どーも、反逆のオッサンです

わか

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サツキ公国編

第106話 どーも、暴徒化です

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主人公 まったりする


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どーも、夜道を歩いているオッサンです。
街路の方から怒号が聞こえる。何か起きているのは間違いない。せっかく街に出ても不自然ではない服装にしたのに...

「ユリさん、声拾える?」

ユリさんのが耳に手を当て集中して声を拾う。

「たくさんの声で聞き取りにくいわね。でも、騎士と対立している人間がいるみたいね」

「ユリさん、ありがとう。ネイレスさん?」

隠密スキルを解除して、俺の横に現れる。

「はい。ケンさん、ここに居ますよ」

「騎士が動いているということは、レスト王の命令であることで間違いない?」

「そうですね...うーん。私には専属の騎士がいませんでしたから分かりませんが、兄レストであれば騎士への命令権を有していてもおかしくありません。恐らく、ケンさんが懇意にしている商人が宝物庫だけでなく食料庫の中身も盗み、食料や物資の徴収をしているかもしれません」

「あー、プルトスさんならやりかねないなー。食べ物がなければ強行手段にでるのも当たり前の話か。プルトスさんも、中々悪だね。ふふ」

プルトスさんの悪い笑みが頭に思い浮かび、つい笑ってしまう。あの人は、やると決めたら徹底的にしそうな感じがしたから、あながちネイレスさんの言っていることは的を得ているだろう。

「ケンさん、悲鳴が聞こえるわ。街路に出たら厄介事に巻き込まれるわよ?」

「そうだね、ユリさんとネイレスさんの考えに俺も同意するよ。山菜が取れる山に住んでいるおばあちゃんには生きていて欲しいな...俺、山菜について詳しくないから」

俺の両肩にユリさんとネイレスさんの手が置かれ、力が込められる。

「痛い、痛い。なんなのさ!」

「山菜、天ぷら、美味しい。おばあちゃんを助けるべきよ!」

「天ぷらのために。死んでもらっては困ります!助けに行きましょう!今すぐ行きましょう!」

「怖いし、痛い。分かったから手を離してくれないかな?」

出来れば戦闘は避けたい。昨日の戦闘の疲労がまだ残っているし、何より目立つ行動は避けたい。というか、おばあちゃんの心配より天ぷらの心配かよ。冷たい奴らだな、まったく。うん、俺も同じだけどね。

「助けるのはいいけど、居場所が分からない。探すなら人手が必要だね。姫さまたちに協力してもらう?」

「いいえ、その必要はないわ。あまり借りを作りたくないから私達だけで探すわよ」

ユリさんに俺の提案を拒否される。確かに借りを作りたくはないが、今は傭兵の身分だし金払えば動いてくれそうだけどな。
俺がそう考えていると、ネイレスさんが俺の顔を覗き込み言葉を発する。

「私、あの人たちと仲良くしたくありません。ケンさんに好意があるように思います。殺しちゃうかもしれません」

え?殺すって?何言ってんのネイレスさん?

「お、おう。頼るのはやめだ。三人で探そうか!」

「ふふふ、ケンさん。無駄に人を殺さない判断をして素晴らしいです。ねぇ、ユリ?なんであんな女達を放置しているのですか?」

俺から離れユリの横に移動するネイレスさん。ユリさんの顔を見ると...目の光が消えてハイライト。怖い怖い。

「ネイレス?貴女の気持ちは分かるわ。でも、ケンさんの役に立つ駒が必要な時があるの。ケンさんに手を出したら殺すけど、まだ大丈夫よ。ふふ、私とネイレスの大事な人なのだから...でも、モイラって子はあざといわね。殺す?」

「誰ですか、そいつ。教えてください」

ヤバいヤバい、このままだと商会に行って暴れかねない!

「二人とも落ち着いて。おばあちゃんを助けることが先だろ?姫さまたちのことは後にして」

俺は二人に声をかけてから建物の上へ飛び、屋根を足場にしておばあちゃんの店の方へ移動する。女は怖いなと思いながら、声が聞こえる方に視線を向ける。住民の暴徒化という表現が最も相応しい様子。騎士が斬りかかっているところに兵が対応している。流石のレスト王でも末端な兵までは掌握していないようだな。帝国の帝王がいかに恐れられていたのか、優秀だったのか分からないがレスト王より格が上だったのは俺でも分かる。

「ケンさん、隠密スキルを発動させないでいいの?」

ユリさんとネイレスさんは、一旦姫さまたちの処遇について話し合うのを止めて俺の後に着いてきている。

「ユリさん、下で暴徒化している奴らが俺たちを見ると思う?たぶん、大丈夫だろう。ローブのフードだけしていればいいさ」

「そうね。無駄にMPを消費する必要もないし、このままでいいわね。それにしても、ネイレスの兄は馬鹿なのかしら?食料調達のために騎士を動かすなんて...」

「兄レストは、力で支配しようとしているかもしれませんね。恐怖で国民を支配する。私の存在がなくなった今、騎士による力を頼るのは必然だったのでしょう」

二人の話を聞いて、俺は、この暴徒化を引き起こしたのはプルトスさんだと確信する。レスト王との商談があると言っていたが、恐らく商談は成立しなかったのだろう。俺がプルトスさんの立場なら神殿勢力、キサラ法国に商談を持ちかける。

「暴徒化すれば門の封鎖に割く人員が不足する。やるなー、プルトスさん。出来れば敵に回したくない人だ」

「ケンさんは、あの商人が引き起こしたと思っているの?」

ユリさんに尋ねられて、俺はその通りという意味を込めて頷く。

「この暴徒化の要因は、王宮の食料問題だとすると、プルトスさんが裏で手を引いているはず。三日あれば脱出出来ると言っていたし、何かすると思っていたが、まさかこんなことを引き起こすとは。神殿勢力に商談、もしくは援助を行っているだろうね」

「ふーん。ケンさん、あの商人に利用されるのは勘弁よ?」

「私も、ケンさんとユリ以外の指図は受けないです。あっ...魔法が飛んで来ます!」

水球ウォーターボールみたいだね。魔法を回避して先に進むよ!」

「分かったわ」
「はい!」

俺たちは地上からの魔法を全て避け、おばあちゃんが構えていた店があった人で賑わっていた街路に到着する。

「ケンさん...」
「ケンさん...」

声を揃えて俺の方を向いて顔を見てくるが無視する。それより人で賑わっていた街路には、おびただしい血に人の死体。店内の物は強奪された跡があり、必死に抵抗したと思えるサーモンを俺に売ってくれたおっちゃんが右腕が無くなっており、身体には斬られたあとが残っている。俺はそのおっちゃんに声をかける。

「生きているか?俺の声が聞こえるなら返事しろ」

「うっ、まだ死んでねーよ。喉が乾いた水をくれ」

俺は、店の中にあったコップにスポーツドリンクを注ぎおっちゃんに渡す。

「身体に効く飲み物だ、美味しい水だから安心して飲め」


ドォォオオンッ、ドォォオオンッ、ゴォゴォゴォゴォ


「おっちゃん水早く飲め。そしてこの状況を落ち着いて説明しろ。斬られている場所は治癒によって回復させるから安心して。右腕はどこ?」

「こちらですか?」

「ありがとう...」

あっぶな!ついネイレスさんと言っちゃいそうになったよ。おっちゃんの腕を斬り落とされた肩口にくっける。

「いわ、いたい、痛い、死ぬ!」

「我慢、我慢上級治癒ハイヒール

肩口と腕に集中させて治癒を行っている。ネイレスさんは周囲警戒、ユリさん他の斬られた箇所の治癒を行っている。一応、腕はくっついたが筋繊維や骨までは治さなかった。出来るけど、治癒が使えることが知られれば、更に厄介事に巻き込まれる。適度に治すのが得策。

「身体にあった傷は全て塞いだ。ただ、身体の中は、まだ完全に治っていない」

「にいちゃん助かった。感謝する。最高のサーモンを買ってくれたにいちゃんだよな?」

「ああ、そうだよ。初めにこちらの質問からでいいかな?」

「もちろんさ。命の恩人だ。さぁ、聞いてくれ」

「前に山葵を販売している店を教えてくれたよな?なんでその店が燃えていて、山も燃えているんだ?」

「俺たちは、商人だ。あのばぁちゃんも商人。金を払わない奴らに商品渡せねーだろ?だからここの街路に並んでいる店の人は騎士たちからの要求を断った。断ったからこうなった。 ばぁちゃんは、真っ先に殺されたよ。山菜の本を騎士たちの目の前で燃やしたんだ。それに激怒した騎士が魔法を放ち店を燃やし、そして殺した。なぁ、教えてくれ。俺たちは間違っていたのか?」

「正しいことをしたと思う。今はゆっくり休め。」

俺たちは魚介屋さんから出て、再度周囲を見渡す。

「はぁ、この辺り全て全滅だな。おばあちゃんが亡くなった、そして今、山を燃やされてしまった。うーん、」


ガシャ、ガシャ


俺が思考中に騎士の一人がこちらに向かってくる。

おばあちゃん、約束守れずごめんなさい。こいつらに相応しい罰を与えるから。安らかにお眠りして下さい。



後書き

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