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地形篇 第十
地形篇2・上司の命令なんて聞かなくて良いっす。(※ただし、条件があります)
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そうそう。さっき説明した地形効果のことですけども。
あれは飽くまでも戦争の時に重要な「補助」になるものです。地形が好条件だったからって、それだけで簡単に勝てちゃうってもんじゃないですからね。これ、間違えちゃ駄目です。
現場に出てる一番偉い人は、敵情の分析をしっかりやって、作戦を立てて、勝算をはじき出して、トコトン計算し尽くすのがお仕事でしょ? そのお仕事の「補助」になるのが、地形が良いとか悪いとか場所が遠いとか近いとかっていう、情報ってことなんですよ。
このへん全部ひっくるめて理解して戦える人は、勝利者です。オレ、断言しちゃいますよ。確実に勝ちます。
逆に、判ってないのに戦っちゃおうって人は、敗北者確定。間違いなく負けますから。
よーするに、
故に戦道必ず勝たば、主は戦う無かれと曰うとも、必ず戦いて可也。戦道不勝んば、主は必ず戦えと曰うとも、戦う無くして可也。
ってことですよ。
現場に来て、情報を全部検討し尽くして【勝つ!】って計算結果が出んだったら、たとえ遠く離れた本国の王様から、
「それ待った。計画変更。中止。ストップ!」
なんて空気読めてない命令が来ちゃったとしても、そんなの聞かなくて良いんです。こっちの計画通りにヤっちゃっていいんですよ。むしろヤりましょう。そして勝っちゃいましょう。
そりゃつまり、どこからどう見ても【勝てない!】って判断になったら、たとえ状況の判ってない王様から、
「急げ。実行しろ。やれ。ゴー!」
なんて、ガッツンガッツンせっつかれたとしたって、それまるっと無視しちゃってOKです。ってか、負けると判ってるんなら、戦争なんか、絶対やっちゃダメ。
結局、将軍さんにしても王様にしても、戦争をする理由が「自分が有名になるため」ってのはどうなの? って話ですよ。
これ、あえてこういう言い方しますけど、そんな下らない承認欲求のためにボロ負けしちゃったらどうします?
自分達が死ぬのはそら仕方が無いでしょ。
でも、国民が財産を失うんですよ。兵隊が死に絶えちゃうんですよ。国が消滅しちゃうんですよ。
名声なんて形のないモノのために、形のある大切なモノが全部が消えて亡くなっちゃったら、どうするって言うんですか!
そんな最悪な事態になるよりは、こっ酷く負けそうなときは、早く撤退しちゃうべきですよ。後で分からず屋の上の人に怒られちゃうかも知んないと判ってても、です。
そういう判断下せる人も、また名将ってものなんですから。
いいですか? 戦争には、地元の国民や兵隊さんたちの命が掛かってるんですよ。
人の命も財産もキッチリ守って、その上で王様に「勝利」ってな最大の利益をプレゼントしちゃうってのを当たり前に出来ちゃう、そんな将軍こそ、人間国宝ってんですよ。
これ、絶対に失っちゃイケない人材ですからね。
例えばですね。
自分の部下を赤ちゃんのように思って見守ってくれている。……そういう頼り甲斐のある将軍の下なら、兵隊さんは、例え火の中水の中、セオリー通りなら危険地帯である深い谷底の道だって、恐れずに進んで行けるんじゃないですかね。
それとか、部下を我が子と同じくらいに愛している。……そういう優しい将軍なら、兵隊さんたちは、
「この人のためなら命は惜しくない。この人のために死ねる」
ってぐらいに、凄く信頼してくれるんじゃないでしょうかね。
あ、そうだ。一寸気ぃ付けとかないとアレなんことなんすけども。
赤ちゃんみたいに見守り、我が子みたいに愛するってのは、手厚く保護しちゃって働かせないとか、ペロペロ可愛がるだけで命令を与えないとか、そういうことじゃないですからね。
実の子も他所の子も、ただ甘やかしちゃうだけなのは、これ愛情たぁ言いません。
甘やかすだけ甘やかしちゃった兵隊さんたちは、命令も聞かずに好き放題に動き回って、軍令なんか破り放題になっちゃいますからね。
譬るんなら、親にベタベタな過干渉のベロベロの過保護に育てられて、図体だけが大きくなっちゃった我侭な餓鬼ですよ。
そういう子って、だいたい使い物にならないじゃないですか。あ、これ一般論ですけども。
あー、そうそう。判ってるか判ってないかって話ですけどね。
自分チームの兵隊さんたちの実力とかやる気とかが凄く良い調子に仕上がって、
「うちチーム史上、最高!」
な状態になってたとしますか。
でも同時に、敵さんチームの仕上がり具合も、
「我がチーム史上、最高」
な場合だってあるじゃありませんか。
その可能性が判ってないんだったら、これ勝算五分五分でしょ。
逆に、敵さんチームが弱々な状況を見て、
「あ、コレいけちゃうんじゃね?」
って思ってたとしますか。
ところがこのとき、実は自分のチームの兵隊さんが全然準備出来てないってコトが見えてないんなら、やっぱ勝負は五分五分ですよ。
敵さんチームの攻めどころを見つけて、自分チームも調子よく仕上がってた……としても、
「実は戦場の状態が最悪でー」
みたいな地形情報が判ってないンなら、それだってやっぱり五分五分ってことになりますよ。
戦争のオイシイやり方をちゃーんと知ってる将軍さんは、情報はモロモロ総合的に判断しなきゃいけないってことだってハッキリ判ってるもんです。ってか、そうじゃなきゃイケないんです。
デキる将軍さんは、モロモロ総合的に判断してから動き始めちゃうんです。
だから、動きに迷いがない。
いざ戦争が始ままったってときに、いきなり絶体絶命の大ピーンチ、なんてことにはなったりしない。
前にも言いましたっけ?
相手の手の内を知って、自分達の状態が判ってて戦えば、絶対勝てる、って。
更に、季節や時間のタイミングと地形効果とがちゃんと理解できてるなら、何時だって勝てちゃうんですよ。
あれは飽くまでも戦争の時に重要な「補助」になるものです。地形が好条件だったからって、それだけで簡単に勝てちゃうってもんじゃないですからね。これ、間違えちゃ駄目です。
現場に出てる一番偉い人は、敵情の分析をしっかりやって、作戦を立てて、勝算をはじき出して、トコトン計算し尽くすのがお仕事でしょ? そのお仕事の「補助」になるのが、地形が良いとか悪いとか場所が遠いとか近いとかっていう、情報ってことなんですよ。
このへん全部ひっくるめて理解して戦える人は、勝利者です。オレ、断言しちゃいますよ。確実に勝ちます。
逆に、判ってないのに戦っちゃおうって人は、敗北者確定。間違いなく負けますから。
よーするに、
故に戦道必ず勝たば、主は戦う無かれと曰うとも、必ず戦いて可也。戦道不勝んば、主は必ず戦えと曰うとも、戦う無くして可也。
ってことですよ。
現場に来て、情報を全部検討し尽くして【勝つ!】って計算結果が出んだったら、たとえ遠く離れた本国の王様から、
「それ待った。計画変更。中止。ストップ!」
なんて空気読めてない命令が来ちゃったとしても、そんなの聞かなくて良いんです。こっちの計画通りにヤっちゃっていいんですよ。むしろヤりましょう。そして勝っちゃいましょう。
そりゃつまり、どこからどう見ても【勝てない!】って判断になったら、たとえ状況の判ってない王様から、
「急げ。実行しろ。やれ。ゴー!」
なんて、ガッツンガッツンせっつかれたとしたって、それまるっと無視しちゃってOKです。ってか、負けると判ってるんなら、戦争なんか、絶対やっちゃダメ。
結局、将軍さんにしても王様にしても、戦争をする理由が「自分が有名になるため」ってのはどうなの? って話ですよ。
これ、あえてこういう言い方しますけど、そんな下らない承認欲求のためにボロ負けしちゃったらどうします?
自分達が死ぬのはそら仕方が無いでしょ。
でも、国民が財産を失うんですよ。兵隊が死に絶えちゃうんですよ。国が消滅しちゃうんですよ。
名声なんて形のないモノのために、形のある大切なモノが全部が消えて亡くなっちゃったら、どうするって言うんですか!
そんな最悪な事態になるよりは、こっ酷く負けそうなときは、早く撤退しちゃうべきですよ。後で分からず屋の上の人に怒られちゃうかも知んないと判ってても、です。
そういう判断下せる人も、また名将ってものなんですから。
いいですか? 戦争には、地元の国民や兵隊さんたちの命が掛かってるんですよ。
人の命も財産もキッチリ守って、その上で王様に「勝利」ってな最大の利益をプレゼントしちゃうってのを当たり前に出来ちゃう、そんな将軍こそ、人間国宝ってんですよ。
これ、絶対に失っちゃイケない人材ですからね。
例えばですね。
自分の部下を赤ちゃんのように思って見守ってくれている。……そういう頼り甲斐のある将軍の下なら、兵隊さんは、例え火の中水の中、セオリー通りなら危険地帯である深い谷底の道だって、恐れずに進んで行けるんじゃないですかね。
それとか、部下を我が子と同じくらいに愛している。……そういう優しい将軍なら、兵隊さんたちは、
「この人のためなら命は惜しくない。この人のために死ねる」
ってぐらいに、凄く信頼してくれるんじゃないでしょうかね。
あ、そうだ。一寸気ぃ付けとかないとアレなんことなんすけども。
赤ちゃんみたいに見守り、我が子みたいに愛するってのは、手厚く保護しちゃって働かせないとか、ペロペロ可愛がるだけで命令を与えないとか、そういうことじゃないですからね。
実の子も他所の子も、ただ甘やかしちゃうだけなのは、これ愛情たぁ言いません。
甘やかすだけ甘やかしちゃった兵隊さんたちは、命令も聞かずに好き放題に動き回って、軍令なんか破り放題になっちゃいますからね。
譬るんなら、親にベタベタな過干渉のベロベロの過保護に育てられて、図体だけが大きくなっちゃった我侭な餓鬼ですよ。
そういう子って、だいたい使い物にならないじゃないですか。あ、これ一般論ですけども。
あー、そうそう。判ってるか判ってないかって話ですけどね。
自分チームの兵隊さんたちの実力とかやる気とかが凄く良い調子に仕上がって、
「うちチーム史上、最高!」
な状態になってたとしますか。
でも同時に、敵さんチームの仕上がり具合も、
「我がチーム史上、最高」
な場合だってあるじゃありませんか。
その可能性が判ってないんだったら、これ勝算五分五分でしょ。
逆に、敵さんチームが弱々な状況を見て、
「あ、コレいけちゃうんじゃね?」
って思ってたとしますか。
ところがこのとき、実は自分のチームの兵隊さんが全然準備出来てないってコトが見えてないんなら、やっぱ勝負は五分五分ですよ。
敵さんチームの攻めどころを見つけて、自分チームも調子よく仕上がってた……としても、
「実は戦場の状態が最悪でー」
みたいな地形情報が判ってないンなら、それだってやっぱり五分五分ってことになりますよ。
戦争のオイシイやり方をちゃーんと知ってる将軍さんは、情報はモロモロ総合的に判断しなきゃいけないってことだってハッキリ判ってるもんです。ってか、そうじゃなきゃイケないんです。
デキる将軍さんは、モロモロ総合的に判断してから動き始めちゃうんです。
だから、動きに迷いがない。
いざ戦争が始ままったってときに、いきなり絶体絶命の大ピーンチ、なんてことにはなったりしない。
前にも言いましたっけ?
相手の手の内を知って、自分達の状態が判ってて戦えば、絶対勝てる、って。
更に、季節や時間のタイミングと地形効果とがちゃんと理解できてるなら、何時だって勝てちゃうんですよ。
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