地味で根暗で残念ですが、直視できないくらいイケメンで高スペックな憧れの先輩に溺愛されそうなので、全力で逃げています。

第4章 裏切りと脅迫と忘却

閑話休題 椛島 一也の『超えてぱおん』 後編＜４７３＞

季節は、秋の半ばだった。



難航していた返済手続きも無事終了し、告訴取り下げを受け、検察側から起訴猶予処分が決まった。



当初、新聞沙汰になった事で拘留を受け、終始協力的且つ反省の態度で臨み、短期で釈放された後。



事件から、３か月が経った頃、忘れた頃に債権者から告訴され、また拘留されての二度目の釈放だった。





釈放の日、麗と俺でソウを迎えに行った。



ソウの両親は、ソウは自分たちに会いたくないはずだからと、俺と麗に頭を下げた。




「麗？」




保釈手続きの際に渡した着替えを着て、しっかりと身なりを整えて出てきたソウは、少し痩せていたが、晴れがましい顔をしていた。



そして、ただ、麗の姿にまず驚いていた。




「やっほー？　元気そうじゃん。　何やってんのよ、バーカ」



「うるせぇ。　バカやったんだよ。　ブース」




麗がソウと同性に見える位格好良かった。



起訴猶予処分中だから、本当に無事とは言えないにしろ、今はソウの釈放を手放しに喜びたかったから。



保釈金は、竹中のおっさんが用意した一千万がなかったら、厳しかった。



不起訴になれば、保釈金は戻ってくるから、後は結果次第にしろ。




「迷惑かけた」



「あんたんとこのトマトないと、雅也の店でおいしいブラッディメアリが飲めなくなるんだけど？」



「ちゃんと親父に、トマトとパクチーだけは作って卸せって言ってっから、供給してんだろ？」



「粉骨逞しい商売根性だね。　どうするの、これから　街に戻る訳？」



「いんや、さすがに、ちょっと向こうで借金返すのは厳しい。ユキが店もやってるし、当面はここで、今ここにあるもの全部つぎ込んで死に物狂いで働くさ」




取り合えず、俺たちは積もる話をしながら、雅也のバーに場所を移した。