竜頭

幕末の信州上田藩。
藤井松平家の下級藩士・芦田家に、柔太郎と清次郎の兄弟が居た。

兄・柔太郎は儒学を学ぶため昌平黌《しょうへいこう》へ、弟・清次郎は数学を学ぶため瑪得瑪弟加塾《まてまてかじゅく》へ、それぞれ江戸遊学をした。

嘉永6年(1853年)、兄弟は十日の休暇をとって、浦賀まで「黒船の大きさを測定する」ための旅に向かう。

品川宿で待ち合わせをした兄弟であったが、弟・清次郎は約束の時間までにはやってこなかった。


時は経ち――。
兄・柔太郎は学問を終えて帰郷し、藩校で教鞭を執るようになった。
遅れて一時帰郷した清次郎だったが、藩命による出仕を拒み、遊学の延長を望んでいた。

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神童、数学者、翻訳家、兵学者、政治思想家、そして『人斬り半次郎』の犠牲者、赤松小三郎。

彼の懐にはある物が残されていた。


幕末期の兵学者・赤松小三郎先生と、その実兄で儒者の芦田柔太郎のお話。

※この作品は史実を元にしたフィクションです。
※時系列・人物の性格などは、史実と違う部分があります。

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