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「忠義」
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要の素早い攻撃をかわして、左胸に刃を通す事に成功した隼人。しかし、それと同時に違和感を覚えた。
手応えはない。正確には心臓をついたような感覚がないのだ。
次の瞬間、要が何事もなかったように動き始めた。隼人は後方に下がり、攻撃をかわした。
「なんだ?」
「どういう事? 確かに心臓部分のはず。なのになぜ」
隼人は目の前に予期せぬ事態に目を疑っていた。結巳の表情も彼と同じく困惑した様子だった。
「ふふ。驚くのも無理はありません」
要が胸元を曝け出した。隼人は驚愕した。左胸。心臓の部分にぽっかりと穴が空いているからだ。
「心臓がない?」
「これが私の能力ですよ。心臓が潰れない限り。私は死なない」
突然明らかになった要の能力。その効果は聞き、隼人は思わず、頰を引きつった。
「確かに厄介な能力だけどよ。あんたの再生能力がどれほど優れようが、不死だろうが黒炎の効力は受け続ける。相手が悪かったな」
先ほどから彼女は隼人の影焔を警戒している。おそらく不死身とはいえ、肉体へダメージが加わるのは避けられないらしい。
「当たらなければ良い話!」
要が小さな十字架を投げつけながら、距離を詰めてきた。隼人は避けながら、相手の動きを注視する。
「行かせない!氷結大地!」
結巳が要の足元を固めようとした。しかし十字架を引っ掛けるように使い、その鎖で空中を移動するという荒技を繰り広げたのだ。
隼人は不規則な動きを懸命に肉眼で追っていく。しかし、捕らえ切ることが出来ずに間合いに入る事を許してしまった。
「しまった!」
「ふん!」
「なっ!」
手元を叩かれて、刀が遥か、後方に飛ばされてしまった。しかし、一矢報いようと隼人は要にしがみ付いた。
「聖堂寺!」
「氷柱!」
「無駄ですよ!」
「がはっ!」
要が隼人を蹴り飛ばすと、結巳が生み出した氷の棘を回避した。しかし、隼人は一矢報いた気持ちを覚えていた。
「さて。まずはあなたです」
要が隼人に向かって来た時、表情が歪んだ。とっさに腰部分に手を回した。彼女の手には血で濡れた十字架があった。
「何故?」
「あんたにしがみ付いた時にくすねておいたのさ。蹴り飛ばされると同時に投げつけた。正直、博打だったよ。それがV因子じゃなかったら俺の異能は反応しないしな」
「ぐううう!」
体内の焼く漆黒の炎が苦しいのか、要が苦悶の表情を浮かべる。
「中々堪えるだろ? あんたのお仲間も経験済みだぜ」
隼人は懐からくすねた数本の十字架を取り出した。そして、要に黒炎を纏った十字架と投げつけながら、接近していく。
「くっ!」
要の動きが先ほどより露骨に落ちている。現に十字架を躱しきれず、いくつか刺さっている。
「氷柱」
結巳の声とともに氷の棘が要の背中や足を貫いた。おそらく隼人に気を取られて、反応できなかったのだ。
「百刃影焔!」
隼人は手を緩めることなく黒炎を灯した無数の十字架を突き刺した。
手応えはない。正確には心臓をついたような感覚がないのだ。
次の瞬間、要が何事もなかったように動き始めた。隼人は後方に下がり、攻撃をかわした。
「なんだ?」
「どういう事? 確かに心臓部分のはず。なのになぜ」
隼人は目の前に予期せぬ事態に目を疑っていた。結巳の表情も彼と同じく困惑した様子だった。
「ふふ。驚くのも無理はありません」
要が胸元を曝け出した。隼人は驚愕した。左胸。心臓の部分にぽっかりと穴が空いているからだ。
「心臓がない?」
「これが私の能力ですよ。心臓が潰れない限り。私は死なない」
突然明らかになった要の能力。その効果は聞き、隼人は思わず、頰を引きつった。
「確かに厄介な能力だけどよ。あんたの再生能力がどれほど優れようが、不死だろうが黒炎の効力は受け続ける。相手が悪かったな」
先ほどから彼女は隼人の影焔を警戒している。おそらく不死身とはいえ、肉体へダメージが加わるのは避けられないらしい。
「当たらなければ良い話!」
要が小さな十字架を投げつけながら、距離を詰めてきた。隼人は避けながら、相手の動きを注視する。
「行かせない!氷結大地!」
結巳が要の足元を固めようとした。しかし十字架を引っ掛けるように使い、その鎖で空中を移動するという荒技を繰り広げたのだ。
隼人は不規則な動きを懸命に肉眼で追っていく。しかし、捕らえ切ることが出来ずに間合いに入る事を許してしまった。
「しまった!」
「ふん!」
「なっ!」
手元を叩かれて、刀が遥か、後方に飛ばされてしまった。しかし、一矢報いようと隼人は要にしがみ付いた。
「聖堂寺!」
「氷柱!」
「無駄ですよ!」
「がはっ!」
要が隼人を蹴り飛ばすと、結巳が生み出した氷の棘を回避した。しかし、隼人は一矢報いた気持ちを覚えていた。
「さて。まずはあなたです」
要が隼人に向かって来た時、表情が歪んだ。とっさに腰部分に手を回した。彼女の手には血で濡れた十字架があった。
「何故?」
「あんたにしがみ付いた時にくすねておいたのさ。蹴り飛ばされると同時に投げつけた。正直、博打だったよ。それがV因子じゃなかったら俺の異能は反応しないしな」
「ぐううう!」
体内の焼く漆黒の炎が苦しいのか、要が苦悶の表情を浮かべる。
「中々堪えるだろ? あんたのお仲間も経験済みだぜ」
隼人は懐からくすねた数本の十字架を取り出した。そして、要に黒炎を纏った十字架と投げつけながら、接近していく。
「くっ!」
要の動きが先ほどより露骨に落ちている。現に十字架を躱しきれず、いくつか刺さっている。
「氷柱」
結巳の声とともに氷の棘が要の背中や足を貫いた。おそらく隼人に気を取られて、反応できなかったのだ。
「百刃影焔!」
隼人は手を緩めることなく黒炎を灯した無数の十字架を突き刺した。
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