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この世で一番最初の娘たちと、その婿たちの話。
結納の品々の「力」
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さて花婿たちが畑で働いている間、花嫁たちはそわそわと心配に身を震わせながら、それでも自分たちの仕事をしていました。
この世で最初の猟師のマッハは、今までは自分の両親と姉妹たちが食べる分だけ鳥や獣や魚を捕ってきていましたが、その日からからは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分まで獲物を捕ってこなければなりませんでした。
ですが、マッハは赤い服のガドレエルが結納の品に持ってきた素晴らしい剣を持って出かけましたので、たくさんの獣とたくさんの鳥とたくさんの魚を捕まえることができました。
それから、いつもマッハの狩りの邪魔をして、そればかりかマッハを襲って食べようとさえする、たくさんの獅子とたくさんの鷲とたくさんの鰐も仕留めることができました。
星鋼の剣はそれほどの獲物と毛物を屠ったというのに、刃こぼれ一つできませんでした。
マッハは大変喜んで、言いました。
「この剣はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしはこの世の生き物を総て自分の獲物にすることができるでしょう」
マッハはたくさんの獣の肉を背負って鳥の肉を抱えて大きな魚籠を引きずって、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の料理人のジョカは、今までは自分の両親と姉妹たちが食べる分だけのパンとスープとおかずを作っていまいしたが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分まで食事を作らなければなりませんでした。
ですが、ジョカは褐色の服のニスロクエルが結納の品に持ってきたお酒を料理に使いましたので、たくさんのパンとたくさんのスープとたくさんのおかずを一度においしく作ることができました。
それから、いつもジョカがたくさん料理をするときは、たくさんの竈の熱とたくさんの釜の炎とたくさんの鍋の重さで疲れ果ててしまったのですが、お酒を一口飲むと、その疲れがあっという間に吹き飛んでしまいました。
風の酒はそれほどの料理を作るのに使ったというのに、まだ壺にいっぱい満たされていました。
ジョカは大変喜んで、言いました。
「このお酒はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしはこの世の料理を総ておいしく食べることができるでしょう」
ジョカはたくさんのパンを背負ってスープ鍋を抱えて菜の天火を引きずって、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の仕立屋のポイベは、今までは自分の両親と姉妹たちが着る分だけの上着と肌着と靴を作っていまいしたが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分まで着る物を仕立てなければなりませんでした。
ですが、ポイベは黄色の服のエクサエルが結納の品に持ってきた紅を布地を染めるのに使いましたので、たくさんの上着とたくさんの肌着とたくさんの靴を一度に美しく仕立てることができました。
それから、いつもポイベがたくさん縫い物をするときは、小さな針穴に糸を通したり鋏で正確に布を裁ったり、いろいろな形に布を縫い止めたりするのが大変だったのですが、真っ赤な紅で糸と布を染めると、細い糸は見やすく、鋏で切る位置は分かり易く、布を縫い進める方向は分かり易くなり、疲れを感じることなく仕事ができました。
晴れの紅はそれほどの着る物を作るのに使ったというのに、少しも目減りしませんでした。
ポイベは大変喜んで、言いました。
「この紅はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしはこの世で一番美しい衣服を作ることができるでしょう」
ポイベはたくさんの上着を背負って肌着を抱えて靴を引きずって、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の牧童のディーヴィは、今までは自分の両親と姉妹たちが飲み食いする分だけの毛玉牛の乳とチーズと、両親と姉妹が使う絨毯に必要な分だけの毛を取れるだけの羊の世話をすれば良かったのですが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分まで乳や毛を用立てる算段をしなければなりませんでした。
ですが、ディーヴィは灰褐色の服のコカバイエルが結納の品に持ってきた星図を暦を見るために使いましたので、どの牧草地にいつ草が生えるかも、親牛が仔牛を生むのかも、乳がいつ頃発酵し、チーズにいつ頃カビが付くかもわかりました。
そればかりか、両親や姉妹や、それから自分の身に、明日明後日明明後日、そのずっと先に起こるだろうことまで、すっかりわかる気がするのでした。
それから、いつもディーヴィがたくさんの牛の世話をするときは、広い牧草地にたった一人で出かけて、たった一人でたくさんの牛を見張らなければならなかったので、とてもとても退屈で、とてもとてもくたびれていたのですが、じっと座って星図に記された太陽と月の星の秘密をひもといておりますと、退屈はちっとも感じられぬうえに、疲れなど少しも感じませんでした。
時の星図はそれほどの長い時間眺めていたというのに、少しも飽きず色あせませんでした。
ディーヴィは大変喜んで、言いました。
「この星図はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしは座ったままでこの世の動きを知ることだってできるでしょう」
ディーヴィはたくさんの牧草を食べた毛玉牛を追い立てて乳の詰まった革袋を負って刈った毛の束を抱えて、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の大工のティアマトは、今までは自分の両親と姉妹たちが棲み暮らすだけの広さの家と、両親と姉妹が使う家具と道具を作れば良かったのですが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分の家と家具と道具を作らなければならなくなりました。
ですが、ティアマトは黄緑の服のムルキブエルが結納の品に持ってきた鉄鎚を釘を打つためと石を削るために使いましたので、どんなに太い柱もどんどん組み立てられ、どんなに大きな石もどんどん砕け、どんなに細かい細工もどんどん掘り進められました。
それから、いつもティアマトが家を建てるときは、力のない石の鎚を使っておりましたので、一つの釘を打つにも十は叩き、一つの石を砕くにも百は叩き、一つの細工を仕上げるにも千は叩かなければならず、とても面倒で、たいそう疲れていたのですが、鉄槌は一振りで釘を打ち、二振りで石を砕き、三振りで細工を仕上げられる力をもっておりましたので、何を作るにもあっという間に仕上がって、ちっとも疲れたりはしませんでした。
今までは硬すぎて釘の通らなかった木に苛立ち、堅すぎて掘り出せなかった岩盤に腹を立て、繊細すぎて描けなかった細工を諦めていたというのに、何でも思うとおりに組み立て、作り、飾ることができたので心が晴れ晴れしたのでした。
星の鉄鎚はたくさんの物に打ち付けられ続けたというのに、少しも欠けたり磨り減ったり壊れたりしませんでした。
ティアマトは大変喜んで、言いました。
「この鉄槌はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしは今までこの世になく、これからもできないだろう大きく豪華な家を建てることができるでしょう」
ティアマトは七組の夫婦の分の新しい家を建て上げて七家族分の家具を組み上げて七つの職業にいる道具を山と作り上げて、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の詩人のヌトは、今までは自分の両親と姉妹たちにだけ聞こえるような詩を歌えば良かったのですが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの心にも響く詩を作らなければなりませんでした。
ヌトは紫の服のアシズエルが結納の品に持ってきた鏡をじっと眺めて、皆の目に自分が映るようにするにはどうすればよいかを考えました。
近くの畑、遠くの牧場、家の奥の厨房、深い山の中、高い屋根の上、騒がしい機械の側、建物の中、深い谷間。どこにいても歌が聞こえるようにするにはどうしたらよいのか、たくさんたくさん考えました。
キラキラ光る鏡に映る自分の顔を見るうちに、ヌトは考えつきました。
どこからでも自分がいるところが見えるようにしておけば良いのです。そうすれば、何処で働いていても、歌を聴きたいその時に、歌い手を見いだせ、その声に耳を傾けられるに違いありません。
ヌトはとてもとても光り、とてもとても美しく、とてもとても目立つ格好をすれば、どこからでも自分の姿が見えるに違いないと思いました。
ヌトはマッハの所へ行きました。大きな音を立てる楽器を作るための獣の毛と牙を貰うためです。
それからジョカの所へ行きました。遠くからでもよく見えるキラキラの石のように顔を光らせる為に塗るバターを別けて貰うためです。
それからポイベの所へ行きました。遠くからでもよく見える旗のようにひらひらの服を作ってもらうためです。
それからディーヴィの所へ行きました。身を飾るために必要な放牧場に咲くいろいろな花を摘むためです。
それからティアマトの所へ行きました。何処までも遠くを見通せる高い台を作ってもらうためです。
それからフッラの所へ行こうと思いました。喉がかれてしまったときの薬を貰うためです。
ですがフッラは遠くの谷に行ったきりまだ帰ってきていませんでしたので、薬は貰えませんでした。
全部の支度が調うと、ヌトは高い台の上に立ち、花冠をかぶり、ひらひらの服を着て、顔にバターを塗って、皮の太鼓と骨の鳴子を打ち鳴らし、鏡で光を弾かせながら、大きな声で歌いました。
畑にいる男たちが一斉に顔を上げ、台の上の歌い手に目を注ぎました。
作業場のお母さんとポイベと、工房のマッハと、厨房のジョカとは窓を開け、一斉に聞き耳を立てました。
遠い放牧場のディーヴィと、石切崖のティアマトと、それから遠い荒れ野を歩いているフッラは、耳をそばだてました。
皆がみな自分を見ていることがわかったヌトは大変喜んで、言いました。
「この鏡はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしはこの世のすべての人々が私の元で心を一つにする方法をいくらでも考え出せるでしょう」
ヌトは全身全霊を注いで歌を唄い、詩を家族の元へ届けました。
この世で最初の猟師のマッハは、今までは自分の両親と姉妹たちが食べる分だけ鳥や獣や魚を捕ってきていましたが、その日からからは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分まで獲物を捕ってこなければなりませんでした。
ですが、マッハは赤い服のガドレエルが結納の品に持ってきた素晴らしい剣を持って出かけましたので、たくさんの獣とたくさんの鳥とたくさんの魚を捕まえることができました。
それから、いつもマッハの狩りの邪魔をして、そればかりかマッハを襲って食べようとさえする、たくさんの獅子とたくさんの鷲とたくさんの鰐も仕留めることができました。
星鋼の剣はそれほどの獲物と毛物を屠ったというのに、刃こぼれ一つできませんでした。
マッハは大変喜んで、言いました。
「この剣はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしはこの世の生き物を総て自分の獲物にすることができるでしょう」
マッハはたくさんの獣の肉を背負って鳥の肉を抱えて大きな魚籠を引きずって、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の料理人のジョカは、今までは自分の両親と姉妹たちが食べる分だけのパンとスープとおかずを作っていまいしたが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分まで食事を作らなければなりませんでした。
ですが、ジョカは褐色の服のニスロクエルが結納の品に持ってきたお酒を料理に使いましたので、たくさんのパンとたくさんのスープとたくさんのおかずを一度においしく作ることができました。
それから、いつもジョカがたくさん料理をするときは、たくさんの竈の熱とたくさんの釜の炎とたくさんの鍋の重さで疲れ果ててしまったのですが、お酒を一口飲むと、その疲れがあっという間に吹き飛んでしまいました。
風の酒はそれほどの料理を作るのに使ったというのに、まだ壺にいっぱい満たされていました。
ジョカは大変喜んで、言いました。
「このお酒はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしはこの世の料理を総ておいしく食べることができるでしょう」
ジョカはたくさんのパンを背負ってスープ鍋を抱えて菜の天火を引きずって、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の仕立屋のポイベは、今までは自分の両親と姉妹たちが着る分だけの上着と肌着と靴を作っていまいしたが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分まで着る物を仕立てなければなりませんでした。
ですが、ポイベは黄色の服のエクサエルが結納の品に持ってきた紅を布地を染めるのに使いましたので、たくさんの上着とたくさんの肌着とたくさんの靴を一度に美しく仕立てることができました。
それから、いつもポイベがたくさん縫い物をするときは、小さな針穴に糸を通したり鋏で正確に布を裁ったり、いろいろな形に布を縫い止めたりするのが大変だったのですが、真っ赤な紅で糸と布を染めると、細い糸は見やすく、鋏で切る位置は分かり易く、布を縫い進める方向は分かり易くなり、疲れを感じることなく仕事ができました。
晴れの紅はそれほどの着る物を作るのに使ったというのに、少しも目減りしませんでした。
ポイベは大変喜んで、言いました。
「この紅はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしはこの世で一番美しい衣服を作ることができるでしょう」
ポイベはたくさんの上着を背負って肌着を抱えて靴を引きずって、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の牧童のディーヴィは、今までは自分の両親と姉妹たちが飲み食いする分だけの毛玉牛の乳とチーズと、両親と姉妹が使う絨毯に必要な分だけの毛を取れるだけの羊の世話をすれば良かったのですが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分まで乳や毛を用立てる算段をしなければなりませんでした。
ですが、ディーヴィは灰褐色の服のコカバイエルが結納の品に持ってきた星図を暦を見るために使いましたので、どの牧草地にいつ草が生えるかも、親牛が仔牛を生むのかも、乳がいつ頃発酵し、チーズにいつ頃カビが付くかもわかりました。
そればかりか、両親や姉妹や、それから自分の身に、明日明後日明明後日、そのずっと先に起こるだろうことまで、すっかりわかる気がするのでした。
それから、いつもディーヴィがたくさんの牛の世話をするときは、広い牧草地にたった一人で出かけて、たった一人でたくさんの牛を見張らなければならなかったので、とてもとても退屈で、とてもとてもくたびれていたのですが、じっと座って星図に記された太陽と月の星の秘密をひもといておりますと、退屈はちっとも感じられぬうえに、疲れなど少しも感じませんでした。
時の星図はそれほどの長い時間眺めていたというのに、少しも飽きず色あせませんでした。
ディーヴィは大変喜んで、言いました。
「この星図はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしは座ったままでこの世の動きを知ることだってできるでしょう」
ディーヴィはたくさんの牧草を食べた毛玉牛を追い立てて乳の詰まった革袋を負って刈った毛の束を抱えて、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の大工のティアマトは、今までは自分の両親と姉妹たちが棲み暮らすだけの広さの家と、両親と姉妹が使う家具と道具を作れば良かったのですが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの分の家と家具と道具を作らなければならなくなりました。
ですが、ティアマトは黄緑の服のムルキブエルが結納の品に持ってきた鉄鎚を釘を打つためと石を削るために使いましたので、どんなに太い柱もどんどん組み立てられ、どんなに大きな石もどんどん砕け、どんなに細かい細工もどんどん掘り進められました。
それから、いつもティアマトが家を建てるときは、力のない石の鎚を使っておりましたので、一つの釘を打つにも十は叩き、一つの石を砕くにも百は叩き、一つの細工を仕上げるにも千は叩かなければならず、とても面倒で、たいそう疲れていたのですが、鉄槌は一振りで釘を打ち、二振りで石を砕き、三振りで細工を仕上げられる力をもっておりましたので、何を作るにもあっという間に仕上がって、ちっとも疲れたりはしませんでした。
今までは硬すぎて釘の通らなかった木に苛立ち、堅すぎて掘り出せなかった岩盤に腹を立て、繊細すぎて描けなかった細工を諦めていたというのに、何でも思うとおりに組み立て、作り、飾ることができたので心が晴れ晴れしたのでした。
星の鉄鎚はたくさんの物に打ち付けられ続けたというのに、少しも欠けたり磨り減ったり壊れたりしませんでした。
ティアマトは大変喜んで、言いました。
「この鉄槌はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしは今までこの世になく、これからもできないだろう大きく豪華な家を建てることができるでしょう」
ティアマトは七組の夫婦の分の新しい家を建て上げて七家族分の家具を組み上げて七つの職業にいる道具を山と作り上げて、家族の待つ家へ向かいました。
この世で最初の詩人のヌトは、今までは自分の両親と姉妹たちにだけ聞こえるような詩を歌えば良かったのですが、その日からは、自分の夫になる人と、その兄弟たちの心にも響く詩を作らなければなりませんでした。
ヌトは紫の服のアシズエルが結納の品に持ってきた鏡をじっと眺めて、皆の目に自分が映るようにするにはどうすればよいかを考えました。
近くの畑、遠くの牧場、家の奥の厨房、深い山の中、高い屋根の上、騒がしい機械の側、建物の中、深い谷間。どこにいても歌が聞こえるようにするにはどうしたらよいのか、たくさんたくさん考えました。
キラキラ光る鏡に映る自分の顔を見るうちに、ヌトは考えつきました。
どこからでも自分がいるところが見えるようにしておけば良いのです。そうすれば、何処で働いていても、歌を聴きたいその時に、歌い手を見いだせ、その声に耳を傾けられるに違いありません。
ヌトはとてもとても光り、とてもとても美しく、とてもとても目立つ格好をすれば、どこからでも自分の姿が見えるに違いないと思いました。
ヌトはマッハの所へ行きました。大きな音を立てる楽器を作るための獣の毛と牙を貰うためです。
それからジョカの所へ行きました。遠くからでもよく見えるキラキラの石のように顔を光らせる為に塗るバターを別けて貰うためです。
それからポイベの所へ行きました。遠くからでもよく見える旗のようにひらひらの服を作ってもらうためです。
それからディーヴィの所へ行きました。身を飾るために必要な放牧場に咲くいろいろな花を摘むためです。
それからティアマトの所へ行きました。何処までも遠くを見通せる高い台を作ってもらうためです。
それからフッラの所へ行こうと思いました。喉がかれてしまったときの薬を貰うためです。
ですがフッラは遠くの谷に行ったきりまだ帰ってきていませんでしたので、薬は貰えませんでした。
全部の支度が調うと、ヌトは高い台の上に立ち、花冠をかぶり、ひらひらの服を着て、顔にバターを塗って、皮の太鼓と骨の鳴子を打ち鳴らし、鏡で光を弾かせながら、大きな声で歌いました。
畑にいる男たちが一斉に顔を上げ、台の上の歌い手に目を注ぎました。
作業場のお母さんとポイベと、工房のマッハと、厨房のジョカとは窓を開け、一斉に聞き耳を立てました。
遠い放牧場のディーヴィと、石切崖のティアマトと、それから遠い荒れ野を歩いているフッラは、耳をそばだてました。
皆がみな自分を見ていることがわかったヌトは大変喜んで、言いました。
「この鏡はなんて素晴らしいのでしょう! これがあれば、わたしはこの世のすべての人々が私の元で心を一つにする方法をいくらでも考え出せるでしょう」
ヌトは全身全霊を注いで歌を唄い、詩を家族の元へ届けました。
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