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サツキ公国編
第82話 どーも、到着です
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前書き
前回のあらすじ
ユリとネイレスの殴り合いが始まる
本文
どーも、雨の中公国まで歩いているオッサンです。
女同士の戦いが終わりボロボロになっているユリさんとネイレスさん。MPを使わない素手による殴り合い。純粋に力と力の勝負。結果、二人とも仰向けで倒れ引き分けだったらしい。俺は先に進んでいたので見ていない。事後報告を受けただけ。
「それで、二人はその格好のまま行くわけ?」
「ええ、そうよ。ケンさんもボロボロのローブがあるでしょ?それに着替えればいいわ」
俺は、マジックバックから血で汚れているボロローブを取り出し羽織る。捨てずに取っといて良かった。
「ふふ、これで全員ボロボロですね。笑えます、ゴフッ」
血を口から吐き出すネイレスさん。身体にダメージが残っているのだろう。よく見るとユリさんもフラフラしている。
「二人とも、なんで治癒ヒールしないの?」
「治さないほうが感覚が研ぎ澄まされるからよ」
「ユリと同じ意見です」
「馬鹿だな...」
「うるさい!」
「うるさいです!」
「おお、すまん。つい心の声が漏れてしまった。門が見えてきたぞ」
シーワーズ帝国ほど大きな砦ではないが、前の世界では見かけないからいつ見ても新鮮だ。
「ネイレスさん、首都サツキでいいんだよな?」
「はい、そうです。私が首都から離れて1週間、どのような状態になっているか分かりませんが...兄が実権を握っているかもしれません」
「ネイレスが死んだという確証もなく実権を握っているのかしら?」
「いえ、私が留守の間に代理で政務をこなすことになっています。野心家の兄のことです。私がいないことを良いことにやりたい放題していると思います」
「よくそんな環境で我慢出来たな?」
「はぁー、もう慣れました。でも今回は、全て兄に押し付けるので気が楽ですけど」
「キサラ法国との戦争もあるかもしれないないし、丁度良かったじゃない」
「ええ、一度何もかも更地になってしまえばいいのです。ふふふ」
相当鬱憤が溜まっているのだろう。ネイレスさんの声が冷たい。冷気が身体から漏れ出ている。雨による気温低下も相まって寒い。
「今回は、ネイレスの兄レスト及びサツキ公国の民に不幸になってもらう。それが最終目標。それで良いかしら?」
「本当は観光の予定だったのだが…仕方ない。俺は、煙草と食糧さえ手に入ればなんでも良いや」
「ケンさん、海龍様に会う約束したのでは?」
「そうだった。何処にいるか分からないんだけど?」
「海辺まで行き船に乗りましょう。王宮に私の船があります。小さいですが、3人だけなら十分乗れます」
「それ、マジックバックに入るかしら?」
「それなら問題ない。ユリさん覚えている?帝国の商会の商人のこと」
「初老の男性だったわね。それがどうしたの?」
「名は、プルトス。内陸である帝国の食糧を売りに来ているはず。それと武器をね」
「そうなの?初耳だわ。それは確かな情報?」
「本人がそう言っていたし、間違いないよ。かなりやり手な男だと思う。俺の前の世界では、ああいう男のことを死の商人と呼んでいる」
「えっ?」
「あっ...まだネイレスさんに話していなかったっけ?」
俺は、ネイレスさんに別の世界から来てこの世界での体験を話す。勿論、帝国のことも全て。俺の説明の抜けは補填としてユリさんが話す。
「ケンさんも色々あったのですね...ユリ、先程はすみません。私の配慮が足りなかったです」
「良いわよ、別に。ケンさんと一緒にいて何もされていないのは事実だし」
「それにしても、ケンさんが一度結婚されていたとは。その女殺したいです」
「ネイレスなら私の気持ちが分かると思っていたわ!」
「はい!」
「おいおい、また二人で盛り上がるなよ」
話が脱線しそうだったので二人の会話を止める。そろそろ砦の門に着く。俺とユリさんは仮面を装着し、ネイレスの後ろに移動し門に近づく。
「そこの3人、一度止まって頂きたい。ここは、王家専属の門であります」
「私よ。女王ネイレス。この短剣がその証」
ネイレスさんが門兵に短剣を見せる。その短剣を見た兵士が敬礼し、再び声を上げる。
「失礼しました!女王陛下。共周りはお二人のみだけでしょうか?」
「そうよ。モンスターの襲撃に合い、今は二人だけ。残りは死んでしまった。仮面は顔に大きな傷を負ってしまったから装着させているの」
「ハッ!畏まりました。どうぞ中へお進み下さい!」
この世界で一番丁寧に対応された気がする。門をくぐると雨が降っているけど潮の香りがする。
「これが、海の匂い?ふふ、楽しみ」
「ユリは初めての海でしたね。楽しめるのか分かりませんが、良い眺めですよ」
「早く、プルトスという男のところに行って宿を確保しましょう!」
はしゃぐユリさんを横目で見つつ、首都サツキの街を歩く。しっかり石畳が敷かれていて歩きやすい。プルトスさんは何処にいるのかな。
後書き
次回 商談
前回のあらすじ
ユリとネイレスの殴り合いが始まる
本文
どーも、雨の中公国まで歩いているオッサンです。
女同士の戦いが終わりボロボロになっているユリさんとネイレスさん。MPを使わない素手による殴り合い。純粋に力と力の勝負。結果、二人とも仰向けで倒れ引き分けだったらしい。俺は先に進んでいたので見ていない。事後報告を受けただけ。
「それで、二人はその格好のまま行くわけ?」
「ええ、そうよ。ケンさんもボロボロのローブがあるでしょ?それに着替えればいいわ」
俺は、マジックバックから血で汚れているボロローブを取り出し羽織る。捨てずに取っといて良かった。
「ふふ、これで全員ボロボロですね。笑えます、ゴフッ」
血を口から吐き出すネイレスさん。身体にダメージが残っているのだろう。よく見るとユリさんもフラフラしている。
「二人とも、なんで治癒ヒールしないの?」
「治さないほうが感覚が研ぎ澄まされるからよ」
「ユリと同じ意見です」
「馬鹿だな...」
「うるさい!」
「うるさいです!」
「おお、すまん。つい心の声が漏れてしまった。門が見えてきたぞ」
シーワーズ帝国ほど大きな砦ではないが、前の世界では見かけないからいつ見ても新鮮だ。
「ネイレスさん、首都サツキでいいんだよな?」
「はい、そうです。私が首都から離れて1週間、どのような状態になっているか分かりませんが...兄が実権を握っているかもしれません」
「ネイレスが死んだという確証もなく実権を握っているのかしら?」
「いえ、私が留守の間に代理で政務をこなすことになっています。野心家の兄のことです。私がいないことを良いことにやりたい放題していると思います」
「よくそんな環境で我慢出来たな?」
「はぁー、もう慣れました。でも今回は、全て兄に押し付けるので気が楽ですけど」
「キサラ法国との戦争もあるかもしれないないし、丁度良かったじゃない」
「ええ、一度何もかも更地になってしまえばいいのです。ふふふ」
相当鬱憤が溜まっているのだろう。ネイレスさんの声が冷たい。冷気が身体から漏れ出ている。雨による気温低下も相まって寒い。
「今回は、ネイレスの兄レスト及びサツキ公国の民に不幸になってもらう。それが最終目標。それで良いかしら?」
「本当は観光の予定だったのだが…仕方ない。俺は、煙草と食糧さえ手に入ればなんでも良いや」
「ケンさん、海龍様に会う約束したのでは?」
「そうだった。何処にいるか分からないんだけど?」
「海辺まで行き船に乗りましょう。王宮に私の船があります。小さいですが、3人だけなら十分乗れます」
「それ、マジックバックに入るかしら?」
「それなら問題ない。ユリさん覚えている?帝国の商会の商人のこと」
「初老の男性だったわね。それがどうしたの?」
「名は、プルトス。内陸である帝国の食糧を売りに来ているはず。それと武器をね」
「そうなの?初耳だわ。それは確かな情報?」
「本人がそう言っていたし、間違いないよ。かなりやり手な男だと思う。俺の前の世界では、ああいう男のことを死の商人と呼んでいる」
「えっ?」
「あっ...まだネイレスさんに話していなかったっけ?」
俺は、ネイレスさんに別の世界から来てこの世界での体験を話す。勿論、帝国のことも全て。俺の説明の抜けは補填としてユリさんが話す。
「ケンさんも色々あったのですね...ユリ、先程はすみません。私の配慮が足りなかったです」
「良いわよ、別に。ケンさんと一緒にいて何もされていないのは事実だし」
「それにしても、ケンさんが一度結婚されていたとは。その女殺したいです」
「ネイレスなら私の気持ちが分かると思っていたわ!」
「はい!」
「おいおい、また二人で盛り上がるなよ」
話が脱線しそうだったので二人の会話を止める。そろそろ砦の門に着く。俺とユリさんは仮面を装着し、ネイレスの後ろに移動し門に近づく。
「そこの3人、一度止まって頂きたい。ここは、王家専属の門であります」
「私よ。女王ネイレス。この短剣がその証」
ネイレスさんが門兵に短剣を見せる。その短剣を見た兵士が敬礼し、再び声を上げる。
「失礼しました!女王陛下。共周りはお二人のみだけでしょうか?」
「そうよ。モンスターの襲撃に合い、今は二人だけ。残りは死んでしまった。仮面は顔に大きな傷を負ってしまったから装着させているの」
「ハッ!畏まりました。どうぞ中へお進み下さい!」
この世界で一番丁寧に対応された気がする。門をくぐると雨が降っているけど潮の香りがする。
「これが、海の匂い?ふふ、楽しみ」
「ユリは初めての海でしたね。楽しめるのか分かりませんが、良い眺めですよ」
「早く、プルトスという男のところに行って宿を確保しましょう!」
はしゃぐユリさんを横目で見つつ、首都サツキの街を歩く。しっかり石畳が敷かれていて歩きやすい。プルトスさんは何処にいるのかな。
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