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あにの狂い愛

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side 衛




鳳 衛(おおとり まもる)、16歳。



僕は一つ年下の義理の妹にベタ惚れしている。



色素の薄い白い肌、赤くて細い綺麗な髪。



小さくて形の良い輪郭とすっきり伸びた首に、艶めかしい鎖骨と肩。



小さめだけど形の良い胸と細い腰。



細くてぷにぷにしてそうな腕と力強く握ると折れてしまいそうな手首。



細くて小さな手指に、桜色の綺麗な爪。



右の手の裏のほくろまで愛くるしくいのが、僕のツボだ。




いつか、薄桃色の華南の唇を始め彼女の全てを自分のモノに出来ないか、日夜悶々とした日々を過ごしている。




壁一枚隔てて暮らす義理の妹の華南は、この世に生を受けて14年して初めて出会った、僕のいもうとだけど初恋の人。






「おにいちゃん、いつもお勉強教えてくれてありがとう」




家のリビングで、華南と二人きり。

本当は勉強よりも、僕がどれだけ華南の事を好きか、うっかりしゃべってしまったらもう、華南が裸足で逃げ出したくなる様な愛の言葉まで囁いて口説いて色々してしまいたいけれど、今は宿題の途中なので却下。




「おにいちゃん、お風呂どうぞ。いつも、私が先に入ってごめんね」




何言ってるんですか。

華南が後に入ったら、湯上がり美人の華南の姿を僕が眺めながらお風呂に入れないでしょう。



華南が先で良いんですよ。



時々、お風呂上がりで火照ったうなじに欲情しそうな自分が怖いですが。




「お兄ちゃん、明日からおんなじ学校だね。私、今から着替えて来るから。新しい制服見て」





中学の制服も勿論とってもよく似合ってましたけど、うちの高校の制服を着た華南も一層可愛いだろうな。





理性って、どっかに追加で売ってないだろうか。





愛しい華南。




駄目だ。




僕の高校の制服を着た華南に、平静を保つ自信がない。



そっと、ソファーを立って階段に向かおうとしたが、父に呼び止められてしまった。




「衛、華南ちゃんを待ってあげなさい」



「貴方、良いのよ。衛君が気乗りしないのに無理させちゃダメ。ごめんね」




いゃ、謝るのは寧ろ此方だ。



僕だって本当は華南の制服姿を一刻も早く見たいのだから。



「いえ、すみません。明日は在校生代表の祝辞が控えているので先に失礼します」



「そうだったね。宜しくな、衛」

「分かったますよ。 学園……」「家ではお父さんだろ?」




そうでした。




「では、おやすみなさい。おとうさん、おかあさん」

まぁ、それにしてもどうした事か。



せっかく華南が一日早く僕の為に、制服に着替えてくれているものを、直視した瞬間、押し倒しそうで尻尾を巻いて部屋に戻ってしまうなんて。



それに、部屋に戻ってからもう結構時間が経っているし、もう部屋に戻っている事だろう。




あぁ、華南の制服姿を今夜一目見ておきたかった。



ふと、ベランダづたいに繋がっている華南の部屋のベランダに視線を向けて、華南を想った。




『可愛い、華南』



心の中でそう呟いて感傷に浸る僕の視線が、レースのカーテンの隙間からベランダに佇む寝間着姿の華南を捉える。



ほら、もう制服を着替えて寝間着を……。




(ん?)




(はぁあああああ~!)




一瞬、僕は自分の目を疑ったが、目を擦り、ちょっと強めに本棚の角に頭をぶつけて平静を保ってみようとしたが、もう頭を打ち付けた次の瞬間には、ベランダの窓のカギに手を掛けていた。




「こんな時間に何をしてるんですか。 風邪を引きますよ」




ベランダの鍵を開け、飛び出してすぐ声をかけた僕に、華南は驚きの声を上げた。




「おにいちゃん!!」




怯えた様に肩をビクッと振るわせる華南が愛しくて、僕は華南の肩を掴んでいた。




「ごめんなさい」



「風邪を引いたらどうするんですか?」




華南は自分の部屋に重心を向け歩み出すから、僕は思わずその場で彼女を抱き締めてしまった。




「おにいちゃん?」




見下ろす華南の表情に戸惑いが浮かぶ。




「こんな冷えた身体でそのまま戻ったら、風邪を引くでしょう?」

「……そんな事ないよ。子供扱い、っておにいちゃんってば!」




華南の言葉を遮る様に華南を僕の部屋に押しやった。




「華南、座って」



「え?」



「良いから、これを使って下さい」



僕はアルパカの毛の様な白のもこもこした肩掛けを華南の肩にかけて暖房のスイッチを入れた。




「良いよ。おにいちゃん」



「だめ」



僕の言葉に、華南はしょげた顔をしてベルベットのカーテンとお揃いのベッドカバーの上に腰を下ろした。


「どうして外なんて眺めてたんですか?」



「……。理由なんて別にないよ」



「僕達、もう一緒に暮らし始めて2年になりますが、夜星を眺めにベランダに出た事なんてないはずですが?」




僕の詰問に、華南は口を尖らせた。




「……気晴らしになるかなと思っただけ」



「何の気晴らしですか?」



「おにいちゃんが私が制服着替え終わるの……待ってくれなかった、その気晴らし……」




僕だって見たかった。



けれど、そんな事を根に持って、あんな憂いのある背中で、ベランダに立ってたなんて。




「……それはすみませんでした」




華南を見つめていた視線を反らし、僕は思わず顔を背けていた。



華南が可愛くて仕方ない。




妹だから、好きな訳じゃない。



本当は妹が出来る事に、拘りがあったなんて嘘だ。



僕はハジメから、華南の事が好きだった。




『ずっと妹が欲しかった』なんて、普段滅多に嘘を付かない僕が珍しく付いた体の良い嘘の言い訳なのに。





「……なんで、謝るの? そんなの、明日まで待てば良いでしょう? ってさ」



「思いませんよ。思う訳ない。華南は、僕にも見せたかったんでしょ?」



「そだけどさ……」



「華南。先に部屋に戻ってすみませんでした」




華南が好きで堪らない。



毎日一緒に暮らしているだけで、気が狂いそうな位幸せだ。



ただ、明日から僕の通う学園に華南が通う事が不安な事を除けば万事。






ベランダで華南の肩を抱いた時、華南の肩は、夜風に冷え切っていた。



僕は、ブランケットを掛けて、暖房を入れるだけじゃたらず、いっそ抱き締めて温めたい勢いだった。



でも、やり過ぎて嫌われたら嫌だ。



幸い半ば強引だったにしろ、華南は大人しく僕の部屋に来てくれた。



ここは慎重になるべきだろう。





「ごめん、おにいちゃん。びっくりさせて」






いや、どちらかと言うと飛び出して来た僕に華南がびっくりしている様ですが、この際です。





「良いんですよ。華南、今夜は少し話しましょうか?」



「おにいちゃん?」




僕はソファーに置いていたブランケットを手に取り、華南の肩にかける振りをしつつ、ベッドに座らせようと試みた。




「兎に角身体を温めた方が良い。明日は入学式なのに、風邪を引いたらどうするんです?」



「うん」




華南は僕の思惑通り、華南は僕のベッドで微睡む。



あぁ、僕の部屋に、華南がいる。



それも、こんな夜更けに。





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