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6章 氾濫
42.氾濫Ⅱ
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先日より予想していた通り、俺たちはギルドに召集された。ギルドに着いたときに、ギルマスは他方との打ち合わせ等で忙しいとのことで応接間に案内された。
しばらく待てとのことだったためソファーに腰掛けた。
「今日の招集は恐らく……氾濫のことだろうね」
誰にでも予想ができる状況だろうが、俺は周囲の認識を確認するように問いかけた。
「そう……じゃないかな」
真面目な表情を見せるエミリーはそう言いながらこちらに目を向ける。
ギルド内でろくな話をされてないという過去の流れと言うもので若干の不安を覚える。もちろん、覚悟ができていないわけでは無いのだ。
先日のやり取りで氾濫を止めるために協力する覚悟は決めていた。だが、先程も述べた通り、不安は多少あった。何があるかわからないというのもある。ただ、ギルドマスターを待ち続ける俺達に、先日と同じように静寂が訪れる。
そう長い時間も立たないうちに部屋の外側から足音と話し声が聞こえてきた。おそらくギルドマスターだ。
その足音と話し声は扉の前で止まると、一息をおいた。
ドアノブがカチャリと音を立てながら回転する。
その瞬間、扉は大きく押し開けられ、その奥から質素な服装をした大男が見えた。その奥にも見覚えのある顔があった。
「またせたな、君たち」
真面目な表情を崩さずに申し訳なさそうに一礼すると俺達が座る来賓席の前にどんと腰掛ける。その奥から豪華な装飾を身に着けた壮年の男が歩いてくる。
もちろん過去に話したことがある人物だ。以前拝見したときと同じ服装をしている。その豪華な装飾は本人の身分を周囲に知らしめるようだった。
そう、国王だ。
リオン皇国の頂点に君臨するお方。
リチャード=リオン・ダ・リオンが目の前のソファー、ギルマスの右側に腰掛ける。こちらが起立しようとすると手を差し出し、そのままで大丈夫だと合図をくれる。
そこそこきれいに装飾された部屋も彼の存在が大きすぎてちゃちなものに見える。
謎の緊張感を感じながら少しだろうか、時間が過ぎた頃、ギルドマスターが口を開く。
「君たちもなんとなく気づいてるだろうが近頃、イーストフォレストにて魔物が増加していて我々ギルドにも多大な被害が出ている」
そう、先日でもすでに多かったのだが更に増加しているとのことだ。更に魔物の強力化が進んでいて初心者冒険者の怪我が非常に増えているらしい。
また、先日イーストフォレストに派遣された捜索隊の副隊長が殉職している。冒険者で言うBランク相当の実力らしいが、そういった人物が倒されるというのは相当やばいということだ。
「そのモンスターは強力で我々でも始末をするのに相当な時間がかかるだろう。だから、君たちに力を借りたい」
そう言うと一息置いた後にギルドマスターは国王に目を向ける。
王は相槌を打つとこちらへ向き、話し始める。
「彼が言うとおり、我らの国にも甚大な被害が出ている。よってギルドを介して君たちに出動要請をした。此度の件に補足をするとすれば、増加している魔物共は森の外に出て来ないということ、増加が過去にない速度で進むということ、そして、魔物の力がどんどん強力になっているということ」
ここまで話すと王は深く呼吸をすると顔の前で指を組み、膝に肘を置く。
するとまた口を開く。
「これは前例がある。50年前、この都市に甚大な被害を出したイーストフォレストの氾濫。過去に何回も訪れるたびに規模がどんどん大きくなる。前回の氾濫は魔物2万が森から溢れかえった。今回はそれ以上であることが予想される。だから、君たちはそれに備えてほしいということだ」
一通り話し終えると組んだ指を解き膝に手を置き礼をする。
「このとおりだ、君たちの力で我々を助けてくれ」
その一言と同時にギルドマスターも頭を下げる。
「たのむ!」
この状況に慌てながら俺たちは承諾する。
「分かりました、お力になれるかどうかはわかりませんが協力させていただきます」
「たすかる」
そう言いながらゆっくりと顔をあげると少し安心したような表情をする。
これから大変だろうな。
しばらく待てとのことだったためソファーに腰掛けた。
「今日の招集は恐らく……氾濫のことだろうね」
誰にでも予想ができる状況だろうが、俺は周囲の認識を確認するように問いかけた。
「そう……じゃないかな」
真面目な表情を見せるエミリーはそう言いながらこちらに目を向ける。
ギルド内でろくな話をされてないという過去の流れと言うもので若干の不安を覚える。もちろん、覚悟ができていないわけでは無いのだ。
先日のやり取りで氾濫を止めるために協力する覚悟は決めていた。だが、先程も述べた通り、不安は多少あった。何があるかわからないというのもある。ただ、ギルドマスターを待ち続ける俺達に、先日と同じように静寂が訪れる。
そう長い時間も立たないうちに部屋の外側から足音と話し声が聞こえてきた。おそらくギルドマスターだ。
その足音と話し声は扉の前で止まると、一息をおいた。
ドアノブがカチャリと音を立てながら回転する。
その瞬間、扉は大きく押し開けられ、その奥から質素な服装をした大男が見えた。その奥にも見覚えのある顔があった。
「またせたな、君たち」
真面目な表情を崩さずに申し訳なさそうに一礼すると俺達が座る来賓席の前にどんと腰掛ける。その奥から豪華な装飾を身に着けた壮年の男が歩いてくる。
もちろん過去に話したことがある人物だ。以前拝見したときと同じ服装をしている。その豪華な装飾は本人の身分を周囲に知らしめるようだった。
そう、国王だ。
リオン皇国の頂点に君臨するお方。
リチャード=リオン・ダ・リオンが目の前のソファー、ギルマスの右側に腰掛ける。こちらが起立しようとすると手を差し出し、そのままで大丈夫だと合図をくれる。
そこそこきれいに装飾された部屋も彼の存在が大きすぎてちゃちなものに見える。
謎の緊張感を感じながら少しだろうか、時間が過ぎた頃、ギルドマスターが口を開く。
「君たちもなんとなく気づいてるだろうが近頃、イーストフォレストにて魔物が増加していて我々ギルドにも多大な被害が出ている」
そう、先日でもすでに多かったのだが更に増加しているとのことだ。更に魔物の強力化が進んでいて初心者冒険者の怪我が非常に増えているらしい。
また、先日イーストフォレストに派遣された捜索隊の副隊長が殉職している。冒険者で言うBランク相当の実力らしいが、そういった人物が倒されるというのは相当やばいということだ。
「そのモンスターは強力で我々でも始末をするのに相当な時間がかかるだろう。だから、君たちに力を借りたい」
そう言うと一息置いた後にギルドマスターは国王に目を向ける。
王は相槌を打つとこちらへ向き、話し始める。
「彼が言うとおり、我らの国にも甚大な被害が出ている。よってギルドを介して君たちに出動要請をした。此度の件に補足をするとすれば、増加している魔物共は森の外に出て来ないということ、増加が過去にない速度で進むということ、そして、魔物の力がどんどん強力になっているということ」
ここまで話すと王は深く呼吸をすると顔の前で指を組み、膝に肘を置く。
するとまた口を開く。
「これは前例がある。50年前、この都市に甚大な被害を出したイーストフォレストの氾濫。過去に何回も訪れるたびに規模がどんどん大きくなる。前回の氾濫は魔物2万が森から溢れかえった。今回はそれ以上であることが予想される。だから、君たちはそれに備えてほしいということだ」
一通り話し終えると組んだ指を解き膝に手を置き礼をする。
「このとおりだ、君たちの力で我々を助けてくれ」
その一言と同時にギルドマスターも頭を下げる。
「たのむ!」
この状況に慌てながら俺たちは承諾する。
「分かりました、お力になれるかどうかはわかりませんが協力させていただきます」
「たすかる」
そう言いながらゆっくりと顔をあげると少し安心したような表情をする。
これから大変だろうな。
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