上 下
23 / 69
虚実篇 第六

虚実篇2・あっちこっち手を広げちゃダメっす。

しおりを挟む
 こっちが戦いたいなーってときに、敵さんチームが動いてくれないってコトも、当然あるでしょ? すンごい高い土塁とか壁とか作っちゃって、すンごい深い堀とか塹壕トレンチとか掘っちゃって、ガチ引き籠もりになっちゃってるよーな時ですよ。
 そういうときに、その引き籠もり部屋を叩くのは、無意味。だってガチガチのカチカチなんだもの。
 そんなしんどいことをするんじゃなくて、別のところをガーと攻めちゃうんです。
 それも「そいつがどうしても動かないといけない気持ちになる」ところを。

 そうだなぁ……。
 絶対助けに行かないといけない人や部隊がいるところーとか。そこを取られちゃったら全軍がイタイ目を見るような兵站ソウコーとか。
 そういう、引き籠もり部屋からちょっと離れた場所、そっちに気を向けさせちゃうんですよ。そうすれば引き籠もってなんかいられないでしょ?
 で、出てきたところをガツン、とね。

 じゃ逆にこっちチームが絶対戦いたくないって時。
 そういうときに慌てて掘ったり盛ったりの大変な土木工事なんかしなくても、
「はい、ここからこっちはオレの陣地」
 って、子供キッズが地面に足で線を書いちゃうみたいなコトをしただけだって、絶対に相手チームは攻め込めないようにも出来ちゃいます。

 どうすれば、って?
 敵さんチームに、
「そこに攻め込む必要がない、その価値はない」
 とか、
「今はそれどころじゃない、他にやることがある」
 って思い込ませちゃっとけばイイんですよ。

 もっと価値のありそうなモノが他にある、ってそっちに気を取らせちゃえば良い。
 例えば、ちょい離れたところで輸送部隊っぽいのが大荷物を運んでる、とか、本国の方で不穏な動きがある、とか。
 いやいや、ホントに輸送部隊が大切な荷物を運ぶ必要はないですし、敵さんの本国が平穏無事だって構わないんですよ。嘘ッコの情報なんかちょろっと流しちゃえば良いじゃないですか。その方がこっちは何の損もせずに済むし。
 取りあえず相手の目先を変えちゃえば、それでいいンですよ。

 それで相手が動いてくれたら、もうこっちのもんでじゃないですか。
 相手の行動をパターンにめちゃって、さらに、自分の動きは相手に判らないようにしておく。
 するってーと、こっちはあちらさんの動きも攻めどころもバッチリ判るでしょ? 兵力をビシッと集中させられる。
 敵さんの方は、型に填まりきっちゃってるんで、ぶっちゃけ前しか見えない状態なワケですよ。攻め手が来ても、どこから何がどれくらい来るかが全然判らない。だからあっちもこっちも守ろらなくちゃイケない気がしちゃう。それで、兵力を分散しちゃうことになるんです。

 そういう、こっちがぎゅっと圧縮した一塊ひとかたまりで、敵さんが分散して十個ぐらいにバラバラになっちゃってる状態になったとしましょうよ。
 敵さんの戦力が十分の一のペラッペラになってるところへ、しっかり結束した味方の一塊ひとかたまりが、ガツーンと攻めてくことになりますさぁね。
 そうすれば、たとえ攻め手の総動員数で見たときにこっちの兵隊メンバーさんがちょびっと少なかったとしても問題ないんです。
 その戦局ポイントでは、こっちの方が大人数で、敵さんチームの方が少人数ってことになりますから。

 ヨーするに、戦線をピンポイントに絞り込めばいいんですよ。あっちもこっちもなんて手を広げちゃダメ。
 そのピンポイントで攻める場所は、敵さんチームに知られないようにする。こっちがどこに的を絞ってるのかが判らなければ、敵さんチームはどこもかしこも守っとかないといけなくりますよね。
 そうやって、あっちにもこっちにもって兵力を振り分けてると、どうしたって一カ所の防御ディフェンス力は小さくなります。守らなきゃいけない場所が多ければ多い程、実際にその場所で戦う兵力は少なくなる。簡単な算数ですよ。

 だって、ほら。
 前面の防御ディフェンスばっかり固めちゃってると、お尻がお留守になるでしょう?
 そこが攻められるかも知れないとなったら、じゃ後ろを守ろう、ってことになる。
 それには、前面を固めていた守備兵から人数を割いて、後ろ回さないと行けなくなるワケで、当然その分、前衛が手薄になっちゃう。

 右翼ライトにばっかり気を取られてると、左翼レフトがおろそかになるでしょ?
 それじゃあってんで、員数を分けて左の方に回して守備固めすしちゃうと、今度は右側の防備が最初よりぐっと薄くなっちゃう。

 それじゃ全部均等に人員配置をしようって?
 そしたら全部均等に薄っぺらになっちゃいますけど、それでいいんですか?

 相手が戦争の主導権イニシアチブを握ってると、こういうペラッペラなことになっちゃうんですよね。
 だから、こっちが主導権イニシアチブを取っちゃえばいい。
 そうすればこっちが堅めれば良いのは「攻めどころ」だけになるわけで、戦力を分厚く一点集中できますよ。

 つまり、ですね。
 戦うべき場所……つまり相手の守備が弱い地点ウイークポイントと、日時……ヨーするに手薄になる瞬間タイミング、このへんを掴んでいるんなら、例え遠くまで遠征することになっても戦うべきでしょ。

 逆に、戦場になる場所の状況も敵さんチームのスケジュールも判らない状態じゃぁ、左手で右手を助けることだってできなくなりますよ。もちろん、右手が左手を救うことなんかできゃしません。
 目の前の味方を助けられないし、すぐ後ろの仲間を救出することなんか絶対無理。
 手の届くところでその為体テイタラクなんだから、百キロメートル先、十キロメートル先の友軍トモダチを助けられますか?

 現状、この「」の国が仮想敵国と目してるのは、お隣の「えつ」とか「」ですよね?
 確かに、どっちの国も兵隊メンバーさんが無茶苦茶多いですよ。
 でも頭数の多い少ないでだけで勝ち負けが決まるんじゃないってことは、今までのオレの話を聞いててくれたんなら、トーゼン、判ってもらえますよね。
 だからこっちのチーム「」、そりゃもうガンガン勝てますよ。
 敵さんチームが大所帯ビッグバンドだったら、今さっき説明したみたいに、バラッバラに分散させちゃえばいいんです。そうすれば、どんな大軍だってまともに戦えなくなっちゃいますよん。

 だからまず、敵さんチームがどんな「損得勘定プロフィット&ロス」で動くかを調べましょう。
 それからちょいと揺さぶりをかけて実際の動きを見定めましょう。
 んで、相手の状況と「攻めてイける場所」「絶対ヤバいところ」をチェックちゃうんです。
 なんならちょっと突っついて実際の過不足を確認しちゃってもいいですよね。
 それから、こっちがどう出るべきかを最終的に決めファイナルアンサーしちゃいましょう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

仇討ちの娘

サクラ近衛将監
歴史・時代
 父の仇を追う姉弟と従者、しかしながらその行く手には暗雲が広がる。藩の闇が仇討ちを様々に妨害するが、仇討の成否や如何に?娘をヒロインとして思わぬ人物が手助けをしてくれることになる。  毎週木曜日22時の投稿を目指します。

信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~

佐倉伸哉
歴史・時代
 その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。  父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。  稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。  明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。  ◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇

私訳戦国乱世  クベーラの謙信

zurvan496
歴史・時代
 上杉謙信のお話です。  カクヨムの方に、徳川家康編を書いています。

信乃介捕物帳✨💕 平家伝説殺人捕物帳✨✨鳴かぬなら 裁いてくれよう ホトトギス❗ 織田信長の末裔❗ 信乃介が天に代わって悪を討つ✨✨

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
歴史・時代
信長の末裔、信乃介が江戸に蔓延る悪を成敗していく。 信乃介は平家ゆかりの清雅とお蝶を助けたことから平家の隠し財宝を巡る争いに巻き込まれた。 母親の遺品の羽子板と千羽鶴から隠し財宝の在り処を掴んだ清雅は信乃介と平賀源内等とともに平家の郷へ乗り込んだ。

北武の寅 <幕末さいたま志士伝>

海野 次朗
歴史・時代
 タイトルは『北武の寅』(ほくぶのとら)と読みます。  幕末の埼玉人にスポットをあてた作品です。主人公は熊谷北郊出身の吉田寅之助という青年です。他に渋沢栄一(尾高兄弟含む)、根岸友山、清水卯三郎、斎藤健次郎などが登場します。さらにベルギー系フランス人のモンブランやフランスお政、五代才助(友厚)、松木弘安(寺島宗則)、伊藤俊輔(博文)なども登場します。  根岸友山が出る関係から新選組や清河八郎の話もあります。また、渋沢栄一やモンブランが出る関係からパリ万博などパリを舞台とした場面が何回かあります。  前作の『伊藤とサトウ』と違って今作は史実重視というよりも、より「小説」に近い形になっているはずです。ただしキャラクターや時代背景はかなり重複しております。『伊藤とサトウ』でやれなかった事件を深掘りしているつもりですので、その点はご了承ください。 (※この作品は「NOVEL DAYS」「小説家になろう」「カクヨム」にも転載してます)

朱元璋

片山洋一
歴史・時代
明を建国した太祖洪武帝・朱元璋と、その妻・馬皇后の物語。 紅巾の乱から始まる動乱の中、朱元璋と馬皇后・鈴陶の波乱に満ちた物語。全二十話。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

処理中です...