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クレア、ドラゴンを創る②

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帰るとすぐにトートおじさんが出迎えてくれた。
ちゃんとフォーラは銅像を引きずることなく、ウールさんに背に銅像をくくりつけられてもびくともせず、頂上まで走っていた。いつも元気有り余ってるんです、とウールさんは言っていたが、それにしても有り余りすぎじゃないだろうか。ウールさんの設計ミスかな?

道中に聞いてみれば、やはりそうだった。「魔法の呪文を間違えた」とウールさんは言っていたが、真実は分からない……。あの人、なんでもにっこにこの笑顔で隠してそうだし。

「大丈夫だったか?」

トートおじさんは目を見開いて、私とフォーラを交互に見て一安心したのか、ため息をついた。

「もう夜だ。創るのは明日にして、今日はもう寝なさい」

凄く親みたいなこと言うじゃん。
でも私は従わないからね!

「いえ、今日中に創りたいので、工房借ります!」

「えっ、ちょっと!」

後ろからおじさんの声するけど、まぁいいや。
早く創りたいんだもん。この不便な道、大変じゃん。

「それにしても創作意欲に溢れていますね、クレアお嬢さんは」

「うわっ!?」

足音がして振り返れば、ウールさんが立っていた。
この人、怖っ。

「クレアお嬢さんを見守っておくようにと、父から言われましたので。急いで追いかけてきました」

そんなウールさんを横目に私は銅像を持ってくる。そう、さっきのような馬鹿力で。普通なら本がいっぱい入った本棚みたいに重く感じるはずなんだけどな……。やっぱりこの世界が特殊なんだろうな、うん。

工房の中に持ってきて、そっと床に置けば、私は壁にかけてあった大きいペンチのようなものを持ってくる。ウールさんは口出ししないで完全に見守ることにしたようだ。


私の肘から手までぐらいの刃渡りがあるペンチを手に取り、腐敗している部分を伸ばして切り取っていく。そして像の飾りがついている腕をペンチで挟み、思いっきり引っ張った。ぐにょんと伸びるそれをティッシュ箱ぐらいの厚みまで薄く伸ばす。ドラゴンの翼ってどうなってたっけ……?とりあえず端っこからペンチで引っ張って、先が尖るように形を整える。今、私の頭の中にあるドラゴンの翼の完成図は、コウモリの翼のようなものだ。

節を創って、膜のような部分は少し薄めに伸ばす。左腕も同じように成形した。お腹のところはそのままに、像の腰辺りから尻尾は丸く細くなるように伸ばしていく。成形は大体でいいってウールさん言ってたし、これくらいでいいか。

像の足から、ドラゴンの脚を創る。折らないようにゆっくり曲げていく。5本の指を、3本になるように合体させていく。

もはやドラゴンを1から創るっていうより、彫って彫刻を創ってる感覚だな。まぁ私は図工も美術も好きだったから、苦にはならないけど。

腕も創り終わって、次は口。

「失礼しまーす……」

像の頭部を真っ二つにして、ペンチで伸ばして恐竜の頭みたいなものにしていく。まさに彫るようにしてギザギザの歯を創っていき、舌は少し長く創った。

目も彫るように創って、ちょっと怖そうなヘビみたいな目にした。ちょっと尖らせた耳を創って、最後に角を創った。

理想のドラゴン。それは自分の想いのまま。誰の意見にも囚われず、自分の創造力だけで創り上げたドラゴンが仮の姿だけでもできて、私は興奮していた。

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