自称レベル3のゴミ拾い娘は機械人形専門店の看板娘です!

ぎゃけもの

文字の大きさ
上 下
5 / 11

トートおじさんの工房

しおりを挟む
「わぁ……!」

そこは天井の高い、体育館のような場所だった。飛行機も入ってしまうんじゃないか、それくらい大きい部屋だった。

「トートおじさん、この猫ちゃん触っていい?」

「いいよ、許可なんていらない。ここは俺の遊び場のような所だからな、好きにしてもらって構わないよ」

やった、触り放題だ!

目の前にいる銅色の猫ちゃんを触ってみた。体はつるつるしているが、顔はざらざらしていて、のりにくっつけた砂みたいだ。

「みぃー」

と、猫が、か細く鳴いた。その鳴き声は蚊が飛ぶ音くらい小さくて。


え、鳴くの、機械人形の猫って!


私が驚いた顔をすれば、トートおじさんは苦笑いして言った。

「それは俺が最初の頃に創った機械人形の猫でね。俺は死んだばかりの生物の心臓を使えば、声を出す機械人形を創ることができる。だがその頃は始めたばかりで下手くそでね。音が小さくなってしまったんだ」

するとトートおじさんは俯いて言った。

「本当はドラゴンの機械人形もいたんだが……娘と一緒に燃え尽きてしまってね。……ああ、その猫は川から持ってきた砂とダナを使ったんだ」

「ダナ?」

「この地方で銅で出来た鍋を意味するんだ。川に行ったら捨てられていてね」

この世界にも不法投棄ってあるんだな……。

「そういえば機械人形の作り方が気になっていたね。こっちだ、来てごらん」

と、倉庫のような部屋の隅っこに案内された。
そこには作業している人がいて。

「誰、ですか?」

「言ってなかったね、俺の息子だ。正確には妻が拾ってきた子だ」

紹介された人は仮面のようなものを取って、私に深く一礼して微笑んだ。

琥珀色の袴に大きめのシャツをだぼっと着ていた。白い半袖のシャツは所々、違う色で染まっている。群青色の瞳に紺色の肩までの髪を結んでいて、縁が丸い眼鏡を掛けている。ちょっと女の子みたい。

「ウールと申します。これからよろしくお願いします」

これからって何?
え、どういうこと?

「行くあてもないだろう、俺の家に住みなさい」

「ええっ、いいんですか!?」

「良いも何も、捨てるぐらい悪い者ではございませんから」

今度は執事のように恭しく礼をしたウールさんは、作業机に戻っていった。

「話が逸れたね、すまない。ここでは俺とウールで作業をしているんだ。ゴミは自分達で拾ってくるが、あとは魔法で済ませてしまうから簡易な所だが」

魔法か……ドラゴンがいたら、魔法もあるよね。

「魔法って、どんな感じなんですか?」

「魔法なら、あいつが今やろうとしているから見てごらん。機械人形を創るための魔法は俺たち特有の能力なんだ。俺は心臓を使って声を出す機械人形を創ることができる能力、ウールは機械人形を染めることができる能力、といった風にな」

トートおじさんの目線の先を辿ってみれば、そこには完成した犬の機械人形に向き合っているウールさんがいた。


「紺青に染まれ、ミレーライト!」


大声で機械人形に向かって叫べば、勝手に脚がくっついて犬が出来上がり、そして叫んだ通り紺青色になった。

目の前で見たら想像していたよりも迫力があって、つい拍手をしてしまった。

「凄いですね!」

私も創ってみたいなぁ、なんて。うっとりとした目でその作業に見とれていれば、トートおじさんが話しかけてきた。

「今あいつが創ったのは依頼の品だ。だがあれで依頼の品はひとまず全部できた。ウールも作業が終わったし、俺も見守っといてやるから何か創ってみるか?」

「いいんですか!」

じゃあ……と、言葉に詰まった。
いや、一気に言ってしまおう。



「私、ドラゴンを創りたいです!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合 戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる 事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊 中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。 終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人 小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である 劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。 しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。 上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。 ゆえに彼らは最前線に配備された しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。 しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。 瀬能が死を迎えるとき とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

処理中です...