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テホム街道

赤い絨毯①

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 アストレアは海に面した村だった。村と外部を隔てるのはあってもなくても大差ない、ちょうど歩道と車道程度の段差のみだった。村の東西は崖に挟まれ、北の方向に出入り口、南の方向はそのまま砂浜に向かって伸びている。ストーリーが進むと海から外に出られるかは定かではないが、白い砂浜と合成のような美しく青い海が印象的な村だった。村人はクズしかいないが。

「さて、この世界ゲームのおおよそのノリは理解してもらえたと思うのですが」
「最悪なノリだ……」
「ええ!僕は死亡シーン集が大好きなのでそりゃもう!ありとあらゆる所に初見殺しを仕込んであります!例えばこのアストレアから一歩踏み出したところの芝生ですが」

 村の出入り口には3人が横に広がって歩ける程度の幅の、やや広く小さな傾斜の上り坂が2メートルほどあり、そのわざわざ通る必要のない道には赤い芝生が生えていた。

「実はこれ、植物じゃなくて触手なんですよ。なんで僕がこれを貴方に教えたかわかります~?」
「…………ま、回り道をするよう親切心で」
「ご冗談を!」

 どん、と背中を押されるままに触手の中へ一歩踏み出す。初期装備かわのくつすら買っていない足の裏の感触は確かに草花のがさがさとしたそれではなく、うっかり何か生物を踏んでしまったような、後味の悪い感触だった。足元を見ると27センチの足を縁取るように、周りには無残な触手の残骸が散っている。

「と、まあ、これ自体は特に期待したような事は起こらないクソ雑魚の触手なんですけど~、この輝かしい第一歩死亡フラグによって、僕ら主人公の冒険は始まるわけです!村人はこのどうでもいい小道を赤絨毯レッドカーペットと呼んでいるとかいないとか?」

 横道の何もいない段差を登りながらラブリエルが笑う。そっと一歩を戻ったのち、2人についていくようにして段差から村を出た。またこの村に用があるのかは知らないが、戻ってきたら魔漢マカラらしく焼くのもいいかもしれない。というか、そういうシナリオも用意していそうなのがこのゲームの嫌なところだ。
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