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オープニング
研修天使ラブリエル③
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紅葉おろしを見た仲だし、と裸である事は気にならなくなってきた。改めて辺りを見回すと、静かな神殿の四方を囲むように流れている水は時折、何か光るカケラのようなものが混じっている。出入り口はないが、目の前の二人なら転移するなり何なりでどうにかなるのだろう。見上げると荘厳な、しかしどこかアニメ調の絵柄の、青を基調としたステンドグラスから光が降り注いでいる。よくよく見るとそのステンドグラスにはラブリエルらしき天使と黒服が描かれているようだった。
「……ということなんですけど……貴方聞いてました!?きょろきょろして……とにかく、貴方はこれから転生した先で暮らしてもらう事になりますが、それだけでは暇でしょうから、ある事をすればポイントを差し上げます!人間、ポイントってお好きなんですよね?」
「いや別に……」
「……」
一瞬の間があった。はは、と誤魔化すように笑うが、長年の経験が物語っている。何かの地雷に触れたのだと。あるいは──沸点を超えたと。そういえば親も、お前は要領が悪い、空気が読めないとよく笑っていたな。そんな事を思い出す。笑いながら話した直後には、大抵殴られていた訳だが。
ひゅん、と風を切る音が聞こえた。瞬間、首の違和感と微かな痛みが走る。何が起こったのか確かめようとするも、首から下の感覚が失われ腕が動かない。ぐらりと視界が前に傾き、先に地面に倒れていく身体が見えた。
「あのさあ」
首が遅れて落ちる。己のもも肉がその衝撃を和らげ、そこから足を伝って床に転がり落ちる。視界が急激に回転しくらくらするなかで、先程までとはまるで違う、冷たい声でラブリエルが近付いてきた。
「せっかくこちらはサービスで可愛~くしてあげたわけなんだけど、なぁんかナメられるし、ぶっちゃけちゃうね。正直、人間如きに土下座するほど安い頭じゃないんだよね。本来は」
「ラブリエル様」
「お前も生首になりたいか?」
「いえ、……どうぞ続きを」
顔面を蹴飛ばされ水の中に落ちる。先ほどまでの澄み切った水はインクのように黒くなっていた。生前のような痛みはないものの、とにかく視界が定まらないのと、鼻を抜けるインクに咽せていると、ラブリエルは髪を掴み、その場に放り投げ、さらにもう一度蹴り飛ばした。
「ゔぇ゙……ぅ゙……ごめんなさい……」
こういうときはとりあえず謝るしかない。それだけは確かだ。何に怒られているかわかっていてもいなくても、殴られてもそうでなくても、謝るか黙る以外は許されていないのだ。今回に限っては、恐らく悪いのはこちらなので、耳を通り抜けた情報を必死にかき集め謝罪の言葉を作り上げる。
「……ということなんですけど……貴方聞いてました!?きょろきょろして……とにかく、貴方はこれから転生した先で暮らしてもらう事になりますが、それだけでは暇でしょうから、ある事をすればポイントを差し上げます!人間、ポイントってお好きなんですよね?」
「いや別に……」
「……」
一瞬の間があった。はは、と誤魔化すように笑うが、長年の経験が物語っている。何かの地雷に触れたのだと。あるいは──沸点を超えたと。そういえば親も、お前は要領が悪い、空気が読めないとよく笑っていたな。そんな事を思い出す。笑いながら話した直後には、大抵殴られていた訳だが。
ひゅん、と風を切る音が聞こえた。瞬間、首の違和感と微かな痛みが走る。何が起こったのか確かめようとするも、首から下の感覚が失われ腕が動かない。ぐらりと視界が前に傾き、先に地面に倒れていく身体が見えた。
「あのさあ」
首が遅れて落ちる。己のもも肉がその衝撃を和らげ、そこから足を伝って床に転がり落ちる。視界が急激に回転しくらくらするなかで、先程までとはまるで違う、冷たい声でラブリエルが近付いてきた。
「せっかくこちらはサービスで可愛~くしてあげたわけなんだけど、なぁんかナメられるし、ぶっちゃけちゃうね。正直、人間如きに土下座するほど安い頭じゃないんだよね。本来は」
「ラブリエル様」
「お前も生首になりたいか?」
「いえ、……どうぞ続きを」
顔面を蹴飛ばされ水の中に落ちる。先ほどまでの澄み切った水はインクのように黒くなっていた。生前のような痛みはないものの、とにかく視界が定まらないのと、鼻を抜けるインクに咽せていると、ラブリエルは髪を掴み、その場に放り投げ、さらにもう一度蹴り飛ばした。
「ゔぇ゙……ぅ゙……ごめんなさい……」
こういうときはとりあえず謝るしかない。それだけは確かだ。何に怒られているかわかっていてもいなくても、殴られてもそうでなくても、謝るか黙る以外は許されていないのだ。今回に限っては、恐らく悪いのはこちらなので、耳を通り抜けた情報を必死にかき集め謝罪の言葉を作り上げる。
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