どーも、反逆のオッサンです

わか

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サツキ公国編

第128話 どーも、罠です

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前書き

前回のあらすじ

ネイレスさん 母親を始末する


本文


どーも、門を潜り王宮に辿り着いたオッサンです。
神龍眼で魔法系統の罠がないかの確認が済み、王宮の中に足を踏み入れる。

「ツヴァイ、案内よろしく頼む」

「はい、お任せ下さい」

本当に公国最後の戦いだと思いたい。
罠感知スキルを持っていないため、廊下を慎重に進む。
龍眼化スキルは、魔力の流れを視ることが出来るだけで罠を感知出来るわけではない。
古典的な罠...落とし穴や何かの拍子に罠のスイッチを押してしまい矢が飛んできたりなどは己で対処しなくてはいけない。

「ツヴァイ、レスト王がいる部屋まで案内してくれる人間を捕らえた方が早くないかしら?」

リーダーであるネイレスさんを立てながら、提案をするユリさん。
帝国では、誰だっけ?えーと、聖剣を持っていた人間を案内人にしたんだよな...毎日が濃厚すぎて、記憶を辿るのに時間がかかる。

「その方法が手っ取り早いですが、ご覧の通り騎士やメイドが居ません。もぬけの殻です。本当にレスト王がいるのかすら不安に思えてきました...あの女、最後の最後に嘘をついた?」

ネイレスさんが言う、あの女は、母親のことだろう。
ネイレス母が嘘をつくメリットなんて、俺たちが騙されて時間の浪費をすること以外ないはず。

「もし、嘘をついていたとしたら、きっと、地獄で笑っているだろうね。ツヴァイ、廊下に美術品がないのは前から?」

「いいえ。絵画や土器など飾っておりましたが、見渡す限り無いですね。ここに来て振り出しに戻ってしまったのでしょうか...」

肩を落としため息を吐くネイレスさん。
この状況にイライラしているユリさん。髪の毛を弄り、枝毛をナイフで切っている。

「価値あるものを持って逃走しているのであれば、いずれ見つかるはず。最悪、レスト王は後回しにして...」

天井から発砲音が鳴り、弾がツヴァイを目掛けて飛んでくる。弾に魔力が込められているのを感知し、俺たちは後方に飛ぼうとした瞬間2発目が発砲される。

「待ち伏せか!しかも、何らかの魔法の道具で気配を消していやがる」

魔力が感知出来ず気配も感知出来なかったのは、その分野に特化しているか法国の守護者みたく何かしらのスキルを使用している場合。公国にまだ実力者がいるのであれば有り得る話しだが、可能性は低い。そうなると、魔法の道具による気配遮断が考えられる。

「チッ。厄介極まりないなッ!避けても着弾したら爆発するとか、ゲホッ、ゲホッ。次は毒を投げ入れたのか!?」

粉末状の粉が舞ったと思ったら、喉に痺れが起きる。
これを考えた人間、きっとロクでもないやつに違いない。銃による集中砲火に毒を撒き散らすとか、アア!面倒くせえ!

「ゼロ!ここで魔力解放は控えて下さい!ケホッ」

ネイレスさんから指示。ここは堪えるしかないみたい。

「後ろから騎士が来たわよ!」

「えぇぇ?マジかよ!」

うわっ、これはアカン。完全に罠にハマっちまった。
敵は、物理的な罠ではなく、誘導してから一気に叩く作戦を実行してきた。

「敵の中に、優秀な奴が!ええ?次は魔物が前から!?」

妖黒犬ヘルハウンドが俺たちに特攻とばかりに、鳴きながら突っ込んでくる。

「ツヴァイ!!魔力解放しなきゃ殺られる!」

「ううっ、仕方ありません。ゼロ、お願いします!」


『魔力解放!!吹き荒れろ、黒桜!!』


ドス黒い魔力が吹き荒れ、粉末状の毒を吹き飛ばし、魔力操作によって形状変化した鋭利な花びらが妖黒犬ヘルハウンドや天井にいた狙撃手を切り刻むと...

「はああ!?」

狙撃手と天井の壁が一緒に落ちてくるという結果に。

「もろっ!」

「ツヴァイが危惧していたのは、天井の脆さだったのね...」

天井が崩れ、廊下が塞がる。そして、後ろから騎士たちがなだれ込むように突撃してくる。

「絶対、魔人族がいるだろ!これっ!」

魔人族がいるとなれば、出来るだけMPを温存しておいた方がいい。
身体能力向上スキルを発動させ、ゴウケツで敵を何人も屠る。何度も何度も、時間が許す限り剣を振り続ける。

「はぁはぁ、毒が回ってきた...やべぇ...」

喉の痛みだけでなく、目眩がする。あと、呼吸がしずらい。

「ゼロ、解毒ポーションを飲まないと...邪魔ねッ!」

ユリさんとネイレスさんも苦しそうな声を出しつつ敵の対応をしている。
騎士だけでなく、みすぼらしい格好をした人間も襲いかかってくる。

「ギャハハ。これで無罪放免になるならありがてぇ!!」

罪人も投入したのかよ!!ふざけろッ!

「はぁはぁはぁはぁ。解毒ポーションを飲む暇がない...次から次へと来やがって。ここで死にたくない。死ねない。後先考えていたらなんも出来ねぇ。アインス!ツヴァイ!巻き込まれるなよ!!」

コッケンを抜き、刀身に魔力を込める。


『魔力強化、魔力解放、魔力暴走!』


刀身から放たれた荒れ狂うドス黒い魔力。魔力に触れるだけで敵を焼き尽くす。濃密に圧縮された魔力は熱を持つ。以前までは吹き飛ばすだけであったが、蒼炎を使っている内に魔力に熱を持たせるために、どのくらい込めれば良いのか分かってきた。燃費が悪いのは諦めるしかない。
コッケンを横に鋭く払う。
ユリさんとネイレスさんは、巻き込まれないよう飛ぶ姿が見える。
崩れ落ちた天井の瓦礫も吹き飛ばし、近くにいた騎士も焼き払う。
隙を狙って攻撃してくる敵は、もう片方に持っているゴウケツで受け止め、コッケンでトドメをさす。その繰り返し。

「ゼロ!もう結構です!敵は全滅しました!」

どれくらい時間が経ったのか分からない。

「はぁ、はぁ、はぁはぁ」

「ゼロ!!」

霞む視界には、ユリさんが見える。
俺は、解毒ポーションを口の中に注ぎこまれ、反射で飲み込む。身体のだるさは残ったままだが、しっかり解毒してくれたようだ。呼吸がしやすくなった。

「ありがとう、アインス...」

「こちらこそありがとう、ゼロ」

「久しぶりに死が近くにあったよ。アインス、ツヴァイ。どちらでもいいんだけど、治癒してくれると嬉しい」


上級治癒ハイヒール


ネイレスさんが俺に治癒の魔法を行使してくれる。

「表面上の傷は完治したみたい。ありがとう、ツヴァイ」

体力やMPは回復していないが、先に進む為に俺はユリさんの背中に飛びつく。

「アインス、おんぶして」

「え!も、もちろん、おんぶするわ!うふっ、ふふふ」

「これで抱きしめる件は、なしね」

「いいわよ、ふふ。ツヴァイ?警戒よろしく」

「ぐっ...ここは、我慢です私。アインス!遺憾ですが、ケンさんをおんぶするのを認めましょう」

体力回復に仕方ない措置である。恥ずかしいけどね。
先程の戦闘でレスト王が逃げていないといいけど...



後書き

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