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2013-11-28 。こんな夢を見た。

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 母方の遠い親戚の葬式だという。
 両親はいつも私の都合など関係なく呼び出すから困る。
 突然のことで、喪服の準備もできない。
 嫁いで実家を出ている私が、グレーのハイネックのセーターのまま父の運転するバンに押し込められただけならばまだしも、同居の弟まで平服のまま困惑しているのは、さすがに問題だと思う。
 日頃父と折り合いの悪い弟は、濃紺のズボンに白いシャツ一枚のまま、ふてくされて、一言も口を利かない。
 葬式だから陽気に振る舞う必要がないのは、好都合だった。
 我が家はそろって仏頂面を並べて、式場の後ろの方に座り込んだ。

 焼香をすませ帰ろうとすると、どういった訳かお斎によばれた。
 不祝儀だって包んでいないも同然だというのに。
 いや、そもそも私は誰の葬式であるのかも知らないのに。

 是非に是非にと連れて行かれたのは、山奥の墓地の脇にある小屋のようなところだった。
 暖房器具らしきものはない。
 コンクリートの床と薄板の壁から、冷気がじわじわと室内にしみこんでくる。
 会議室にあるような古い長テーブルの上には、冷え固まった握り飯と、白いキャップのペットボトルのお茶が並べられていた。
 周囲に見知った顔は一つとしてない。
 私と弟は無言でパイプ椅子に座っている。
 そこへ、私は顔も名前も存じ上げないのだけれど、私の従姉妹だというご婦人が寄って来た。

「あなたのお母さんから、いつもあなたの自慢話を聞いているのよ」

 にこにこ笑っている。
 それにしても、親などというモノは、なんでいつでもよけいなことをするのだろう。
 あなたの娘のどこに自慢があるというのか。
 間違いを広められては困る。
 文句を言ってやろうと母の姿を探すが、無い。
 弟が不機嫌そうに出口を指した。

「便所だって。親父と一緒に車で出ていった」

「トイレならここにだってあるじゃないの」

 壁には青いマークの扉だけが幾つも並んでいる。
 訝しんで、従姉妹女史に尋ねた。

「女子トイレは、どこでしょう?」

「確か、町の入り口まで下っていかないと無いのよ。不便ねぇ」

 かわいらしい桜色の笑顔を見て、弟の顔色は青くなった。

「親父らが戻ってこないと、オレらも帰れない」

 彼の身震いとため息を聞いた途端、私は膀胱のあたりに重さを感じた。

……そんな夢を見た。
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