上 下
14 / 69
謀攻篇 第三

【資料編】謀攻篇 第三 読み下し文

しおりを挟む
孫子曰く、
およそ兵を用るの法は、国を全うするを上となし、国を破るはこれに次ぐ。
軍を全うするを上となし、軍を破るはこれに次ぐ。
旅を全うするを上となし、旅を破るはこれに次ぐ。
卒を全うするを上となし、卒を破るはこれに次ぐ。
伍を全うするを上となし、伍を破るはこれに次ぐ。
この故に、百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり。
戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。

故に上兵は謀を伐つ。其の次は交を伐つ。其の次は兵を伐つ。
其の下は城を攻せむ。
城を攻るの法はやむを得ざるがためなり。
櫓・轒轀を修め、器械を具うること、三月してのちに成る。
距闉また三月にしてのちに已る。将その忿りに勝たえずしてこれに蟻附すれば、士を殺すこと三分の一にして、城の抜けざるは、これ攻の災いなり。
故に善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも、戦うにあらざるなり。
人の城を抜くも、攻るにあらざるなり。
人の国を毀るも、久しきにあらざるなり。必ず全きをもって天下に争う。
故に兵頓れずして利全くすべし。
これ謀攻の法なり。

故に兵を用るの法は、十なれば則ちこれを囲かこみ、五なれば則ちこれを攻め、倍すれば則ちこれを分かち、敵すれば則ちよくこれと戦い、少なければ則ちよくこれを逃がれ、若かざればすなわちよくこれを避さく。
故に小敵の堅は大敵の擒なり。

それ将は国の輔なり。輔周なればすなわち国必ず強し。
輔隙あればすなわち国必ず弱し。
故に君の軍に患うるゆえんのものには三あり。軍の進むべからざるを知らずして、これに進めと謂い、軍の退くべからざるを知らずして、これに退けと謂う。これを軍を縻すと謂う。
三軍の事を知らずして三軍の政を同じくすれば、すなわち軍士惑う。
三軍の権を知らずして三軍の任を同じくすれば、すなわち軍士疑う。三軍すでに惑いかつ疑うときは、すなわち諸侯の難至る。
これを軍を乱して勝を引くと謂う。

故に勝を知るに五あり。
もって戦うべきともって戦うべからざるとを知る者は勝つ。
衆寡の用を識しる者は勝つ。
上下の欲を同じくする者は勝つ。
虞をもって不虞を待つ者は勝つ。
将の能にして君の御せざる者は勝つ。
この五者は勝を知るの道なり。
故に曰く、彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず。
彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。
彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず殆う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

仇討ちの娘

サクラ近衛将監
歴史・時代
 父の仇を追う姉弟と従者、しかしながらその行く手には暗雲が広がる。藩の闇が仇討ちを様々に妨害するが、仇討の成否や如何に?娘をヒロインとして思わぬ人物が手助けをしてくれることになる。  毎週木曜日22時の投稿を目指します。

Battle of Black Gate 〜上野戦争、その激戦〜

四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 慶応四年。上野の山に立てこもる彰義隊に対し、新政府の司令官・大村益次郎は、ついに宣戦布告した。降りしきる雨の中、新政府軍は午前七時より攻撃開始。そして――その最も激しい戦闘が予想される上野の山――寛永寺の正門、黒門口の攻撃を任されたのは、薩摩藩兵であり、率いるは西郷吉之助(西郷隆盛)、中村半次郎(桐野利秋)である。 後世、己の像が立つことになる山王台からの砲撃をかいくぐり、西郷は、そして半次郎は――薩摩はどう攻めるのか。 そして――戦いの中、黒門へ斬り込む半次郎は、幕末の狼の生き残りと対峙する。 【登場人物】 中村半次郎:薩摩藩兵の将校、のちの桐野利秋 西郷吉之助:薩摩藩兵の指揮官、のちの西郷隆盛 篠原国幹:薩摩藩兵の将校、半次郎の副将 川路利良:薩摩藩兵の将校、半次郎の副官、のちの大警視(警視総監) 海江田信義:東海道先鋒総督参謀 大村益次郎:軍務官監判事、江戸府判事 江藤新平:軍監、佐賀藩兵を率いる 原田左之助:壬生浪(新撰組)の十番組隊長、槍の名手

信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~

佐倉伸哉
歴史・時代
 その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。  父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。  稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。  明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。  ◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇

私訳戦国乱世  クベーラの謙信

zurvan496
歴史・時代
 上杉謙信のお話です。  カクヨムの方に、徳川家康編を書いています。

信乃介捕物帳✨💕 平家伝説殺人捕物帳✨✨鳴かぬなら 裁いてくれよう ホトトギス❗ 織田信長の末裔❗ 信乃介が天に代わって悪を討つ✨✨

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
歴史・時代
信長の末裔、信乃介が江戸に蔓延る悪を成敗していく。 信乃介は平家ゆかりの清雅とお蝶を助けたことから平家の隠し財宝を巡る争いに巻き込まれた。 母親の遺品の羽子板と千羽鶴から隠し財宝の在り処を掴んだ清雅は信乃介と平賀源内等とともに平家の郷へ乗り込んだ。

北武の寅 <幕末さいたま志士伝>

海野 次朗
歴史・時代
 タイトルは『北武の寅』(ほくぶのとら)と読みます。  幕末の埼玉人にスポットをあてた作品です。主人公は熊谷北郊出身の吉田寅之助という青年です。他に渋沢栄一(尾高兄弟含む)、根岸友山、清水卯三郎、斎藤健次郎などが登場します。さらにベルギー系フランス人のモンブランやフランスお政、五代才助(友厚)、松木弘安(寺島宗則)、伊藤俊輔(博文)なども登場します。  根岸友山が出る関係から新選組や清河八郎の話もあります。また、渋沢栄一やモンブランが出る関係からパリ万博などパリを舞台とした場面が何回かあります。  前作の『伊藤とサトウ』と違って今作は史実重視というよりも、より「小説」に近い形になっているはずです。ただしキャラクターや時代背景はかなり重複しております。『伊藤とサトウ』でやれなかった事件を深掘りしているつもりですので、その点はご了承ください。 (※この作品は「NOVEL DAYS」「小説家になろう」「カクヨム」にも転載してます)

朱元璋

片山洋一
歴史・時代
明を建国した太祖洪武帝・朱元璋と、その妻・馬皇后の物語。 紅巾の乱から始まる動乱の中、朱元璋と馬皇后・鈴陶の波乱に満ちた物語。全二十話。

処理中です...