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2013-10-03。こんな夢を見た。
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風呂蓋を開けると、一番風呂のまっさらな湯の水面に一匹の小蟲が浮かんでいた。
長さ三cmほどもある、御器噛の幼虫だ。
手桶ですくい取って捨てた。
湯面に目を移すと、また小蟲が浮いている。
今度は三匹。やはり三cm前後の御器噛と羽虫と雲母虫らしい。
はて、御器噛はともかく、羽虫や雲母虫はこれほど大きかっただろうか。
いや、大きさなどこの際どうでも良い。
ともかく捨てねばならない。
蟲の浮いた湯に入るなどまっぴらだ。
ぴくりとも動かない蟲たちを周囲の湯ごと手桶ですくって捨てた。
湯面に目を移すと、また小蟲が浮いている。
ゆらゆら揺れる透明な湯の表面全体を隙間なくびっしりと、動かない蟲たちが埋めている。
御器噛、羽虫、雲母虫、竈馬、大蚊、麦蛾、透翅、暝蛾、白火取、虫引虻、草鞋虫、団子虫、馬陸、百足……。
すくっては捨て、すくっては捨て、すくっては捨てた。
すっかり蟲たちをよけつくしたあと、湯は半分以下に減っていた。
浸かると温度も冷め切っている。
息を吐き、うなだれた。目に入った湯船の底に、何か白い物が沈んでいた。
手桶ですくい上げれば、それは手のひらほどの大きさの半透明の凝膠の固まりだった。
中に、一頭の一角馬がいた。
凝膠を割いて取り出したが、身動き一つしない。
生ぬるい手触りの一角馬を手桶に詰めたまま戸外へ出した。
冷め切ったぬるま湯の水面は腹の下ほどまでの高さだ。
それでも百を二回も数えた頃だろうか。一角馬は身震いとともに立ち上がった。
身にこびりついた凝膠の断片を振り払い、細い足を小刻みにふるわせながら、手桶から飛び出した。飛び題した勢いのまま。あたりを駆け回っている。
私は湯船の中からそれを眺めている。
……そんな夢を見た。
長さ三cmほどもある、御器噛の幼虫だ。
手桶ですくい取って捨てた。
湯面に目を移すと、また小蟲が浮いている。
今度は三匹。やはり三cm前後の御器噛と羽虫と雲母虫らしい。
はて、御器噛はともかく、羽虫や雲母虫はこれほど大きかっただろうか。
いや、大きさなどこの際どうでも良い。
ともかく捨てねばならない。
蟲の浮いた湯に入るなどまっぴらだ。
ぴくりとも動かない蟲たちを周囲の湯ごと手桶ですくって捨てた。
湯面に目を移すと、また小蟲が浮いている。
ゆらゆら揺れる透明な湯の表面全体を隙間なくびっしりと、動かない蟲たちが埋めている。
御器噛、羽虫、雲母虫、竈馬、大蚊、麦蛾、透翅、暝蛾、白火取、虫引虻、草鞋虫、団子虫、馬陸、百足……。
すくっては捨て、すくっては捨て、すくっては捨てた。
すっかり蟲たちをよけつくしたあと、湯は半分以下に減っていた。
浸かると温度も冷め切っている。
息を吐き、うなだれた。目に入った湯船の底に、何か白い物が沈んでいた。
手桶ですくい上げれば、それは手のひらほどの大きさの半透明の凝膠の固まりだった。
中に、一頭の一角馬がいた。
凝膠を割いて取り出したが、身動き一つしない。
生ぬるい手触りの一角馬を手桶に詰めたまま戸外へ出した。
冷め切ったぬるま湯の水面は腹の下ほどまでの高さだ。
それでも百を二回も数えた頃だろうか。一角馬は身震いとともに立ち上がった。
身にこびりついた凝膠の断片を振り払い、細い足を小刻みにふるわせながら、手桶から飛び出した。飛び題した勢いのまま。あたりを駆け回っている。
私は湯船の中からそれを眺めている。
……そんな夢を見た。
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