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37 私、何かやってるみたいです!
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「何だ!?」
吹っ飛ばされたルルヴァル兵を見て、敵の標的が私たちからアルベールや近衛たちに移った。
「殿下、移動!」
「はいはい」
ヴァレリー王太子も解ったもので、私たちの直線上に味方がいない場所へ移動した。
「アルベール、近衛さん、引いて! え~い!」
もう一回、私は剣を振り下ろす。
バリバリと衝撃波が軌道上にいた敵を数人吹き飛ばした。
「あ!」
と思った時には衝撃波が回廊の柱を崩していた。
「屋根が落ちるぞ!」
近衛たちが咄嗟に声を出してくれたおかけで、回廊の屋根の下にいた者たちは皆、回避することが出来た。
ズドーン、ガラガラ、と渡り廊下の屋根の一部が落ち、砂埃を巻き上げた。
「うわ~。凄いね」
ヴァレリー王太子が呑気な声を出す。
回廊の出口攻略に集中していたルルヴァル兵たちは、後ろからアレを食らってはひとたまりもないと、私たちを攻撃することにしたらしい。
「こっちに戦力が集中してきたな。ルイーズ、もうあの攻撃は使えないぞ」
ヴァレリー王太子の横に立ったアルベールは、敵の動きをよく見ている。
さすが武力に長けたルルヴァル兵だ。親衛隊たちの間に上手い事位置取りをして、私の直線攻撃を出させないようにしている。
「うん。私も剣が重くて、あれはちょっともう無理」
ひょいひょいと攻撃をかわすヴァレリー王太子にしがみついた私は、握力の限界が来て剣を落としてしまった。
「ちょっ! 殿下、下がって!」
武器を無くした王太子に皆が冷や汗をかく。
近衛を含めた親衛隊たちが守りに入ろうとするが、ルルヴァル兵もこちらの隙を逃さない。
二人のルルヴァル兵が完全に私と王太子を攻撃範囲に捉えた。
敵と目が合う。
あ、やられる。
そう思った瞬間、私は額に熱を感じた。
周囲が光に溢れる。
大きく剣を振りかぶった敵が目の前で止まっていた。
いや、物凄く遅く動いている。
アルベールや近衛たちが、王太子と敵の間に入ろうとしている動きもスローだ。
額が熱い。
「ルイーズ、どういう事だ?」
私を抱いたヴァレリー王太子が聞いてきた。
驚いたことに、光溢れるこの空間に、私と同じ状況の王太子がいた。
「わかりません。が、逃げましょう」
ヴァレリー王太子は、数歩下がって、敵の攻撃範囲外へ避難する。
すると、光の空間が、霧が晴れるように消え去り、突如時間の流れが通常に戻った。
目の前で敵が二人、大きく空振りする。
「???」
敵も味方も、そこにいたはずの王太子が瞬時に移動したことに驚きを隠せない。
「殿下は無事だ!」
アルベールが発した言葉に、状況を理解できず剣を振り下ろしたままのルルヴァル兵二人は捕らえられる。
「殿下、何ですか今の。凄い速さで移動してました」
近衛がヴァレリー王太子の脇を固め、聞いてくる。
「へぇ~。そう見えたか」
私を抱き直した王太子は、周囲に目を光らせる。
「上だ!」
親衛隊からの声に上を見ると、北塔の二階から剣を振ってルルヴァル兵が数人飛び降りて来た。
私はまたも、空中にいる敵と目が合う。
すると額が熱くなり、再び光の空間に居た。
「おお! まただ!」
ヴァレリー王太子は今回も私と同じ状況というか、時間経過の中に居た。
「なんか、私、やってるみたいです! 取り敢えず逃げて下さーい!」
私が危険な位置に居る近衛の胸倉を掴んで、一緒に安全な位置まで移動すると、その瞬間、時間の流れが通常に戻る。
飛び降りて来たルルヴァル兵は、目標を失って地面に剣を突き刺すこととなった。
吹っ飛ばされたルルヴァル兵を見て、敵の標的が私たちからアルベールや近衛たちに移った。
「殿下、移動!」
「はいはい」
ヴァレリー王太子も解ったもので、私たちの直線上に味方がいない場所へ移動した。
「アルベール、近衛さん、引いて! え~い!」
もう一回、私は剣を振り下ろす。
バリバリと衝撃波が軌道上にいた敵を数人吹き飛ばした。
「あ!」
と思った時には衝撃波が回廊の柱を崩していた。
「屋根が落ちるぞ!」
近衛たちが咄嗟に声を出してくれたおかけで、回廊の屋根の下にいた者たちは皆、回避することが出来た。
ズドーン、ガラガラ、と渡り廊下の屋根の一部が落ち、砂埃を巻き上げた。
「うわ~。凄いね」
ヴァレリー王太子が呑気な声を出す。
回廊の出口攻略に集中していたルルヴァル兵たちは、後ろからアレを食らってはひとたまりもないと、私たちを攻撃することにしたらしい。
「こっちに戦力が集中してきたな。ルイーズ、もうあの攻撃は使えないぞ」
ヴァレリー王太子の横に立ったアルベールは、敵の動きをよく見ている。
さすが武力に長けたルルヴァル兵だ。親衛隊たちの間に上手い事位置取りをして、私の直線攻撃を出させないようにしている。
「うん。私も剣が重くて、あれはちょっともう無理」
ひょいひょいと攻撃をかわすヴァレリー王太子にしがみついた私は、握力の限界が来て剣を落としてしまった。
「ちょっ! 殿下、下がって!」
武器を無くした王太子に皆が冷や汗をかく。
近衛を含めた親衛隊たちが守りに入ろうとするが、ルルヴァル兵もこちらの隙を逃さない。
二人のルルヴァル兵が完全に私と王太子を攻撃範囲に捉えた。
敵と目が合う。
あ、やられる。
そう思った瞬間、私は額に熱を感じた。
周囲が光に溢れる。
大きく剣を振りかぶった敵が目の前で止まっていた。
いや、物凄く遅く動いている。
アルベールや近衛たちが、王太子と敵の間に入ろうとしている動きもスローだ。
額が熱い。
「ルイーズ、どういう事だ?」
私を抱いたヴァレリー王太子が聞いてきた。
驚いたことに、光溢れるこの空間に、私と同じ状況の王太子がいた。
「わかりません。が、逃げましょう」
ヴァレリー王太子は、数歩下がって、敵の攻撃範囲外へ避難する。
すると、光の空間が、霧が晴れるように消え去り、突如時間の流れが通常に戻った。
目の前で敵が二人、大きく空振りする。
「???」
敵も味方も、そこにいたはずの王太子が瞬時に移動したことに驚きを隠せない。
「殿下は無事だ!」
アルベールが発した言葉に、状況を理解できず剣を振り下ろしたままのルルヴァル兵二人は捕らえられる。
「殿下、何ですか今の。凄い速さで移動してました」
近衛がヴァレリー王太子の脇を固め、聞いてくる。
「へぇ~。そう見えたか」
私を抱き直した王太子は、周囲に目を光らせる。
「上だ!」
親衛隊からの声に上を見ると、北塔の二階から剣を振ってルルヴァル兵が数人飛び降りて来た。
私はまたも、空中にいる敵と目が合う。
すると額が熱くなり、再び光の空間に居た。
「おお! まただ!」
ヴァレリー王太子は今回も私と同じ状況というか、時間経過の中に居た。
「なんか、私、やってるみたいです! 取り敢えず逃げて下さーい!」
私が危険な位置に居る近衛の胸倉を掴んで、一緒に安全な位置まで移動すると、その瞬間、時間の流れが通常に戻る。
飛び降りて来たルルヴァル兵は、目標を失って地面に剣を突き刺すこととなった。
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