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サツキ公国編
第75話 どーも、鍛錬です
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前書き
前回のあらすじ
主人公 鍋料理を作る
本文
どーも、鍋を囲んで食べたオッサンです。
食事が終わり、ユリさんと女王様は一緒にストレッチや筋トレをしている。随分仲が良いな。ユリさんにしては珍しく気を遣っているんだけど。何かあったのか?まあ、良いや。俺は俺のなすべき事をするだけ。
「筋トレで身体作りをするなんて俺も変わったな...前の世界では、20代からしなくなったのに。この世界に来てから随分脂肪が落ちた気がする」
ただ筋肉をつければ良いという事ではない。適度な筋肉量でいいと思う。稼働域がズレると剣を振るう際の感覚が変わる。筋肉ムキムキになる必要はない。あとは、皮膚を硬くする。簡単に言うと、血が出ようが構わず何度も木を殴る、蹴るを繰り返す。その後に治癒ヒールを行い、傷を塞ぎ皮膚を治す。そうすると皮膚の強度が増す。この謎の現象を利用しない手はない。
「どこの原始人だよ。ミットがあれば良いのに。はぁー、ないものは仕方ない。それにしても、木に血が染み込んで変色していて気持ち悪いな。でも、この木だけは丈夫なんだよなー。他の木だと折れちゃうし...何でなんだろう」
帝王が作った馬車の近くにあった木材。おそらく、馬車にも使われていると思われる。スマホで鑑定しても分からない、謎の木。耐久性があり、魔力を纏わせた拳でも折れない優れもの。
「いけない、思考が止まってしまっている。切り替えて、素振りでもするかな」
武器を地面に刺し、いつでも取り替えられるようにしておく。状況に合った武器を扱えるように素振りをする。
「ハァァァアッ!ハッ!」
だいぶハルバートの扱いになれてきた感じ。でもまだ足りない。もっと早く、インパクトの瞬間に最大の力が発揮できるようにならないと。満足はいかないが次の武器を掴み素振りを行う。
※ユリ視点
「ユリ、何故ケンさんは多様な武器を使用しているのですか?」
「ケンさん曰く、如何なる状況下でも対応出来るようにしておかなくては死ぬらしいわ」
「それなら私もそうするべきだと思うのだけど...」
「ネイレス。貴女は剣を握ってどのくらい経つ?」
「そうですねぇ、16年くらいだと思う...」
「ケンさんは、剣を持って戦闘するのにまだ一月も経っていないわ。この意味分かる?」
「それは...才能ですか?」
「確かに才能があるかもしれない。だけれども、その言葉だけではあの異様な素振りを表現することは出来ない。常に考えて、最適解を出しながら振るっているのよ。その最適解が更新されて、また一つ上の段階に上がる。ケンさんの本当に凄いところは、思考能力。そしてそれを実行し成し遂げられること。どの武器を使っても一定の力を発揮することが出来るけど、それだけじゃ戦場では敗北し死んでしまう。肉体と思考がリンクして磨き続ける精神。まさに狂人よね」
「必要以上に素振りを行うなんて、とても普通の人では出来ないですね。ユリは毎日、彼の姿を見ているのでしょう?とても刺激的ですね」
「馬車の中でも伝えたけど、ケンさんは渡さないわ」
「ふふ。分かっていますよ」
ネイレスも私と同じ。ケンさんに一目惚れしてしまった。譲る気はさらさらない。でも...好きな人が褒められると私まで気分が良くなる。
※ネイレス視点
私は、ケンさんが武器を振るう姿を見て、ユリを羨ましく感じる。圧倒的な力に洞察力、思考速度、そして精神。どれも一級品。これほどの才能やセンスがありながらも自分に納得いっておらず努力をし続ける。彼は、限界を知らないのだろうか?
「ユリ、貴女がケンさんを手放すなら私が貰います。一目見た時に感じました。彼は、私に相応しい男。もちろん性格も私好み。王の器を持っています」
「手放すわけがないでしょ。ネイレス。百万歩譲って、私が死んだら貴女にケンさんをお願いするわ」
「ふふ。私は貴女に死んで欲しくはありません。困りました...男でこんなに悩むなんて思いませんでしたよ。これでは、海龍様と同じですね」
「きっと、似た者同士なのよ。永遠の片想い。貴女は氷の女王なのだから、簡単に溶かされないでよ」
「ケンさんの前では1人の女です」
ケンさんと話すと、いつも家臣に対しての冷たい言葉が出ない。本能が、ケンさんのことを格上だと告げている。なんて、罪作りの人なのでしょうか。
私も、ケンさんから頂いた剣を握り素振りを行う。ケンさんのような苛烈な扱いは出来ない。ユリみたく綺麗に振るうことができない。私に出来ることは、正確に基本に忠実に剣を振るう。
「ヤッ!ハッ!」
「ネイレス女王陛下。素振りしているところを見ても良いか?」
ケンさんから声をかけられて、少し心が動揺する。しっかりしなさい、私。返事は...
「構いません。私の剣から何も得ることは出来ないと思いますけど」
「そんなことはない。とても良い剣の振りをしている。詳しい剣術は、俺には分からない。だけど、積み重ね出来たであろう剣の振りは見てわかる。だから、無駄がなく良いと思う」
「そうですか。つまらない剣ですが、何か得られると良いですね」
「つまらなく無いと思うけど...まあいいや、とりあえず見て学ばせてもらうよ」
私は、ケンさんに観察されながら剣を振るう。少し緊張しますが、これも経験。
「やっぱり無駄がないね。日頃、鍛錬しているのがよく分かる。参考になるよ」
そんなに真剣な目で見つめないで。頬が緩んでしまいます。出来れば早く離れて欲しい。
後書き
次回 神に愛されし者
前回のあらすじ
主人公 鍋料理を作る
本文
どーも、鍋を囲んで食べたオッサンです。
食事が終わり、ユリさんと女王様は一緒にストレッチや筋トレをしている。随分仲が良いな。ユリさんにしては珍しく気を遣っているんだけど。何かあったのか?まあ、良いや。俺は俺のなすべき事をするだけ。
「筋トレで身体作りをするなんて俺も変わったな...前の世界では、20代からしなくなったのに。この世界に来てから随分脂肪が落ちた気がする」
ただ筋肉をつければ良いという事ではない。適度な筋肉量でいいと思う。稼働域がズレると剣を振るう際の感覚が変わる。筋肉ムキムキになる必要はない。あとは、皮膚を硬くする。簡単に言うと、血が出ようが構わず何度も木を殴る、蹴るを繰り返す。その後に治癒ヒールを行い、傷を塞ぎ皮膚を治す。そうすると皮膚の強度が増す。この謎の現象を利用しない手はない。
「どこの原始人だよ。ミットがあれば良いのに。はぁー、ないものは仕方ない。それにしても、木に血が染み込んで変色していて気持ち悪いな。でも、この木だけは丈夫なんだよなー。他の木だと折れちゃうし...何でなんだろう」
帝王が作った馬車の近くにあった木材。おそらく、馬車にも使われていると思われる。スマホで鑑定しても分からない、謎の木。耐久性があり、魔力を纏わせた拳でも折れない優れもの。
「いけない、思考が止まってしまっている。切り替えて、素振りでもするかな」
武器を地面に刺し、いつでも取り替えられるようにしておく。状況に合った武器を扱えるように素振りをする。
「ハァァァアッ!ハッ!」
だいぶハルバートの扱いになれてきた感じ。でもまだ足りない。もっと早く、インパクトの瞬間に最大の力が発揮できるようにならないと。満足はいかないが次の武器を掴み素振りを行う。
※ユリ視点
「ユリ、何故ケンさんは多様な武器を使用しているのですか?」
「ケンさん曰く、如何なる状況下でも対応出来るようにしておかなくては死ぬらしいわ」
「それなら私もそうするべきだと思うのだけど...」
「ネイレス。貴女は剣を握ってどのくらい経つ?」
「そうですねぇ、16年くらいだと思う...」
「ケンさんは、剣を持って戦闘するのにまだ一月も経っていないわ。この意味分かる?」
「それは...才能ですか?」
「確かに才能があるかもしれない。だけれども、その言葉だけではあの異様な素振りを表現することは出来ない。常に考えて、最適解を出しながら振るっているのよ。その最適解が更新されて、また一つ上の段階に上がる。ケンさんの本当に凄いところは、思考能力。そしてそれを実行し成し遂げられること。どの武器を使っても一定の力を発揮することが出来るけど、それだけじゃ戦場では敗北し死んでしまう。肉体と思考がリンクして磨き続ける精神。まさに狂人よね」
「必要以上に素振りを行うなんて、とても普通の人では出来ないですね。ユリは毎日、彼の姿を見ているのでしょう?とても刺激的ですね」
「馬車の中でも伝えたけど、ケンさんは渡さないわ」
「ふふ。分かっていますよ」
ネイレスも私と同じ。ケンさんに一目惚れしてしまった。譲る気はさらさらない。でも...好きな人が褒められると私まで気分が良くなる。
※ネイレス視点
私は、ケンさんが武器を振るう姿を見て、ユリを羨ましく感じる。圧倒的な力に洞察力、思考速度、そして精神。どれも一級品。これほどの才能やセンスがありながらも自分に納得いっておらず努力をし続ける。彼は、限界を知らないのだろうか?
「ユリ、貴女がケンさんを手放すなら私が貰います。一目見た時に感じました。彼は、私に相応しい男。もちろん性格も私好み。王の器を持っています」
「手放すわけがないでしょ。ネイレス。百万歩譲って、私が死んだら貴女にケンさんをお願いするわ」
「ふふ。私は貴女に死んで欲しくはありません。困りました...男でこんなに悩むなんて思いませんでしたよ。これでは、海龍様と同じですね」
「きっと、似た者同士なのよ。永遠の片想い。貴女は氷の女王なのだから、簡単に溶かされないでよ」
「ケンさんの前では1人の女です」
ケンさんと話すと、いつも家臣に対しての冷たい言葉が出ない。本能が、ケンさんのことを格上だと告げている。なんて、罪作りの人なのでしょうか。
私も、ケンさんから頂いた剣を握り素振りを行う。ケンさんのような苛烈な扱いは出来ない。ユリみたく綺麗に振るうことができない。私に出来ることは、正確に基本に忠実に剣を振るう。
「ヤッ!ハッ!」
「ネイレス女王陛下。素振りしているところを見ても良いか?」
ケンさんから声をかけられて、少し心が動揺する。しっかりしなさい、私。返事は...
「構いません。私の剣から何も得ることは出来ないと思いますけど」
「そんなことはない。とても良い剣の振りをしている。詳しい剣術は、俺には分からない。だけど、積み重ね出来たであろう剣の振りは見てわかる。だから、無駄がなく良いと思う」
「そうですか。つまらない剣ですが、何か得られると良いですね」
「つまらなく無いと思うけど...まあいいや、とりあえず見て学ばせてもらうよ」
私は、ケンさんに観察されながら剣を振るう。少し緊張しますが、これも経験。
「やっぱり無駄がないね。日頃、鍛錬しているのがよく分かる。参考になるよ」
そんなに真剣な目で見つめないで。頬が緩んでしまいます。出来れば早く離れて欲しい。
後書き
次回 神に愛されし者
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