「黒炎の隼」

蛙鮫

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「嵐の前触れ」

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 厳かな雰囲気が漂う忌獣対策本部の大広間。首長である聖堂寺光が真剣な趣で腰掛けている。

 広間には幹部や戦闘員達が座っており、静けさが漂っていた。

「これより忌獣対策本部作戦会議を始めます」

「はい!」
 光の号令とともに職員達が一斉に返事をした。

「先日。調査隊により鳥籠のアジトが見つかり、今までものより巨大で忌獣や構成員も数もかなりものとの情報です。これらの情報からおそらくここが鳥籠の本部である可能性が高いです」
 光の言葉に周囲の職員達が動揺し始める。
 
「この作戦は我々、対策本部の矜持に関わる重大なもの。全勢力を駆使してこの長きに渡る戦いを終わらましょう」

「おー!」
 部屋中から一斉に職員達の叫び声が上がった。全ての因縁に終止符を打つ。そのために生きてきた彼らの魂の叫び。

 そんな彼らを尻目に光は静かにほくそ笑んでいた。


 会議を終えた後、幹部の一人である北原ソラシノは松阪隼人の祖父。松坂シライと連絡を取っていた。

「一週間後、首長は鳥籠の本部に総攻撃を仕掛けるようです」

「そうか。なら我々も早めに動く必要があるね」
 液晶画面の向こう側から重さが感じる声が届いた。

「それと行方不明だったお孫さんと聖堂寺の令嬢が今、対策本部の施設に収容されているそうです」

「無事なのか?」

「おそらくは」

「そうか」
 シライの方から深く息を吐く音が聞こえた。おそらく孫の生存が確認できた事に安堵しているのだろう。

「それで計画はいつ決行しますか?」

「作戦前日。警備が手薄になったところで二人を救出する」
 シライの宣言にソラシノは同意した。光にこれ以上の暴虐を繰り返させるわけにはいかない。

 何より虐殺組織に貢献していては一人娘にメンツが立たない。彼の頭の中にあったのはその思考だった。

 シライの携帯を着ると、すぐさま別の人間から着信が来た。

「一体、誰だ?」
 液晶画面に目を向けて、相手の名前を確認した。聖堂寺光だった。


 ソラシノとの電話を終えた後、シライは近くの椅子に腰を下ろした。すると目の前にコーヒーが差し出された。

「お疲れ様です」

「ありがとうございます」

 星野奏。隼人と結巳のクラスメイトの担当教師だ。現対策本部の方針に懐疑的になっていた時、松阪シライから声がかかって彼と手を組むことになったのだ。

「なぜ、私を誘ってくれたんですか?」

「貴方は隼人と結巳様の担任。この中では二人とは特に接する機会が多かったからです」

「それが私に声をかけてくださった理由ですか?」

「あとは貴女が聖堂寺家の被害者だからですよ」

「ど、どういう事ですか?」

「貴方ですよね。北原君の実の母親は?」
 シライの言葉が奏の胸に食い込むように突き刺さった。

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