病弱を理由に婚約破棄されました ~私、前世は狂戦士だったのです~

呉マチス

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29 ご令嬢はすっとぼける

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大公様に広い客間に運ばれ、ソファーに降ろされた。
ビクトリア様が部屋を用意してくれていたようだ。侍女にティーセットを運ばせている。
そこにお迎えのお父様と従兄弟のアルベール、従者の騎士団数人がなだれ込んで来て、客間は一気に賑やかになった。

「ルイーズ、お前、体は大丈夫なのか?」

お父様がこの状態で一番に私の体調の心配をしてくれる。

「申し訳ありません。お世話になりました」

と言って体裁を整えているのは従兄弟のアルベールだ。

ひとしきり挨拶謝罪が終わって落ち着くと、早速大公様が私に聞いてくる。

「なぁんでルイーズ嬢ちゃんが宰相の行方を知ってるんだ? ああ?」

柄が悪いです、大公様。

「ええ!?」

室内にいる皆も驚く。

「ええと、エルミナ様がおっしゃっていました」

「ビクトリアからはんな事きいてねえなぁ」

しまった。『地獄耳』で得た情報だった。
『地獄耳』については言いたくない。
体が弱い私の動かずに使える唯一の武器だ。
それに単純に盗聴だ。周囲の人にとっては気持ちの良くない能力だし、どんなに私が配慮して能力を使っても、きっと気分が悪い事に変わりはないだろう。

口を閉ざす私を見据え、どっかりとソファーに座り込む大公様。

「まぁだ何か隠してるな、ルイーズ」

「ルイーズ。何かあるなら素直に言いなさい」

大公様とお父様からダブル追求だ。
圧が凄い。
仕方ない。ある程度は説明しなければ、大公様も私を扱いあぐねるのだろう。

「ガルガンの能力については、私にも解らないことが多いのです。先程のテオドリック様とエルミナ様の事だって、脳内イメージがあそこまで現実に作用するなんて思いませんでしたし、やった事ありませんでしたし、壁を壊したのも初めてです」

つまり、まだまだ私の中のガルガンは得体が知れないということを暴露する。今後も何が出て来るか解らない。
せっかく長年かけて、能力を抑え込んで信用を得てきたのにな。
また得体の知れない危険人物に逆戻りするのかな。

「とにかく、テオドリック様を苛めている時、隣の部屋から盗み聞きしていたエルミナ様の声が聞こえたのです。「お父様がリリア妃殿下の所にいる事は言わないで」って。なぜ聞こえたかは私にもわかりません」

ひたすらすっとぼける。
するとビクトリア様から援護射撃が来た。

「凄かったのよ、ルイーズ。格好良かったの! 普段のルイーズからは想像できない迫力と破壊力で、とても怖かったわ」

やっぱり怖かったのね。ごめんね。

「私、思うのですけど、ガルガン卿の能力が発動している時って、騎士たちが戦いで極度の集中状態に入っているのと同じような状況でしょう? ガルガン卿ほどの騎士ですもの。五感も鋭くなるのではないかしら?」

まるで憧れの男性について語るかのようなビクトリアだ。

「そうなのか?」

大公様が私に尋ねる。

「どうでしょう?」

答えるとビクトリア様が、

「ルイーズ、あなたね、凄かったんだからね! こっちは息一つ出来ないくらい緊張したし、空気が張り詰めていて指先一つ動かせないくらいだったんだから!」

と騒ぎ出す。

「ブルージュ公、ルイーズは抑え込んだ方がダメだな。発散させろ。しばらく騎士団で預かる。どうせ暇なんだろ?」

「ええ!?」

「マジっすか!? 俺らお嬢様と鍛錬するんすか!?」

大公様の言葉にお迎えに来た騎士団の面々が早速盛り上がりを見せる。

「近くにいる方が安心なので私は構いませんが……」

話しが少しそれてきた所で、私は更に爆弾を落とす。
私の能力の追及をするより、宰相様の対応をするのが先だろう。

「そういえば、先日我が家の厩舎で取り押さえた時も、エルミナ様とテオドリック様のお声が聞こえたのです。何か計画があるような事をおっしゃっていましたわ。リリア妃の宮殿に立てこもって、宰相様とお二人で何を計画なさっているのでしょうね?」
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