どーも、反逆のオッサンです

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サツキ公国編

第102話 どーも、Mです

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前回のあらすじ

主人公 介抱される


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どーも、ユリさんとネイレスさんにお世話してもらっているオッサンです。
ネイレスさんも生死をさまよったのに俺のお世話とかよくやるよ...罪悪感があるんだろうな。無理しなくてもいいのに。あの時、ユリさんに止めてもらわなければ確実に殺していた。罪悪感が本来あるはずなのは俺だろう。

「ユリさんの選択が正しかった訳か。俺もまだまだだな」

ボソッと口に出して呟く。

「どうしたの、ケンさん?」

顔を覗き込みながら尋ねてくるユリさん。聞こえないくらい小さな声で呟いたのに、地獄耳だね。

「何でもないよ。ユリさんはともかく、ネイレスさんは俺と同じく重傷だったんだから安静にしなよ」

首を横に振り、姿勢を正すネイレスさん。

「私の未熟さが招いたことです。せめて、これぐらいさせてください。お願いします」

「ケンさん、あーん。美味しいかしら?」

ユリさん...アンタってやつは、どこまで欲望に忠実なんだよ。あーんされたら食べるけどさ。料理が苦手な二人は、粉末状のポタージュをお湯で溶かしたものとパンにちぎって野菜に分厚く切られたお肉をミディアムに焼いたものを用意。今後は、もう少しレパートリーを増やせるように俺の手伝いをさせようと心に誓う。

「うん、美味しいよ。ありがとう、ユリさんとネイレスさん。ネイレスさんの気持ちが俺のお世話で晴れるなら安いもんだ。よろしく頼むよ」

「はい!一生お世話しますね!」

えっ?一生?お、重い。そんなキラキラした目で宣言しないでよ。ユリさん?なに頷いていらしゃる?

「正直私だけではケンさんの全てを支えるのは大変。私と同様な気持ちを持っているネイレスがいれば完璧に支えられるわ。期待しているわよ、ネイレス」

「ふふふ、ユリ。今は貴女にケンさんへあーんを許していますが、いずれ私がその場所になることを覚悟していて下さい」

「分かったわ。私がケンさんの右、ネイレスが左。お互い切磋琢磨しましょう。張り合いがあって刺激的な日々が過ごせそうね。ふふ」

「そうですね。ふふふ。とっても幸せです。この幸せの時間を多く出来るよう敵は駆除しませんと...私に憑依した海龍はいずれ殺します。手始めに公国の騎士を殺さないといけませんね」

ねぇ、さっきから何を話しているのかな?俺を置いて何を決めているのかな?あと、物騒だよ?過激思考になっているよ?これは止めに入らねば!

「ちょっと!二人とも...」

「あっ、ごめんなさい。先走りました、もちろんケンさんが一番殺したい者から排除します」

え?

「そうね。公国に帝王の遺産である銃が流出していた。慎重に行動して銃を持つ者から奪わないといけないわ」

真剣な目で俺を見つめないでよ!この流れは俺が頷くパターンじゃん。あれか?俺を傷つけた奴が憎いのか?考えすぎか。

「ふ、二人の言う通りだな。うん。でも、今日と明日は体力回復に費やすからね。これは絶対だから」

「分かっているわ。特にケンさんとネイレスは、しっかり休んで貰わないといけないわね」

「分かって貰えて嬉しいよ。あ、その肉ちょーだい」

すかさず、笑顔であーんしてくれるネイレスさん。

「はい、ケンさん。あーん。ふふふ、幸せ」

「もぎゅ、もぎゅ、もぎゅ。次から肉焼く時は、味付けしようね」

肩を落とす二人を見て苦笑いする俺。でも、ご飯が食えるだけでもありがたい。この後も交互に俺にあーんをしてくれて食事を終える。俺に食べさせたフォークでお世話の合間に食事を済ませる二人。ブレない人だ。

「お、足に力が入る。スキル、自己治癒向上のおかげだな。地味に助かるなこれ。手の感覚も少し戻って来たし、うん、これなら風呂に入れそうだ」

「ダメよ、ケンさん。今日は三人でお風呂入るの。ケンさんとネイレスは私が洗ってあげる」

「いやいやいや、申し訳ないから!一緒に風呂入るとかなし!」

「私はユリに洗って貰います。ケンさんもそうしましょう?一緒に入ればユリの負担が減りますから」

「うっ...そう言われると。うーん、髭も剃るからやっぱりダメだな。許してユリさん!」

手を合わせて懇願する俺。おかしくないか、これ?と思いつつ、お願いをする。

「あっ!私も変装の為に髪を切らないといけません。ユリ、お願い出来ますか?」

「任せてちょうだい。こう見えて髪切るの得意なの。ケンさんの髭も私がしっかり剃るから安心して?それにケンさんも髪の毛切りましょう。この世界に転移してから整えていないはず。今の髪型もかっこいいけど、戦闘の時前髪が邪魔になるわよ?」

「そうだね、一度整えて貰おうかな。はぁ、仕方ない。一緒に風呂入りますよ」

やったー!と声を出しバンザイして喜ぶ二人。コイツら何がなんでも俺と一緒に風呂に入ることを企んでいたな。ユリさんがステップしながら風呂場に行く。ユリさんが準備している間、ネイレスさんと会話をする。

「ネイレスさん、海龍との繋がりは本当に無くなったの?感覚で分かるもん?」

「うーん、無くなったという表現は正しくないですね。海龍による支配が弱体化していると言った方が正しいです」

「へぇー、そうなんだ。龍眼化のスキル使えなかったりする?」

少し考える素振りをするネイレスさん。呼吸を整え、目に力を入れている様子。

「問題なく使えますね。今は一方的に力を借りている感覚です。ケンさん、お願いがあります」

「なに?」

「次、海龍に憑依されたら躊躇わず私の首を刎てください。もう、あのような惨劇を作りたくないです。ユリを攻撃している時、私はただ俯瞰して見ているだけ...とても心が苦しかった。お願いします、ケンさん。愛する貴方も傷つけたくありません。どうか、お願いします」

頭を下げて涙声のネイレスさんを見て、俺は...

「ユリさーん!ちょっとこっちに来て!!」

音を立てずに俺の近くまでくるユリさん。ネイレスさんの話を伝えてから、俺の意見を伝える。

「ユリさん、ネイレスさんが海龍に憑依しても殺すなよ?次も俺が来るまで耐えてくれ。出来る?」

「そうね…ケンさんがネイレスを殺さないなら耐えるわ」

「ユリ!何言っているの!?」

「黙っていなさい、ネイレス。貴女の命はケンさんのものよ。ケンさんの意見が最優先されるわ」

えっ?そうなの?別に俺のものではないと思うよ。

「ユリさん、落ち着いて。ネイレスさんもそんな悲しい顔しないの。本体ではない限り海龍に負けることはないから安心して?また海龍の魂を削ってやるさ。それに、ネイレスさん、そこまで深刻に考えなくてもいいよ。ユリさんが神龍に憑依された時なんか、もっと絶望的な状況だったからね。俺を斬ることに躊躇いなんかなかったよ、ユリさんは」

「えっ?ユリ、貴女、頭おかしいのでは?」

「私は、ケンさんとの死合いが出来れば何でも良かったと思っていた時期があったのよ!やめて、非難する目で見ないで!」

「あはははは、ユリさんがおかしいのはいつもの事だから。うんうん、やっぱりネイレスさんはまともだったね」

普通そうだよな。殺し合うような展開を望む奴ってヤバいよな。ドン引きしているネイレスさんに再度伝える。

「ユリさんがまた神龍に憑依されても、ネイレスが海龍に憑依されても首を刎ることはしないよ。痛めつけるだけにするから」

「痛めつける...ふふ、それなら安心です。むしろご褒美です!」

あぁ、ネイレスさんの性癖がやっと分かった。コイツMだ。すげぇ喜んでいるし。なんなら今、お仕置して欲しそうな顔をしている。

「何して欲しいの?」

「私を罵って下さい!叩いてください!」

俺はユリさんを見る。ユリは顔を横に振り、ネイレスさんを残念そうな目でみている。

「私におかしいと言っていたけど、ネイレスも頭おかしいわ。私は、ケンさんに沢山愛を囁いて欲しいわよ」

いや、どっちもしないから。おかしいのは二人共だよ!



後書き

次回 ねんね
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