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チュートリアル
遍在の森②
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「ぶっちゃけそこら辺のあれそれとでもいいんですけど、さすがの僕も……まあ、異世界転生初心者にいきなりハードプレイはさせませんよ?ではでは……登録IDはH1376──召喚!」
簡素な召喚陣が地面に輝き、小規模な光の柱から現れたのはただのおっさんであった。いわゆる山賊である。小汚いヒゲ面に、かろうじて服の体を保っている程度の布を纏っている。現代服ではない分まだ『山賊』という個性はあるものの、どこにでもいるおっさんであった。……手元に大きな刃物を握り、怒張したイチモツが丸出しでなければ。
「ちなみに一応まだチュートリアル中なので周りのモンスターは近寄ってきませんし、この山賊も清潔な山賊ですけどぉ……チュートリアル後はもたもたしてると別のモンスターにも襲われますからね?」
「清潔な山賊……」
「あと……貴方もう少しこう、何かないんですか?」
「ご、ごめんなさい……?」
条件反射的に謝罪の言葉を唱える。天使だからか、そもそもそういう性格だからか(恐らくは後者だろう)妙に威圧的な物言いをするタイプに何か責められた時は、大抵こう答えるしかない。
「本当に何も考えていないんですね。そうじゃなくて、なんでこんな事しないといけないんだとか、もうやだとか、ふざけるなとか……イエスマンにもほどがありません?」
抵抗の意思を摘んでおいて何を言っているんだろうか、その自覚すらないのだろうか、と多少不愉快な気持ちが、もちろんあった。しかしそれを口にすれば、恐らくはまた痛め付けられるだろう。最後まで殴り、殺すか殺されるかの気概で抵抗出来ない人間は、ただただ謝るしかないのだ。元の世界でも、恐らくはここでも。
「……特には。あー…むしろ、チュートリアルが用意してもらっている分、その、親切だなと思うよ」
返答を間違えないように、慎重に。精神が軋む音は、聞こえないフリをする。
それでも、この音が嫌でも耳に入るようになっていただけマシな方だ。心の中で嗤う。聞こえているからこそ、『その気になれば助けを求められる』なんて希望にズルズルとしがみついていつまでも生きていたのだろう。まあ結局事故で死んだわけなのだけど。
「ふぅん……人間っていうのは惨めな生き物だね。じゃあ、説明に戻ろうか」
ラブリエルはちらと黒服──ヒルトの方を見ながら言った。
簡素な召喚陣が地面に輝き、小規模な光の柱から現れたのはただのおっさんであった。いわゆる山賊である。小汚いヒゲ面に、かろうじて服の体を保っている程度の布を纏っている。現代服ではない分まだ『山賊』という個性はあるものの、どこにでもいるおっさんであった。……手元に大きな刃物を握り、怒張したイチモツが丸出しでなければ。
「ちなみに一応まだチュートリアル中なので周りのモンスターは近寄ってきませんし、この山賊も清潔な山賊ですけどぉ……チュートリアル後はもたもたしてると別のモンスターにも襲われますからね?」
「清潔な山賊……」
「あと……貴方もう少しこう、何かないんですか?」
「ご、ごめんなさい……?」
条件反射的に謝罪の言葉を唱える。天使だからか、そもそもそういう性格だからか(恐らくは後者だろう)妙に威圧的な物言いをするタイプに何か責められた時は、大抵こう答えるしかない。
「本当に何も考えていないんですね。そうじゃなくて、なんでこんな事しないといけないんだとか、もうやだとか、ふざけるなとか……イエスマンにもほどがありません?」
抵抗の意思を摘んでおいて何を言っているんだろうか、その自覚すらないのだろうか、と多少不愉快な気持ちが、もちろんあった。しかしそれを口にすれば、恐らくはまた痛め付けられるだろう。最後まで殴り、殺すか殺されるかの気概で抵抗出来ない人間は、ただただ謝るしかないのだ。元の世界でも、恐らくはここでも。
「……特には。あー…むしろ、チュートリアルが用意してもらっている分、その、親切だなと思うよ」
返答を間違えないように、慎重に。精神が軋む音は、聞こえないフリをする。
それでも、この音が嫌でも耳に入るようになっていただけマシな方だ。心の中で嗤う。聞こえているからこそ、『その気になれば助けを求められる』なんて希望にズルズルとしがみついていつまでも生きていたのだろう。まあ結局事故で死んだわけなのだけど。
「ふぅん……人間っていうのは惨めな生き物だね。じゃあ、説明に戻ろうか」
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