38 / 61
「アーケオVSブレド」
しおりを挟む
会場の外。ディーノが歓声を聞きながら、決勝に進出したアーケオに想いを馳せた。
「あの本。まさかな」
「レックス隊長。準備が整いました」
物陰からフードで顔を覆った男が出て来た。
「わかった」
フードで顔を覆った男が読んだ名前に懐かしさを覚えながら、ディーノは応じた。
闘技場は熱気に包まれていた。目の前には異母兄のブレド。アーケオと同じく腰には黄金の剣を携えていた。
「まさかお前がここまで勝ち上がってくるなんてな。強くなったのは本当のようだな」
「兄さん。僕はもう昔の僕ではありません」
一族の中でも末席の立場だった彼は妾の子という理由で惨めな思いを強いられてきた。彼はこの戦いで今までの過去を払拭したいのだ。
「それでは世界大会決勝戦! 始め!」
「勇者の斬撃!」
「勇者の斬撃!」
審判の合図とともにアーケオとブレドが黄金の斬撃を打ち込んだ。二つの斬撃がぶつかり合って、凄まじい爆発が二人の間で起こった。
爆発が過ぎて、周囲が土煙で覆われる中、アーケオは周囲に気を張る。すると背後から殺気を感じて、振り向くとブレドが斬りかかって来た。すかさず、アーケオは攻撃を剣で受け止めた。二つの勇者の剣が火花を散らし始める。
「偽物の剣で勝って嬉しいか?」
「僕にとっては本物ですよ?」
「ほざけ!」
ブレドが目つきを鋭くして、動きを速くした。アーケオも負けじとブレドの動きに対抗する。ブレドの動きの速さは確かに尋常ではなかった。しかし、この数ヶ月でアーケオはその動きに追いつけるほどの凄まじい成長を遂げたのだ。
「すげーぞ! あのブレドに追いついている!」
「マジかよ!」
互角の戦いに観客達が叫び声をあげた。世界大会も後半に差し掛かっているという事もあってか、これまで以上の熱気が会場を包み込んでいる。
その中、アーケオの剣がブレドの頰を掠めた。兄の頰から赤い血が線を引くように流れた。
「旅で腕を上げたようだな」
「ええ。多くの経験が出来ましたから。その過程で分かった事があります」
「ほう? それはなんだ?」
「貴方より強い人間がたくさんいるという事ですよ。井の中の蛙ですよ。兄さんは」
アーケオはあえて、挑発するような言葉を投げかけた。その瞬間、ブレドの目が露骨に色を変えた。
「ハハッ! かすり傷をつけた程度でいい気になるなよ」
ブレドの右目が黄金の光を放ち始めた。彼の魔法が発動されたのだ。
「お前が俺に勝てる日はこない! それをここで証明してやる!」
ブレドが蛇を彷彿とさせる表情でアーケオを睨みつけた。
「あの本。まさかな」
「レックス隊長。準備が整いました」
物陰からフードで顔を覆った男が出て来た。
「わかった」
フードで顔を覆った男が読んだ名前に懐かしさを覚えながら、ディーノは応じた。
闘技場は熱気に包まれていた。目の前には異母兄のブレド。アーケオと同じく腰には黄金の剣を携えていた。
「まさかお前がここまで勝ち上がってくるなんてな。強くなったのは本当のようだな」
「兄さん。僕はもう昔の僕ではありません」
一族の中でも末席の立場だった彼は妾の子という理由で惨めな思いを強いられてきた。彼はこの戦いで今までの過去を払拭したいのだ。
「それでは世界大会決勝戦! 始め!」
「勇者の斬撃!」
「勇者の斬撃!」
審判の合図とともにアーケオとブレドが黄金の斬撃を打ち込んだ。二つの斬撃がぶつかり合って、凄まじい爆発が二人の間で起こった。
爆発が過ぎて、周囲が土煙で覆われる中、アーケオは周囲に気を張る。すると背後から殺気を感じて、振り向くとブレドが斬りかかって来た。すかさず、アーケオは攻撃を剣で受け止めた。二つの勇者の剣が火花を散らし始める。
「偽物の剣で勝って嬉しいか?」
「僕にとっては本物ですよ?」
「ほざけ!」
ブレドが目つきを鋭くして、動きを速くした。アーケオも負けじとブレドの動きに対抗する。ブレドの動きの速さは確かに尋常ではなかった。しかし、この数ヶ月でアーケオはその動きに追いつけるほどの凄まじい成長を遂げたのだ。
「すげーぞ! あのブレドに追いついている!」
「マジかよ!」
互角の戦いに観客達が叫び声をあげた。世界大会も後半に差し掛かっているという事もあってか、これまで以上の熱気が会場を包み込んでいる。
その中、アーケオの剣がブレドの頰を掠めた。兄の頰から赤い血が線を引くように流れた。
「旅で腕を上げたようだな」
「ええ。多くの経験が出来ましたから。その過程で分かった事があります」
「ほう? それはなんだ?」
「貴方より強い人間がたくさんいるという事ですよ。井の中の蛙ですよ。兄さんは」
アーケオはあえて、挑発するような言葉を投げかけた。その瞬間、ブレドの目が露骨に色を変えた。
「ハハッ! かすり傷をつけた程度でいい気になるなよ」
ブレドの右目が黄金の光を放ち始めた。彼の魔法が発動されたのだ。
「お前が俺に勝てる日はこない! それをここで証明してやる!」
ブレドが蛇を彷彿とさせる表情でアーケオを睨みつけた。
13
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。


ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる