89 / 145
サツキ公国編
第89話 どーも、お出かけです
しおりを挟む
前書き
前回のあらすじ
サツキ公国で何か起こる?
本文
どーも、隠れ家を手に入れたオッサンです。
拠点があると、ついだらけてしまう。前の世界ではインドアだった俺。こんなに活発に動くなんて思いもしなかった。ネット小説を読んでダラダラする日々が恋しい。
「料理に飽きた。少し散歩でもして気分転換しようかな」
「それは一大事よ、ケンさん!」
「そうです!私たち料理が出来ないのです!」
「心配するところ、そこなの?」
「も、もちろん、ケンさんの事を想っての発言よ」
「そうです!」
コイツら料理を作らなかったのではなくて、作れなかったんだな。そういえば、ユリさんの手料理を一度も食べたことがない。スープを煮込んでもらったくらいか?
「それぞれ家事の分担が出来ているから良いけど、俺が居なかったらどうするつもりだったんだ?」
「ケンさんが居ない?死ぬわ」
「私も死にます!」
「おいおい、答えになってないから。極論すぎるだろ」
「私は至って真面目よ」
「私もですね」
はぁ、もういいや。今後も飯を作るのは俺になりそうだな。仕方ない、諦めよう。
「ネイレスさん、この時期の旬の魚って何?」
「サーモンですね。脂がのってとても美味しいですよ」
「サーモン...食べたことがないわ。ケンさん、私と約束したわよね?海の幸をご馳走するって」
「ご馳走するって言ったけ?まあ、良いけど。ネイレスさんには申し訳ないけど、今日から魚料理になるよ」
「構いません。私も、それほど魚料理を食べておりませんでしたので楽しみです」
「えっ?今まで何を食べていたの?」
「うーん、パンとスープにサラダ。あとは果物ですね」
「それだけ?」
「はい。食に興味がなかったので。ケンさんの料理で目覚めました」
「分かる。ケンさんの料理は罪作りよね!」
「そうですね。鍋は衝撃的でした。こんなに美味しい料理があるんだなって感動したくらいです」
「こっちの世界に来てから、食事の大切さを知ったからな。俺も似たようなもんだ」
「ケンさん、暗くなる前に買い出しに行きましょう」
「そうだね。皆んなでいく?」
「勿論よ」
「無論です」
「あ、はい。それじゃあ支度して。この辺りのマッピングも兼ねて買い物しに行こう」
「探検みたいで楽しそうね、ふふ」
「ワクワクします!」
「ネイレスさんは、この辺りを知らないの?」
「知らないですね。勉強、作法、剣の鍛錬、モンスターとの戦闘、政治。その繰り返しの毎日でしたから」
「何その息苦しい生活。俺は耐えられない。女王をやめて正解だよ」
「ふふふ。本当に、仰る通りです。毎日が楽しくて仕方ありません」
質素なレインコートを顔を隠すように羽織り、表の玄関から外に出る。コソコソしているから怪しまれる。堂々としていればいい。たぶん。
「玄関に黒い布を挟んで置いてと...よし、行きますか」
とりあえず、真っ直ぐ進む。人の声が多く集まる場所に行けば何か分かるだろう。
「ケンさん、雨が降っていてよかったですね」
「そうだね。顔を隠して歩けるし、今の俺たちにとって恵みの雨だな」
「公国に着くまでは、最悪だったけどね」
「ユリ、そういうことを言わない。公国は何日も続いて雨が降るんです。天候は操作出来ませんから仕方ありません」
「二人ともプルトスさんの店にあった魔力探知阻害の指輪つけているよね?」
「勿論付けているわ」
代表してユリさんが返事をしてくれる。神官服を着ている女が近くにいるが俺たちに気付かない。
「気付かれませんでしたね」
「そうね、警戒しすぎも良くないのかしら?」
「ネイレスさんを探していることは極秘事項なんだろ?末端な兵まで知っている可能性は低い。プルトスさんの店に来た兵は地位が高い奴だな」
「そうですね。騎士まで動員出来ませんから、隊長クラスの兵士だけに任務を与えているかもです」
小さい声で会話しながら前に進む。
「そもそもなんで俺たちが警戒しないといけないんだ?」
「出た、ケンさんの開き直り!」
「えっ?え、え?」
「ネイレスは知らないわよね。ケンさんが帝国を滅ぼしたのも全て帝王が悪いと言い出してからなのよ」
「ええっ?」
「今回は、国を落とす事はしないさ。せっかく海の幸と公国特有の調味料があるかもしれないんだ。ここは帝国と違う。プルトスさんの依頼を完遂させて、レストにざまぁすれば良いだけ」
「簡単に言いますけど、それが一番大変ですよ?」
「大変だろうけど、どうせやるんだ。海龍とキサラ法国も巻き込んでやろうぜ」
「相変わらず、恐ろしい発想をするわね。ふふ、でも面白そうね」
「うっ...その目、やめて下さい。ダメとは言えないじゃないですか」
「ネイレス。貴女、まだ耐性がないのね。あの目、ゾクゾクするでしょ?」
「そうですね...」
「そこの二人コソコソ話さない。これは決定事項だからいいね?」
「はーい」
「はい」
あれ?よく考えたら、また戦争になるじゃね?
後書き
次回 未定
前回のあらすじ
サツキ公国で何か起こる?
本文
どーも、隠れ家を手に入れたオッサンです。
拠点があると、ついだらけてしまう。前の世界ではインドアだった俺。こんなに活発に動くなんて思いもしなかった。ネット小説を読んでダラダラする日々が恋しい。
「料理に飽きた。少し散歩でもして気分転換しようかな」
「それは一大事よ、ケンさん!」
「そうです!私たち料理が出来ないのです!」
「心配するところ、そこなの?」
「も、もちろん、ケンさんの事を想っての発言よ」
「そうです!」
コイツら料理を作らなかったのではなくて、作れなかったんだな。そういえば、ユリさんの手料理を一度も食べたことがない。スープを煮込んでもらったくらいか?
「それぞれ家事の分担が出来ているから良いけど、俺が居なかったらどうするつもりだったんだ?」
「ケンさんが居ない?死ぬわ」
「私も死にます!」
「おいおい、答えになってないから。極論すぎるだろ」
「私は至って真面目よ」
「私もですね」
はぁ、もういいや。今後も飯を作るのは俺になりそうだな。仕方ない、諦めよう。
「ネイレスさん、この時期の旬の魚って何?」
「サーモンですね。脂がのってとても美味しいですよ」
「サーモン...食べたことがないわ。ケンさん、私と約束したわよね?海の幸をご馳走するって」
「ご馳走するって言ったけ?まあ、良いけど。ネイレスさんには申し訳ないけど、今日から魚料理になるよ」
「構いません。私も、それほど魚料理を食べておりませんでしたので楽しみです」
「えっ?今まで何を食べていたの?」
「うーん、パンとスープにサラダ。あとは果物ですね」
「それだけ?」
「はい。食に興味がなかったので。ケンさんの料理で目覚めました」
「分かる。ケンさんの料理は罪作りよね!」
「そうですね。鍋は衝撃的でした。こんなに美味しい料理があるんだなって感動したくらいです」
「こっちの世界に来てから、食事の大切さを知ったからな。俺も似たようなもんだ」
「ケンさん、暗くなる前に買い出しに行きましょう」
「そうだね。皆んなでいく?」
「勿論よ」
「無論です」
「あ、はい。それじゃあ支度して。この辺りのマッピングも兼ねて買い物しに行こう」
「探検みたいで楽しそうね、ふふ」
「ワクワクします!」
「ネイレスさんは、この辺りを知らないの?」
「知らないですね。勉強、作法、剣の鍛錬、モンスターとの戦闘、政治。その繰り返しの毎日でしたから」
「何その息苦しい生活。俺は耐えられない。女王をやめて正解だよ」
「ふふふ。本当に、仰る通りです。毎日が楽しくて仕方ありません」
質素なレインコートを顔を隠すように羽織り、表の玄関から外に出る。コソコソしているから怪しまれる。堂々としていればいい。たぶん。
「玄関に黒い布を挟んで置いてと...よし、行きますか」
とりあえず、真っ直ぐ進む。人の声が多く集まる場所に行けば何か分かるだろう。
「ケンさん、雨が降っていてよかったですね」
「そうだね。顔を隠して歩けるし、今の俺たちにとって恵みの雨だな」
「公国に着くまでは、最悪だったけどね」
「ユリ、そういうことを言わない。公国は何日も続いて雨が降るんです。天候は操作出来ませんから仕方ありません」
「二人ともプルトスさんの店にあった魔力探知阻害の指輪つけているよね?」
「勿論付けているわ」
代表してユリさんが返事をしてくれる。神官服を着ている女が近くにいるが俺たちに気付かない。
「気付かれませんでしたね」
「そうね、警戒しすぎも良くないのかしら?」
「ネイレスさんを探していることは極秘事項なんだろ?末端な兵まで知っている可能性は低い。プルトスさんの店に来た兵は地位が高い奴だな」
「そうですね。騎士まで動員出来ませんから、隊長クラスの兵士だけに任務を与えているかもです」
小さい声で会話しながら前に進む。
「そもそもなんで俺たちが警戒しないといけないんだ?」
「出た、ケンさんの開き直り!」
「えっ?え、え?」
「ネイレスは知らないわよね。ケンさんが帝国を滅ぼしたのも全て帝王が悪いと言い出してからなのよ」
「ええっ?」
「今回は、国を落とす事はしないさ。せっかく海の幸と公国特有の調味料があるかもしれないんだ。ここは帝国と違う。プルトスさんの依頼を完遂させて、レストにざまぁすれば良いだけ」
「簡単に言いますけど、それが一番大変ですよ?」
「大変だろうけど、どうせやるんだ。海龍とキサラ法国も巻き込んでやろうぜ」
「相変わらず、恐ろしい発想をするわね。ふふ、でも面白そうね」
「うっ...その目、やめて下さい。ダメとは言えないじゃないですか」
「ネイレス。貴女、まだ耐性がないのね。あの目、ゾクゾクするでしょ?」
「そうですね...」
「そこの二人コソコソ話さない。これは決定事項だからいいね?」
「はーい」
「はい」
あれ?よく考えたら、また戦争になるじゃね?
後書き
次回 未定
0
お気に入りに追加
1,060
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる