5 / 34
20xx年x月x日。こんな夢を見た。
しおりを挟む
一つ二つ年上の先輩だった。
長く患っているというのは聞いていたが、そこまで酷いとは知らなかった。
手足は枯れ木のようで、肌も茶色く干涸らびている。
目は落ちくぼみ、鼻は高さを失って、口元には歯が一本もない。
ただ髪だけが依然と同様につややかに黒々と長いのが不思議だった。
「お墓に入るのにも医者の診断書がいるのだって。一目瞭然のことなのに、何をするにも紙切れがいるだなんて、本当に困っちゃうわ」
先輩は皮膚をひび割れさせながら笑った。
「そんなわけだから、私を医者に連れて行って欲しいのよ。だって私には『足』が無いんだもの」
そして先輩は、私のボロ軽貨物自動車のハッチバックドアを開けた。
もとより人の乗り降りするドアではない。踏み台も何もなく、段差も大きい。
先輩の枯れ木の手足には当然その段差を上る力などない。
上ったところで、固まった関節を曲げることだってできないのだ。
それでも無理矢理に体を収めようとするので、私は慌てて手助けをした。
……つもりだったが、寧ろじゃまをしたようなモノだった。
私が後ろから押すと、先輩の足は奇妙にねじれ、乾いた音と埃を立てて折れ落ちた。
「あら、本当に足がなくなっちゃった」
先輩は喉をヒュゥヒュゥと鳴らした。
……そんな夢を見た。
長く患っているというのは聞いていたが、そこまで酷いとは知らなかった。
手足は枯れ木のようで、肌も茶色く干涸らびている。
目は落ちくぼみ、鼻は高さを失って、口元には歯が一本もない。
ただ髪だけが依然と同様につややかに黒々と長いのが不思議だった。
「お墓に入るのにも医者の診断書がいるのだって。一目瞭然のことなのに、何をするにも紙切れがいるだなんて、本当に困っちゃうわ」
先輩は皮膚をひび割れさせながら笑った。
「そんなわけだから、私を医者に連れて行って欲しいのよ。だって私には『足』が無いんだもの」
そして先輩は、私のボロ軽貨物自動車のハッチバックドアを開けた。
もとより人の乗り降りするドアではない。踏み台も何もなく、段差も大きい。
先輩の枯れ木の手足には当然その段差を上る力などない。
上ったところで、固まった関節を曲げることだってできないのだ。
それでも無理矢理に体を収めようとするので、私は慌てて手助けをした。
……つもりだったが、寧ろじゃまをしたようなモノだった。
私が後ろから押すと、先輩の足は奇妙にねじれ、乾いた音と埃を立てて折れ落ちた。
「あら、本当に足がなくなっちゃった」
先輩は喉をヒュゥヒュゥと鳴らした。
……そんな夢を見た。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
夢に繋がる架け橋(短編集)
木立 花音
現代文学
某DMグループ上で提示された三つの題目に沿って、書いた短編を置いておきます。
短時間で適当に仕上げてますので、クオリティは保障しかねますが、胸がほっこりするようなヒューマンドラマ。ちょっと笑えるコミカルなタイトルを並べています。更新は極めて適当です。
※表紙画像は、あさぎかな様に作っていただいた、本作の中の一話「夢に繋がる架け橋」のファンアートです。ありがとうございました!


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる