フレキ=ゲー編ガップ民話集

神光寺かをり

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二人の王子様と一人のお姫様

勇猛な王子

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 さて、そのロウの国のゲオルグ王子とおっしゃるお方が、果たしてどのような御仁ごじんであったかと申しますと……。
 ありていに言いますれば、フレイ様がおっしゃった通りの、本当に「あまり評判のよろしくないバカ王子」でございます。

 肩幅が広く、がっしりとした長身の、壮健そうけん体躯たいく
 きりりと太い眉に、きゅっと引き締まった口元、すっと鼻筋の通った彫り深い顔立ち。
 というような、まあ中々に凛々りりしくたくましい見た目をお持ちの王子様でした。
 そういったの上に、ヒラヒラとした羽根飾り、キラキラと輝く徽章きしょう、ピカピカに光ったボタンを、金糸銀糸を縫い込んだご衣装に盛り付けて、突如とつじょとして諸国の宮殿やお金持ちブルジョワジーのお屋敷で開かれる遊宴パーティに現れては、貴婦人達をじろじろと品定めして、お気に召す令嬢がいればその手を握って放さず、いなければ誰とも踊りも語りもせず、ただ大いに飲み食いをなさり、腹がくちくなればさっさと帰って行かれるのです。

 ゲオルグ王子は末息子でしたので、お父君のロウの王様に大変に愛されておりました。ですから、ロウの王様は王子が立って歩いてしゃべれるようになるとすぐに、国一番の学者達と国一番の武術家達を教師につけて、立派な王子に育てようとなさいました。
 この英才教育で王子が身につけられたものと申しますと……。

 学術指南しなんの先生が七人ぐらいさじを投げた学力。
 武術ぶじゅつ指南しなんの先生を十人ほど再起不能にさせた腕力。
 美しい乙女と見ればすぐに手を出して、一度に十四人のと付き合う精力。

……と言った具合でありました。

 先に申し上げましたとおり、文よりは武を尊ばれるお好きなゲオルグ王子でございましたから、時が違えば、あるいは並ぶ者の無い勇者・大将軍と呼ばれていたかも知れません。
 ですけれども、残念ながらこの頃のその辺りは大変に平和でありました。小さな国々は表立って反目しあうようなことはなかったのです。つまり、ゲオルグ王子はその腕力を生かす事が出来ないのです。
 だからといって、遊宴パーティの開場で剣や拳を振るってどなたかと「力比べ」をしたなら、たとえ勝ったとしても評判を下げてしまいます。王子も、数回かそういった経験をお積みになった末には、それをお覚りになったご様子でした。
 外で暴れられない王子は、お城の中で刀や槍を振り回し、馬場で馬を走らせる他にすることがありません。

 何分にも、ゲオルグ王子はその上に四人も兄上がいらっしゃいましたので、もしロウの王様に万一のことがあったとしても、地位も領地も財産も何もかも相続するものがない、というお立場でありました。
 それがまた、ロウの王様にとっては哀れでならないご様子で、

「どうしたものか。アレに立つ瀬はないものか」

 と、腕を組んだり首をひねったりして、色々とお考えになったのです。
 そしてお気づきになりました。
 可愛い末っ子を幸せにし、見かけの立派なごくつぶしを国のために有効に使う手だて、を、です。

 それは良縁を組むこと、です。有り体に申しますと、政略結婚です。
 王様の血縁を、友好・同盟の証人ひとじちとして、どこかの国のお城の中に送り込むのです。
 結婚できればもうけけものです。
 相手の国を身方に付けるか、敵に回さぬように脅すか、あるいはわざと相手を怒らせてその国に攻め込む切っ掛けとするか、相手の国を乗っ取るか――。
 そのためには、どうせなら少しでも自分の国に有利に働く相手を選んだ方がいいと考えるのは当然です。

 では、ロウの国にとって有利な花嫁とは、いったいどんな国のお姫様でしょうか?

 ロウの国というのは、つい最近独立したばかりの、豆粒のように小さな国です。
 歴史の浅い国は、古い物にあこがれます。
 キルハの国は、このあたりでも一、二を争うほどに、長い歴史と伝統を持った格式高いお国です。
 ロウの国の王様は、歴史の長いキルハの国と縁を結ぶことによって、自分の国の歴史も長いものに変えようと考えたのでした。
 ロウの王様の息子が、キルハのお姫様と結婚してできたなら、王様の願いは叶います。
 しかしながら、これは中々にかなえることの難しい願いといえました。
 まずもって、ゲオルグ王子は勇壮さだけが取り柄のお方です。そのことは、どうやら近隣諸国に知れ渡っている様子でもあります。
 それから、彼の国の美しいお姫様には、従弟いとこであり恋人である美しい王子様がぴったりと寄り添っていることです。このことは、近隣の国々にも知れておりますし、ロウの国にも聞こえてきます。

「だったら決闘でも喧嘩ケンカでもして、うばって来れば良い」

 ロウの王様はゲオルグ王子にそう言ったのです。……子は親の鏡。この子にしてこの親あり。蛙の親は蛙。トンビはやっぱりトンビを産む。と、言うことでありましょう。
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