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「Best Friend」
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松阪隼人は一心不乱に突き進んでいた。立ちはだかる忌獣達を躱し、ある時は斬り倒した。
その周りには戦友である聖堂寺結巳、白峰揚羽、そして親友である鳳鷹が剣を振るっていた。
「グオオオオオオオオ!」
「どきなさい!」
結巳がツリ目をさらに鋭くしながら、忌獣を切り刻んだ。隼人達は細切れにあった忌獣を尻目に脳へと向かっていく。
そして、ついにヴリトラの頭頂部についた。
「聖堂寺と白峰は辺りの忌獣討伐を頼んだ」
「了解」
「任せて!」
二人の可憐な女性剣士達が胸を張って答えた。
「いくぞ!」
隼人は気力を振り絞って、黒炎を纏った刃をヴリトラの脳に突き刺した。
「オオオオオオオオ!」
刺さった瞬間、ヴリトラが天に轟く勢いの雄叫びを上げた。
「くっ!」
咆哮とともに吹き出た突風が隼人達を吹き飛ばしかねない強さで吹いたが、かろうじて堪えた。
「まだ足りない!」
鷹が隼人とともに聖滅具を支えながら、血を注いでいく。同時に黒炎が凄まじい勢いで燃え上がった。
それとともに隼人の体内も熱くなる。血液が沸騰しそうなほど、熱くなり熱湯が血管を循環しているような錯覚すら覚えた。
「はああああああ!」
怒号に似た叫び声を上げて、刀身を奥へと突き刺していく。
「うっ!」
鷹の苦しむような声が耳に入った。僅かに手を緩めようとしたが、それでは鷹の覚悟を無駄にしてしまう。
隼人は気持ちを殺して、さらに力を強めていく。
すると鷹の体が眩い光に包まれ始めた。鷹の体が限界を迎え始めたのだ。
「鷹!」
「止まるな隼人!」
鷹の言葉に背中を押されて、再び視線を脳に戻した。
「これで最後だ!」
鷹が燃え盛る刀身を強く握り、隼人の刃にさらに血を注いだ。さらに炎が音を立てて燃え上がった。
炎が燃え上がるごとに親友との別れに近づいていく。
「ぶっ潰れろ!」
灼熱のごとく熱くなる感覚を抱きながら、持ちうる全力で刃を脳の奥に差し込んだ。
隼人の気力と鷹の命。二つが混じり合い、怪物を焼き尽くす灼熱の炎と化したのだ。
「グオオオオオオオオオオオ!」
ヴリトラが空気を引き裂くようなけたたましい雄叫びが辺りに響き渡った。断末魔を上げた巨大な怪物はしばらくすると動かなくなった。
隼人の影焔がヴリトラの脳を焼き切ったのだ。その証拠に先ほどまで蛆のように沸いていた忌獣が発生していない。
「やったな」
「うん」
隼人は肩に乗せられていた鷹の手の温もりが消えていくのを感じた。横目で確認すると彼の体が白い粒子のようになっているのだ。
「鷹。おまえ」
「まあ、承知の上だったからね」
死に際とは思えない程、穏やかな笑顔を浮かべる鷹。隼人はその表情を見て、どうしようもなく切ない気持ちに駆られた。
しかし、その気持ちを封じ込めて、笑みを作った。
「またね。隼人」
「おう。またな。鷹」
別れを告げた瞬間、親友の体が一気に星屑のようになり、暁の空に消えて行った。
「終わったわね」
「ああ」
東の空から登る太陽を眺めながら、隼人は震える下唇を噛み締めた。
その周りには戦友である聖堂寺結巳、白峰揚羽、そして親友である鳳鷹が剣を振るっていた。
「グオオオオオオオオ!」
「どきなさい!」
結巳がツリ目をさらに鋭くしながら、忌獣を切り刻んだ。隼人達は細切れにあった忌獣を尻目に脳へと向かっていく。
そして、ついにヴリトラの頭頂部についた。
「聖堂寺と白峰は辺りの忌獣討伐を頼んだ」
「了解」
「任せて!」
二人の可憐な女性剣士達が胸を張って答えた。
「いくぞ!」
隼人は気力を振り絞って、黒炎を纏った刃をヴリトラの脳に突き刺した。
「オオオオオオオオ!」
刺さった瞬間、ヴリトラが天に轟く勢いの雄叫びを上げた。
「くっ!」
咆哮とともに吹き出た突風が隼人達を吹き飛ばしかねない強さで吹いたが、かろうじて堪えた。
「まだ足りない!」
鷹が隼人とともに聖滅具を支えながら、血を注いでいく。同時に黒炎が凄まじい勢いで燃え上がった。
それとともに隼人の体内も熱くなる。血液が沸騰しそうなほど、熱くなり熱湯が血管を循環しているような錯覚すら覚えた。
「はああああああ!」
怒号に似た叫び声を上げて、刀身を奥へと突き刺していく。
「うっ!」
鷹の苦しむような声が耳に入った。僅かに手を緩めようとしたが、それでは鷹の覚悟を無駄にしてしまう。
隼人は気持ちを殺して、さらに力を強めていく。
すると鷹の体が眩い光に包まれ始めた。鷹の体が限界を迎え始めたのだ。
「鷹!」
「止まるな隼人!」
鷹の言葉に背中を押されて、再び視線を脳に戻した。
「これで最後だ!」
鷹が燃え盛る刀身を強く握り、隼人の刃にさらに血を注いだ。さらに炎が音を立てて燃え上がった。
炎が燃え上がるごとに親友との別れに近づいていく。
「ぶっ潰れろ!」
灼熱のごとく熱くなる感覚を抱きながら、持ちうる全力で刃を脳の奥に差し込んだ。
隼人の気力と鷹の命。二つが混じり合い、怪物を焼き尽くす灼熱の炎と化したのだ。
「グオオオオオオオオオオオ!」
ヴリトラが空気を引き裂くようなけたたましい雄叫びが辺りに響き渡った。断末魔を上げた巨大な怪物はしばらくすると動かなくなった。
隼人の影焔がヴリトラの脳を焼き切ったのだ。その証拠に先ほどまで蛆のように沸いていた忌獣が発生していない。
「やったな」
「うん」
隼人は肩に乗せられていた鷹の手の温もりが消えていくのを感じた。横目で確認すると彼の体が白い粒子のようになっているのだ。
「鷹。おまえ」
「まあ、承知の上だったからね」
死に際とは思えない程、穏やかな笑顔を浮かべる鷹。隼人はその表情を見て、どうしようもなく切ない気持ちに駆られた。
しかし、その気持ちを封じ込めて、笑みを作った。
「またね。隼人」
「おう。またな。鷹」
別れを告げた瞬間、親友の体が一気に星屑のようになり、暁の空に消えて行った。
「終わったわね」
「ああ」
東の空から登る太陽を眺めながら、隼人は震える下唇を噛み締めた。
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