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「忍び寄る刃」
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人混みがごった返すハンプティ・ダンプティ。隼人は結巳とともに辺りを見渡していた。
「きゃっ!」
「すみません。大丈夫ですか?」
突然、目の前に出て来た少女と隼人がぶつかってしまった。毛先がピンクと緑色をした黒髪ボブヘアーという中々、奇抜な髪型に隼人は少し驚いた。
少女が立ち上がると隼人をゆっくりと見つめる。
「お兄さん。目つき怖いけどかっこいいね。この後予定ある?」
「い、いや、先約があって」
「えー、マジでー いつ終わるの?」
隼人はぎこちない笑みを返すと、背後に突き刺さるような視線を感じた。視線の方に目を向けると白髪の少女が腕を組んで、人目もはばからず仁王立ちしていた。
「わっ、悪い! 行くわ!」
隼人は少女の誘いを振り切り、目つきが異様に険しい結巳の元に向かった。
「すっ、すまん。声をかけられてな」
「別に」
結巳が冷めたような目を浮かべながら、踵を返した。
「ハプニングだ」
「何も言ってないわよ」
結巳の待ち針のようにチクリとする小言を耳にしながら、隼人はスタッフルームの前に立っている黒服に目を向けた。
よく見ると腰元に鍵をぶら下げている。
「あれだな」
「でもどうやって取るの?」
「俺に考えがある。お前は扉の前で待っていろ」
結巳にそう告げると隼人は黒服の元へと駆け寄って行く。
「すみません。向こうで乱闘が起こっていて止めてもらいたんですよ」
「どちらですか?」
「こっちです」
隼人は黒服を誘導して行く。無論、乱闘など起こっていない。人混みを避けた場所に行くと隼人は立ち止まった。
「喧嘩なんてどこにもなっ!」
隼人は息つく間のない速さで黒服の鳩尾に一撃を入れた。白目をむいて膝から崩れていく黒服をゆっくりと壁に寝かしつけて鍵をとった。
「すみません。お借ります」
隼人は一礼すると急ぎ足で結巳の元に向かった。
「どうやって手にいれたの?」
「殴った」
「乱暴よ」
「仕方なかった」
結巳のため息を耳にしながらは扉を開けた。生唾とともに緊張感を飲み込んで、結巳とともにゆっくりと進んで行く。
緊張のせいか心拍数が上がっているのが手に取るように分かった。
「止まれ」
誰かの声が聞こえたので、結巳に止まるように促した。奥の部屋から声が聞こえる。
ゆっくりと部屋の中に目を向ける。複数の黒服の男たちとスタッフが何かをダンボールの中に詰めていた。おそらくALICEだ。
「あれは」
隼人は別の方を見た時、目を疑った。口をガムテームで拘束された人が数人いたのだ。しかし、様子がおかしい。目が虚ろなのだ。そしてよく見るとガムテームの端から泡が漏れ出ていた。
「ALICE中毒者か」
隼人はここまでして忌獣や組織の巨大を企む相手に憤りを覚えた。薬漬けにされて、理性や人間としての尊厳を破壊されたのちに怪物へと変わるのだ。
彼の中で任務完遂の意志が一層に強くなった。
隼人が合図を出した瞬間、結巳と一斉に部屋に乗り込んだ。隼人達の侵入に黒服達も目を丸くしていた。
「手を上げろ! 忌獣対策本部の者だ。武器を捨てて、両手を後ろに回せ!」
「ふざけんな! 商売の邪魔されてたまるかよ!」
スタッフの一人が拳銃を取り出して、引き金を引いた。鉛玉は風を切りながら、隼人に迫った。
隼人は弾丸を避けてすぐさまその場にいたスタッフと黒服の男をすぐさま拘束した。
「こちら松阪。目的のものと思わしき薬物を発見しました」
「こちら庭島。了解。俺もそちらに向かう。そのうちに検査を頼む」
「はい」
部屋ダンボールを開けると、四角の薄い袋に黒い粉末が敷き詰められていた。
「よし取り掛かるぞ」
予め渡されていた検査キッドを取り出して、実物が確かめる。黒い粉末に液体を一滴垂らしてからリトマス試験紙をつけると、陽性なら青、陰性なら濡れるだけになる。水滴がリトマス試験紙に落ちた。
水分をじわじわと紙質が変わっていき、一同の間に異様な緊張感が走る。
「間違いない。実物だな」
『ALICE』を目にした時、氷華の顔色が変わった。冷静沈着な彼女が怒りのせいか顔を震わせていた。
「他にもこれが大量に」
隼人は部屋を見渡した瞬間、背中にとてつもない殺気を感じた。結巳の方に目を向けると彼女も感じたのか表情が硬くなっていた。
「おやおや、お客さん。いけませんね。ここは関係者院外立ち入り禁止なんですよ」
後方から声が聞こえてゆっくりと振り返るとそこには黒いローブ姿の若い男が立っていた。緊張感のせいか、心臓の鼓動が速くなっていく。
「もっとも今回の来客は特別っぽいな。なあ、対策本部のパシリども」
男が隼人を睨みつけると懐から刃渡り二メートルはありそうなほど、巨大な大鎌を取り出した。
隼人の全身に鳥肌が立ったと同時に大鎌を振りかざしてきた。隼人と結巳は攻撃を交わして、窓ガラスを割って建物の外に移動する。
「おいおい。修繕費用は高えんだよ。大人しくしてくれ」
「そんなもん。あんたらが重ねてきた悪行に比べたら安いもんだろうが」
隼人は男を煽りながらも異様な緊張感を胸に抱いていた。本能が危険信号を発しているのだ。
「俺の名前は鎌鼬。鳥籠の幹部の一人だ」
隼人は驚愕した。幹部がいるという情報はなかったはずだからである。
「マジかよ」
額から冷や汗が流れ落ちる。
「きゃっ!」
「すみません。大丈夫ですか?」
突然、目の前に出て来た少女と隼人がぶつかってしまった。毛先がピンクと緑色をした黒髪ボブヘアーという中々、奇抜な髪型に隼人は少し驚いた。
少女が立ち上がると隼人をゆっくりと見つめる。
「お兄さん。目つき怖いけどかっこいいね。この後予定ある?」
「い、いや、先約があって」
「えー、マジでー いつ終わるの?」
隼人はぎこちない笑みを返すと、背後に突き刺さるような視線を感じた。視線の方に目を向けると白髪の少女が腕を組んで、人目もはばからず仁王立ちしていた。
「わっ、悪い! 行くわ!」
隼人は少女の誘いを振り切り、目つきが異様に険しい結巳の元に向かった。
「すっ、すまん。声をかけられてな」
「別に」
結巳が冷めたような目を浮かべながら、踵を返した。
「ハプニングだ」
「何も言ってないわよ」
結巳の待ち針のようにチクリとする小言を耳にしながら、隼人はスタッフルームの前に立っている黒服に目を向けた。
よく見ると腰元に鍵をぶら下げている。
「あれだな」
「でもどうやって取るの?」
「俺に考えがある。お前は扉の前で待っていろ」
結巳にそう告げると隼人は黒服の元へと駆け寄って行く。
「すみません。向こうで乱闘が起こっていて止めてもらいたんですよ」
「どちらですか?」
「こっちです」
隼人は黒服を誘導して行く。無論、乱闘など起こっていない。人混みを避けた場所に行くと隼人は立ち止まった。
「喧嘩なんてどこにもなっ!」
隼人は息つく間のない速さで黒服の鳩尾に一撃を入れた。白目をむいて膝から崩れていく黒服をゆっくりと壁に寝かしつけて鍵をとった。
「すみません。お借ります」
隼人は一礼すると急ぎ足で結巳の元に向かった。
「どうやって手にいれたの?」
「殴った」
「乱暴よ」
「仕方なかった」
結巳のため息を耳にしながらは扉を開けた。生唾とともに緊張感を飲み込んで、結巳とともにゆっくりと進んで行く。
緊張のせいか心拍数が上がっているのが手に取るように分かった。
「止まれ」
誰かの声が聞こえたので、結巳に止まるように促した。奥の部屋から声が聞こえる。
ゆっくりと部屋の中に目を向ける。複数の黒服の男たちとスタッフが何かをダンボールの中に詰めていた。おそらくALICEだ。
「あれは」
隼人は別の方を見た時、目を疑った。口をガムテームで拘束された人が数人いたのだ。しかし、様子がおかしい。目が虚ろなのだ。そしてよく見るとガムテームの端から泡が漏れ出ていた。
「ALICE中毒者か」
隼人はここまでして忌獣や組織の巨大を企む相手に憤りを覚えた。薬漬けにされて、理性や人間としての尊厳を破壊されたのちに怪物へと変わるのだ。
彼の中で任務完遂の意志が一層に強くなった。
隼人が合図を出した瞬間、結巳と一斉に部屋に乗り込んだ。隼人達の侵入に黒服達も目を丸くしていた。
「手を上げろ! 忌獣対策本部の者だ。武器を捨てて、両手を後ろに回せ!」
「ふざけんな! 商売の邪魔されてたまるかよ!」
スタッフの一人が拳銃を取り出して、引き金を引いた。鉛玉は風を切りながら、隼人に迫った。
隼人は弾丸を避けてすぐさまその場にいたスタッフと黒服の男をすぐさま拘束した。
「こちら松阪。目的のものと思わしき薬物を発見しました」
「こちら庭島。了解。俺もそちらに向かう。そのうちに検査を頼む」
「はい」
部屋ダンボールを開けると、四角の薄い袋に黒い粉末が敷き詰められていた。
「よし取り掛かるぞ」
予め渡されていた検査キッドを取り出して、実物が確かめる。黒い粉末に液体を一滴垂らしてからリトマス試験紙をつけると、陽性なら青、陰性なら濡れるだけになる。水滴がリトマス試験紙に落ちた。
水分をじわじわと紙質が変わっていき、一同の間に異様な緊張感が走る。
「間違いない。実物だな」
『ALICE』を目にした時、氷華の顔色が変わった。冷静沈着な彼女が怒りのせいか顔を震わせていた。
「他にもこれが大量に」
隼人は部屋を見渡した瞬間、背中にとてつもない殺気を感じた。結巳の方に目を向けると彼女も感じたのか表情が硬くなっていた。
「おやおや、お客さん。いけませんね。ここは関係者院外立ち入り禁止なんですよ」
後方から声が聞こえてゆっくりと振り返るとそこには黒いローブ姿の若い男が立っていた。緊張感のせいか、心臓の鼓動が速くなっていく。
「もっとも今回の来客は特別っぽいな。なあ、対策本部のパシリども」
男が隼人を睨みつけると懐から刃渡り二メートルはありそうなほど、巨大な大鎌を取り出した。
隼人の全身に鳥肌が立ったと同時に大鎌を振りかざしてきた。隼人と結巳は攻撃を交わして、窓ガラスを割って建物の外に移動する。
「おいおい。修繕費用は高えんだよ。大人しくしてくれ」
「そんなもん。あんたらが重ねてきた悪行に比べたら安いもんだろうが」
隼人は男を煽りながらも異様な緊張感を胸に抱いていた。本能が危険信号を発しているのだ。
「俺の名前は鎌鼬。鳥籠の幹部の一人だ」
隼人は驚愕した。幹部がいるという情報はなかったはずだからである。
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額から冷や汗が流れ落ちる。
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