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「血濡れの修道女」
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月夜の下、修道着姿の長髪の女が立っていた。黒いベールを頭に被っており、身長の二倍はある鎖で繋がれた巨大な十字架を持っていた。
身の回りから漂う異様な気配と重厚な威圧感。瞬時に幹部であると判断した。
「初めまして、松阪隼人。聖堂寺結巳。私は鳥籠の幹部の一人。要と申します」
「名前を知られている?」
「まさか敵さんに名前が知れているなんてな。幹部さんよ」
「私を即座に幹部だと看破するとは。ここまで幹部を討伐しただけあって、感覚も鋭いようですね」
彼女が抑揚のない声で言葉を吐いていく。隼人は自身の情報が筒抜けである事とともに自分の能力も察知されている可能性も頭に入れた。
「知り合って早々で申し訳ありませんが、消えていただきます」
要から殺意を感じた瞬間、巨大な十字架が勢いよく、飛んできた。隼人と結巳はすぐに躱して、一気に距離を詰める。
しかし、要も鎖を引くと、十字架が音を立てて戻っていく。そして、空いたもう片方の腕で懐から小型の十字架を投げ飛ばしてきた。
「くっ! 早い!」
飛んできた十字架を捌きながらも、すでに要の手に戻ってきた巨大な十字架の攻撃に備える。
「影焔!」
隼人は柄に力を込めると、刀身から赤黒い炎が音を立てて現れる。
「ほうっ、それが」
要が驚いたような反応を見せた後、鎖を振り回し始めた。十字架による攻撃を真面に受ければただではすまない。
しかし大振りな為、躱す事自体は彼にとってさほど難しいことではない。
「間合いに入って斬る!」
隼人は風のような速さで刀を横に振った。しかし要が体を仰け反らせて容易く躱した。何度も攻撃を加えるが、一向に当たらない。
「まあ、こんな程度の攻撃じゃあ当たらないわな。でも何だ。この異様な動き」
攻撃が当たらないことに関しては何ら驚く事はない。しかし、彼女に対してとてつもない違和感を覚えた。
「氷結斬
結巳が冷気を纏った剣戟を繰り出したが、一掠りもせずに躱されてしまった。
「そんなものですか? では今度はこちらから!」
要から殺気を感じた瞬間、彼女が凄まじい速度で駆け寄ってきた。
巨大な十字架がこちらに向かって飛んでくる。隼人と結巳は二手に分かれて反撃の準備をしようとした瞬間、真正面から十個以上の小さな十字架が飛んできたのだ。
「くっ!」
あまりに唐突の出来事に対処しきれず、数本が腕やほおを掠めた。傷口から滴り落ちる血を拭いながらも、要を睨み続ける。
しかし、身の毛がよだつような早い足でこちらに迫ってきた。
「遅いですよ!」
巨大な十字架が勢いとともに振り落とされた。隼人は間一髪、身を躱したがあまりの威力で直撃した地面は見事に抉れていた。
十字架は鎖と繋がれており、それを振り回して叩きつける。シンプルだが実に効果的な攻撃だ。
「ふっ!」
「うっ!」
突然、彼女の背が低くなり、隼人の腹部に強烈な痛みが走った。要が懐に蹴りを打ち込んできたのだ。
「いきなり、縮んだ? どうやって」
隼人はいきなりの出来事に戸惑いながらも、迫ってくる彼女に目を向けた。
「そうか。そういうことか」
「どうしたの?」
「あいつ。高速で関節の付け外しをしているんだ」
彼は彼女の異様な動きの正体に気がついた。要は驚異的な速度で関節を操っていたのだ。
「ご名答。ですが気づいたところで意味はありません。ここに死ぬのですから」
要の身からさらに濃厚な殺気を感じ取った。全身の鳥肌が立ったのを感じながら、隼人は結巳と共に次の攻撃に備えて、身構えた。
身の回りから漂う異様な気配と重厚な威圧感。瞬時に幹部であると判断した。
「初めまして、松阪隼人。聖堂寺結巳。私は鳥籠の幹部の一人。要と申します」
「名前を知られている?」
「まさか敵さんに名前が知れているなんてな。幹部さんよ」
「私を即座に幹部だと看破するとは。ここまで幹部を討伐しただけあって、感覚も鋭いようですね」
彼女が抑揚のない声で言葉を吐いていく。隼人は自身の情報が筒抜けである事とともに自分の能力も察知されている可能性も頭に入れた。
「知り合って早々で申し訳ありませんが、消えていただきます」
要から殺意を感じた瞬間、巨大な十字架が勢いよく、飛んできた。隼人と結巳はすぐに躱して、一気に距離を詰める。
しかし、要も鎖を引くと、十字架が音を立てて戻っていく。そして、空いたもう片方の腕で懐から小型の十字架を投げ飛ばしてきた。
「くっ! 早い!」
飛んできた十字架を捌きながらも、すでに要の手に戻ってきた巨大な十字架の攻撃に備える。
「影焔!」
隼人は柄に力を込めると、刀身から赤黒い炎が音を立てて現れる。
「ほうっ、それが」
要が驚いたような反応を見せた後、鎖を振り回し始めた。十字架による攻撃を真面に受ければただではすまない。
しかし大振りな為、躱す事自体は彼にとってさほど難しいことではない。
「間合いに入って斬る!」
隼人は風のような速さで刀を横に振った。しかし要が体を仰け反らせて容易く躱した。何度も攻撃を加えるが、一向に当たらない。
「まあ、こんな程度の攻撃じゃあ当たらないわな。でも何だ。この異様な動き」
攻撃が当たらないことに関しては何ら驚く事はない。しかし、彼女に対してとてつもない違和感を覚えた。
「氷結斬
結巳が冷気を纏った剣戟を繰り出したが、一掠りもせずに躱されてしまった。
「そんなものですか? では今度はこちらから!」
要から殺気を感じた瞬間、彼女が凄まじい速度で駆け寄ってきた。
巨大な十字架がこちらに向かって飛んでくる。隼人と結巳は二手に分かれて反撃の準備をしようとした瞬間、真正面から十個以上の小さな十字架が飛んできたのだ。
「くっ!」
あまりに唐突の出来事に対処しきれず、数本が腕やほおを掠めた。傷口から滴り落ちる血を拭いながらも、要を睨み続ける。
しかし、身の毛がよだつような早い足でこちらに迫ってきた。
「遅いですよ!」
巨大な十字架が勢いとともに振り落とされた。隼人は間一髪、身を躱したがあまりの威力で直撃した地面は見事に抉れていた。
十字架は鎖と繋がれており、それを振り回して叩きつける。シンプルだが実に効果的な攻撃だ。
「ふっ!」
「うっ!」
突然、彼女の背が低くなり、隼人の腹部に強烈な痛みが走った。要が懐に蹴りを打ち込んできたのだ。
「いきなり、縮んだ? どうやって」
隼人はいきなりの出来事に戸惑いながらも、迫ってくる彼女に目を向けた。
「そうか。そういうことか」
「どうしたの?」
「あいつ。高速で関節の付け外しをしているんだ」
彼は彼女の異様な動きの正体に気がついた。要は驚異的な速度で関節を操っていたのだ。
「ご名答。ですが気づいたところで意味はありません。ここに死ぬのですから」
要の身からさらに濃厚な殺気を感じ取った。全身の鳥肌が立ったのを感じながら、隼人は結巳と共に次の攻撃に備えて、身構えた。
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