の前からユリさんが消える。

 「ガッ...!何するのよ、ヨリ...」

 「当たり前です。私の前でイチャイチャしないで下さい。当然の制裁です。」

 拳を振り切った姿勢のヨリさん。なんて威力のパンチなんだ!吹き飛んだユリさんは...全然平気みたい。平然と立ち上がっている。

 (フラグ回収。昼に何も起こらないで!とか願うんじゃなかった...)


後書き

次回 夜襲2
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