上 下
42 / 69
地形篇 第十

地形篇2・上司の命令なんて聞かなくて良いっす。(※ただし、条件があります)

しおりを挟む
 そうそう。さっき説明した地形効果のことですけども。
 あれは飽くまでも戦争の時に重要な「補助ヘルプ」になるものです。地形が好条件だったからって、それだけで簡単イージーに勝てちゃうってもんじゃないですからね。これ、間違えちゃ駄目です。
 現場に出てる一番偉い人は、敵情の分析をしっかりやって、作戦を立てて、勝算をはじき出して、トコトン計算し尽くすのがお仕事でしょ? そのお仕事の「補助ヘルプ」になるのが、地形が良いとか悪いとか場所が遠いとか近いとかっていう、情報ってことなんですよ。
 このへん全部ゼーンブひっくるめて理解して戦える人は、勝利者ウィナーです。オレ、断言しちゃいますよ。確実に勝ちます。
 逆に、判ってないのに戦っちゃおうって人は、敗北者ルーサー確定。間違いなく負けますから。


 よーするに、

 故に戦道必ず勝たば、主は戦う無かれとうとも、必ず戦いて可なり。戦道不勝かたずんば、主は必ず戦えとうとも、戦う無くして可なり

 ってことですよ。


 現場に来て、情報を全部検討し尽くして【勝つWe win!】って計算結果が出んだったら、たとえ遠く離れた本国の王様から、
「それ待った。計画変更。中止。ストップ!」
 なんて空気読めてない命令が来ちゃったとしても、そんなの聞かなくて良いんです。こっちの計画通りにヤっちゃっていいんですよ。むしろヤりましょう。そして勝っちゃいましょう。

 そりゃつまり、どこからどう見ても【勝てないWe loss!】って判断になったら、たとえ状況の判ってない王様から、
「急げ。実行しろ。やれ。ゴー!」
 なんて、ガッツンガッツンせっつかれたとしたって、それまるっと無視しちゃってOKです。ってか、負けると判ってるんなら、戦争なんか、絶対やっちゃダメ。

 結局、将軍リーダーさんにしても王様にしても、戦争をする理由が「自分が有名になるため」ってのはどうなの? って話ですよ。
 これ、あえてこういう言い方しますけど、そんなクッダらない承認欲求のためにボロ負けしちゃったらどうします?
 自分達が死ぬのはそら仕方が無いでしょ。
 でも、国民ファンが財産を失うんですよ。兵隊メンバーが死に絶えちゃうんですよ。ホームが消滅しちゃうんですよ。
 名声なんて形のないモノのために、形のある大切なモノが全部が消えて亡くなっちゃったら、どうするって言うユーんですか!
 そんな最悪な事態になるよりは、こっピドく負けそうなときは、早く撤退しちゃうべきですよ。後で分からず屋のに怒られちゃうかも知んないと判ってても、です。
 そういう判断下せる人も、また名将ってものなんですから。

 いいですか? 戦争センソーには、地元の国民ファン兵隊メンバーさんたちの命が掛かってるんですよ。
 人の命も財産もキッチリ守って、その上で王様に「勝利」ってな最大の利益をプレゼントしちゃうってのを当たり前に出来ちゃう、そんな将軍リーダーこそ、人間国宝ってんですよ。
 これ、絶対に失っちゃイケない人材ですからね。

 例えばですね。
 自分の部下を赤ちゃんプリティベイベーのように思って見守ってくれている。……そういう頼り甲斐のある将軍リーダーの下なら、兵隊メンバーさんは、例え火の中水の中、セオリー通りなら危険地帯デンジャーゾーンである深い谷底のルートだって、恐れずに進んで行けるんじゃないですかね。

 それとか、部下を我が子マイ・チルドレンおんなじくらいに愛している。……そういう優しい将軍リーダーなら、兵隊メンバーさんたちは、
「この人のためなら命は惜しくない。この人のために死ねる」
 ってぐらいに、すんごく信頼してくれるんじゃないでしょうかね。

 あ、そうだ。一寸ちょびっと気ぃ付けとかないとアレなんことなんすけども。
 赤ちゃんプリティベイベーみたいに見守り、我が子マイ・チルドレンみたいに愛するってのは、手厚く保護ハグしちゃって働かせないとか、ペロペロ可愛がるだけで命令を与えないとか、そういうことじゃないですからね。
 実の子も他所ヨソの子も、ただ甘やかしちゃうだけなのは、これ愛情たぁ言いません。
 甘やかすだけ甘やかしちゃった兵隊メンバーさんたちは、命令も聞かずに好き放題に動き回って、軍令ルールなんか破り放題になっちゃいますからね。
 たとえるんなら、親にベタベタな過干渉のベロベロの過保護に育てられて、図体ズータイだけが大きくなっちゃった我侭ワガママ餓鬼ガキンチョですよ。
 そういう子って、だいたい使い物にならないじゃないですか。あ、これ一般論ですけども。

 あー、そうそう。判ってるか判ってないかって話ですけどね。

 自分チームの兵隊メンバーさんたちの実力とかやる気とかが凄く良い調子に仕上がって、
「うちチーム史上、最高!」
 な状態になってたとしますか。
 でも同時に、敵さんチームの仕上がり具合も、
「我がチーム史上、最高」
 な場合だってあるじゃありませんか。
 その可能性がんだったら、これ勝算五分五分フィフティ・フィフティでしょ。

 逆に、敵さんチームが弱々な状況を見て、
「あ、コレいけちゃうんじゃね?」
 って思ってたとしますか。
 ところがこのとき、実は自分のチームの兵隊メンバーさんが全然準備アップ出来てないってコトが見えてないんなら、やっぱ勝負は五分五分フィフティ・フィフティですよ。

 敵さんチームの攻めどころを見つけて、自分チームも調子よく仕上がってた……としても、
「実は戦場ステージの状態が最悪でー」
 みたいな地形情報が判ってないンなら、それだってやっぱり五分五分フィフティ・フィフティってことになりますよ。

 戦争センソーのオイシイやり方をちゃーんと知ってる将軍リーダーさんは、情報はモロモロ総合的に判断ジャッジしなきゃいけないってことだってハッキリ判ってるもんです。ってか、そうじゃなきゃイケないんです。
 デキる将軍リーダーさんは、モロモロ総合的に判断ジャッジしてから動き始めちゃうんです。
 だから、動きに迷いがない。
 いざ戦争センソーが始ままったってときに、いきなり絶体絶命の大ピーンチ、なんてことにはなったりしない。

 前にも言いましたっけ?
 相手の手の内を知って、自分達の状態が判ってて戦えば、絶対勝てる、って。
 さーらーに、季節や時間のタイミングと地形効果とがちゃんと理解できてるなら、何時だってオールタイム勝てちゃうんですよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ソラノカケラ    ⦅Shattered Skies⦆

みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始 台湾側は地の利を生かし善戦するも 人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される 背に腹を変えられなくなった台湾政府は 傭兵を雇うことを決定 世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった これは、その中の1人 台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと 舞時景都と 台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと 佐世野榛名のコンビによる 台湾開放戦を描いた物語である ※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとエッチなショートショートつめあわせ♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

和ませ屋仇討ち始末

志波 連
歴史・時代
山名藩家老家次男の三沢新之助が学問所から戻ると、屋敷が異様な雰囲気に包まれていた。 門の近くにいた新之助をいち早く見つけ出した安藤久秀に手を引かれ、納戸の裏を通り台所から屋内へ入っる。 久秀に手を引かれ庭の見える納戸に入った新之助の目に飛び込んだのは、今まさに切腹しようとしている父長政の姿だった。 父が正座している筵の横には変わり果てた長兄の姿がある。 「目に焼き付けてください」 久秀の声に頷いた新之助だったが、介錯の刀が振り下ろされると同時に気を失ってしまった。 新之助が意識を取り戻したのは、城下から二番目の宿場町にある旅籠だった。 「江戸に向かいます」 同行するのは三沢家剣術指南役だった安藤久秀と、新之助付き侍女咲良のみ。 父と兄の死の真相を探り、その無念を晴らす旅が始まった。 他サイトでも掲載しています 表紙は写真ACより引用しています R15は保険です

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

処理中です...