29 / 53
29 ご令嬢はすっとぼける
しおりを挟む
大公様に広い客間に運ばれ、ソファーに降ろされた。
ビクトリア様が部屋を用意してくれていたようだ。侍女にティーセットを運ばせている。
そこにお迎えのお父様と従兄弟のアルベール、従者の騎士団数人がなだれ込んで来て、客間は一気に賑やかになった。
「ルイーズ、お前、体は大丈夫なのか?」
お父様がこの状態で一番に私の体調の心配をしてくれる。
「申し訳ありません。お世話になりました」
と言って体裁を整えているのは従兄弟のアルベールだ。
ひとしきり挨拶謝罪が終わって落ち着くと、早速大公様が私に聞いてくる。
「なぁんでルイーズ嬢ちゃんが宰相の行方を知ってるんだ? ああ?」
柄が悪いです、大公様。
「ええ!?」
室内にいる皆も驚く。
「ええと、エルミナ様がおっしゃっていました」
「ビクトリアからはんな事きいてねえなぁ」
しまった。『地獄耳』で得た情報だった。
『地獄耳』については言いたくない。
体が弱い私の動かずに使える唯一の武器だ。
それに単純に盗聴だ。周囲の人にとっては気持ちの良くない能力だし、どんなに私が配慮して能力を使っても、きっと気分が悪い事に変わりはないだろう。
口を閉ざす私を見据え、どっかりとソファーに座り込む大公様。
「まぁだ何か隠してるな、ルイーズ」
「ルイーズ。何かあるなら素直に言いなさい」
大公様とお父様からダブル追求だ。
圧が凄い。
仕方ない。ある程度は説明しなければ、大公様も私を扱いあぐねるのだろう。
「ガルガンの能力については、私にも解らないことが多いのです。先程のテオドリック様とエルミナ様の事だって、脳内イメージがあそこまで現実に作用するなんて思いませんでしたし、やった事ありませんでしたし、壁を壊したのも初めてです」
つまり、まだまだ私の中のガルガンは得体が知れないということを暴露する。今後も何が出て来るか解らない。
せっかく長年かけて、能力を抑え込んで信用を得てきたのにな。
また得体の知れない危険人物に逆戻りするのかな。
「とにかく、テオドリック様を苛めている時、隣の部屋から盗み聞きしていたエルミナ様の声が聞こえたのです。「お父様がリリア妃殿下の所にいる事は言わないで」って。なぜ聞こえたかは私にもわかりません」
ひたすらすっとぼける。
するとビクトリア様から援護射撃が来た。
「凄かったのよ、ルイーズ。格好良かったの! 普段のルイーズからは想像できない迫力と破壊力で、とても怖かったわ」
やっぱり怖かったのね。ごめんね。
「私、思うのですけど、ガルガン卿の能力が発動している時って、騎士たちが戦いで極度の集中状態に入っているのと同じような状況でしょう? ガルガン卿ほどの騎士ですもの。五感も鋭くなるのではないかしら?」
まるで憧れの男性について語るかのようなビクトリアだ。
「そうなのか?」
大公様が私に尋ねる。
「どうでしょう?」
答えるとビクトリア様が、
「ルイーズ、あなたね、凄かったんだからね! こっちは息一つ出来ないくらい緊張したし、空気が張り詰めていて指先一つ動かせないくらいだったんだから!」
と騒ぎ出す。
「ブルージュ公、ルイーズは抑え込んだ方がダメだな。発散させろ。しばらく騎士団で預かる。どうせ暇なんだろ?」
「ええ!?」
「マジっすか!? 俺らお嬢様と鍛錬するんすか!?」
大公様の言葉にお迎えに来た騎士団の面々が早速盛り上がりを見せる。
「近くにいる方が安心なので私は構いませんが……」
話しが少しそれてきた所で、私は更に爆弾を落とす。
私の能力の追及をするより、宰相様の対応をするのが先だろう。
「そういえば、先日我が家の厩舎で取り押さえた時も、エルミナ様とテオドリック様のお声が聞こえたのです。何か計画があるような事をおっしゃっていましたわ。リリア妃の宮殿に立てこもって、宰相様とお二人で何を計画なさっているのでしょうね?」
ビクトリア様が部屋を用意してくれていたようだ。侍女にティーセットを運ばせている。
そこにお迎えのお父様と従兄弟のアルベール、従者の騎士団数人がなだれ込んで来て、客間は一気に賑やかになった。
「ルイーズ、お前、体は大丈夫なのか?」
お父様がこの状態で一番に私の体調の心配をしてくれる。
「申し訳ありません。お世話になりました」
と言って体裁を整えているのは従兄弟のアルベールだ。
ひとしきり挨拶謝罪が終わって落ち着くと、早速大公様が私に聞いてくる。
「なぁんでルイーズ嬢ちゃんが宰相の行方を知ってるんだ? ああ?」
柄が悪いです、大公様。
「ええ!?」
室内にいる皆も驚く。
「ええと、エルミナ様がおっしゃっていました」
「ビクトリアからはんな事きいてねえなぁ」
しまった。『地獄耳』で得た情報だった。
『地獄耳』については言いたくない。
体が弱い私の動かずに使える唯一の武器だ。
それに単純に盗聴だ。周囲の人にとっては気持ちの良くない能力だし、どんなに私が配慮して能力を使っても、きっと気分が悪い事に変わりはないだろう。
口を閉ざす私を見据え、どっかりとソファーに座り込む大公様。
「まぁだ何か隠してるな、ルイーズ」
「ルイーズ。何かあるなら素直に言いなさい」
大公様とお父様からダブル追求だ。
圧が凄い。
仕方ない。ある程度は説明しなければ、大公様も私を扱いあぐねるのだろう。
「ガルガンの能力については、私にも解らないことが多いのです。先程のテオドリック様とエルミナ様の事だって、脳内イメージがあそこまで現実に作用するなんて思いませんでしたし、やった事ありませんでしたし、壁を壊したのも初めてです」
つまり、まだまだ私の中のガルガンは得体が知れないということを暴露する。今後も何が出て来るか解らない。
せっかく長年かけて、能力を抑え込んで信用を得てきたのにな。
また得体の知れない危険人物に逆戻りするのかな。
「とにかく、テオドリック様を苛めている時、隣の部屋から盗み聞きしていたエルミナ様の声が聞こえたのです。「お父様がリリア妃殿下の所にいる事は言わないで」って。なぜ聞こえたかは私にもわかりません」
ひたすらすっとぼける。
するとビクトリア様から援護射撃が来た。
「凄かったのよ、ルイーズ。格好良かったの! 普段のルイーズからは想像できない迫力と破壊力で、とても怖かったわ」
やっぱり怖かったのね。ごめんね。
「私、思うのですけど、ガルガン卿の能力が発動している時って、騎士たちが戦いで極度の集中状態に入っているのと同じような状況でしょう? ガルガン卿ほどの騎士ですもの。五感も鋭くなるのではないかしら?」
まるで憧れの男性について語るかのようなビクトリアだ。
「そうなのか?」
大公様が私に尋ねる。
「どうでしょう?」
答えるとビクトリア様が、
「ルイーズ、あなたね、凄かったんだからね! こっちは息一つ出来ないくらい緊張したし、空気が張り詰めていて指先一つ動かせないくらいだったんだから!」
と騒ぎ出す。
「ブルージュ公、ルイーズは抑え込んだ方がダメだな。発散させろ。しばらく騎士団で預かる。どうせ暇なんだろ?」
「ええ!?」
「マジっすか!? 俺らお嬢様と鍛錬するんすか!?」
大公様の言葉にお迎えに来た騎士団の面々が早速盛り上がりを見せる。
「近くにいる方が安心なので私は構いませんが……」
話しが少しそれてきた所で、私は更に爆弾を落とす。
私の能力の追及をするより、宰相様の対応をするのが先だろう。
「そういえば、先日我が家の厩舎で取り押さえた時も、エルミナ様とテオドリック様のお声が聞こえたのです。何か計画があるような事をおっしゃっていましたわ。リリア妃の宮殿に立てこもって、宰相様とお二人で何を計画なさっているのでしょうね?」
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた
せいめ
恋愛
伯爵令嬢のフローラは、夜会で婚約者のレイモンドと義妹のリリアンが抱き合う姿を見てしまった。
大好きだったレイモンドの裏切りを知りショックを受けるフローラ。
三ヶ月後には結婚式なのに、このままあの方と結婚していいの?
深く傷付いたフローラは散々悩んだ挙句、その場に偶然居合わせた公爵令息や親友の力を借り、ざまぁして逃げ出すことにしたのであった。
ご都合主義です。
誤字脱字、申し訳ありません。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。


王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる