17 / 97
鴻鵠の君(あるいは「大きな鳥と王子様」)
王子様、出発する。
しおりを挟む
何分にもご自分も王子様なものですから、歌の中に出てくる「王子」という言葉が大変に気になったのです。
そして、お姉さんのお姫様たちがすっかり大きくなって、鞠突きなどいう子供の遊びには目もくれなくなったころ、つまりは王子様もすっかり大きくなって、そろそろお嫁さんをもらわなければならなくなったころになっても、王子様はずっと歌のことを気に掛けていました。
王子様は、お城や神殿に付属している立派な図書館に行っては、棚の手の届く範囲にある本を読読み尽くして、手鞠歌のことを調べました。
ですが、そういうご本に載っているのは、偉大な王様の偉大な業績を讃えたり、美しいお姫様の美しさを褒めたり、有難い神様の有難いお告げを喜んだりする歌ばかりです。
この小さな国の人々は、正しい大人の正しい行いを記録することには熱心でしたが、手鞠歌などという子供を喜ばすだけの俗謡を残すことには、関心がなかったのでありましょう。
そこで王子様は、お城の学者とお城の外の学者を呼んで、手鞠歌のことを訊ねました。
でも、学者達の知る範囲のご本にもそれを書いた記録がなかったものですから、王子様がお求めになるような答えは、出すことができませんでした。
王子様は大変に落胆しました。
それでも調べたり訊ねたりしたことが、全く無駄であったということではなかったのです。
王子様の手の届く所にあったご本に、
『大昔に壊れて、今では誰も訪れない遺跡になってしまったお城跡の近くに、その名も「宝箱」という土地がある』
と書いてあったのです。
学者達の知る範囲の、一番古いご本の中に
『古いお城の近くの丘に大きな洞穴があった。あるとき地面が大きく揺れて、山が崩れてしまったので、洞穴の入り口もわからなくなった』
と、書かれていたのです。
――その古いご本には、
『その地崩れで昔のお城が壊れてしまったので、その頃の王様が、新しいお城と今の場所に建てたのだ』
と、書いてあったと、年寄りの学者が申し上げたのですが、そんなことは王子様にはどうでもよいことでした。
王子様の心は「宝箱」という土地の名前がで一杯になりました。
手鞠歌のいう「箱」がその土地と関係があるとは、王子様と学者達の手の届く範囲にあるご本にはちっとも書いていなかったのですが、そんなことも王子様にはどうでもよいことでした。
王子様は土地に行くことを心に決めたのです。
王子様はお父様の王様のご機嫌がすこぶる良い時を見計らって、
「大昔、自分の先祖か築いた城の址を見学しとうございます」
と、半分は本心で半分は嘘のことを言って、お許しを頂戴しました。
何しろ、小さな国は本当に小さな国です。
古いお城の址に行くと言われて、それを許したお父様の王様とお母様の王妃様は、まるきり今のお城のお庭をちょっとお散歩するのと同じくらいの心やすいお気持ちだったのでありましょう。
お許しをもらった王子様は、早速大きな鞍袋に塩っぱい堅パンを一打詰めて、大きな皮袋水筒に甘いワインをたっぷり詰めて、大きな背嚢に松明と燧石を入れました。
出発する前の晩は心が騒いで、眠れませんでした。
夜が明けますと、わくわくとする心のままに王子様はお馬に飛び乗って、早速お尻に鞭を入れました。
お供の歩兵がどんなに走っても追いつけないほどの勢いで、お馬はご城下の外へ駆け出してしまいました。
そして、お姉さんのお姫様たちがすっかり大きくなって、鞠突きなどいう子供の遊びには目もくれなくなったころ、つまりは王子様もすっかり大きくなって、そろそろお嫁さんをもらわなければならなくなったころになっても、王子様はずっと歌のことを気に掛けていました。
王子様は、お城や神殿に付属している立派な図書館に行っては、棚の手の届く範囲にある本を読読み尽くして、手鞠歌のことを調べました。
ですが、そういうご本に載っているのは、偉大な王様の偉大な業績を讃えたり、美しいお姫様の美しさを褒めたり、有難い神様の有難いお告げを喜んだりする歌ばかりです。
この小さな国の人々は、正しい大人の正しい行いを記録することには熱心でしたが、手鞠歌などという子供を喜ばすだけの俗謡を残すことには、関心がなかったのでありましょう。
そこで王子様は、お城の学者とお城の外の学者を呼んで、手鞠歌のことを訊ねました。
でも、学者達の知る範囲のご本にもそれを書いた記録がなかったものですから、王子様がお求めになるような答えは、出すことができませんでした。
王子様は大変に落胆しました。
それでも調べたり訊ねたりしたことが、全く無駄であったということではなかったのです。
王子様の手の届く所にあったご本に、
『大昔に壊れて、今では誰も訪れない遺跡になってしまったお城跡の近くに、その名も「宝箱」という土地がある』
と書いてあったのです。
学者達の知る範囲の、一番古いご本の中に
『古いお城の近くの丘に大きな洞穴があった。あるとき地面が大きく揺れて、山が崩れてしまったので、洞穴の入り口もわからなくなった』
と、書かれていたのです。
――その古いご本には、
『その地崩れで昔のお城が壊れてしまったので、その頃の王様が、新しいお城と今の場所に建てたのだ』
と、書いてあったと、年寄りの学者が申し上げたのですが、そんなことは王子様にはどうでもよいことでした。
王子様の心は「宝箱」という土地の名前がで一杯になりました。
手鞠歌のいう「箱」がその土地と関係があるとは、王子様と学者達の手の届く範囲にあるご本にはちっとも書いていなかったのですが、そんなことも王子様にはどうでもよいことでした。
王子様は土地に行くことを心に決めたのです。
王子様はお父様の王様のご機嫌がすこぶる良い時を見計らって、
「大昔、自分の先祖か築いた城の址を見学しとうございます」
と、半分は本心で半分は嘘のことを言って、お許しを頂戴しました。
何しろ、小さな国は本当に小さな国です。
古いお城の址に行くと言われて、それを許したお父様の王様とお母様の王妃様は、まるきり今のお城のお庭をちょっとお散歩するのと同じくらいの心やすいお気持ちだったのでありましょう。
お許しをもらった王子様は、早速大きな鞍袋に塩っぱい堅パンを一打詰めて、大きな皮袋水筒に甘いワインをたっぷり詰めて、大きな背嚢に松明と燧石を入れました。
出発する前の晩は心が騒いで、眠れませんでした。
夜が明けますと、わくわくとする心のままに王子様はお馬に飛び乗って、早速お尻に鞭を入れました。
お供の歩兵がどんなに走っても追いつけないほどの勢いで、お馬はご城下の外へ駆け出してしまいました。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる