465 / 507
第4章 裏切りと脅迫と忘却
閑話休題 椛島 一也の『ぴえん』 前編<465>
しおりを挟む「麗、そいつ、もしかしてソウの従弟の何てったけ、あいつ…」
「カズヤよ」
照明が若干思っていたより薄暗かった。
でも、雅也の顔は、はっきり分かる。
これでは、女性客が単発で居つくはずだ。
店内のカウンター席を3席おきに3人の客が付いている。
俺と麗は一番手前のカウンター席に腰をおろした。
「注文は?」
「私はブラッディメアリ。 カズヤは、モヒート?」
「分かってんじゃん」
間もなく、二つのドリンクが提供され、取敢えず乾杯した。
「このトマトさ。ソウのとこから買い付けたトマトなんだ。 供給途絶えると店の売り上げにかかわるから、頑張れよ」
雅也の言葉に、俺はモヒートを噴き出した。
「あ、マジか?」
「マジだぜ。あのバカ、何やってんだ」
俺は、無言で俯いた。
後悔したって、人生にやり直しは利かない。
今更、もう5ヵ月も前になる、あの日の、あの出来事を、今更どうにもできない事は分かっている。
ソウは、警察。
ユキは、会社を結局退職したと風の噂で聞いた。
せめてもの救いは、雀の涙ながら、退職金が貰えただろうと言う事位だ。
「あのユキが、ソウがやってたバーをやってるの?」
「らしいよ。もう、何か、全部肩透かしで、イヤんなる」
そもそもだ。
ソウも、ユキも、麗も、俺より年上なんだ。
俺がどうにかしようとして、そもそも、どうにかなる相手じゃないのに。
ソウを止めようとした。
ユキの狂気に気付かなかった。
麗の心が欲しかった。
何一つ、自分の思い通りになった試しがない。
そう思うと恨めしくなってしまって、俺はそれを目の前の麗を見つめていた。
「何、恨めし気に見上げるの? 飲み過ぎた? ブランデーにしとく?」
「麗こそ、割と軽めのカクテルのモヒートしか飲んでねえ俺に、ブランデーを勧めるなんて、そっちこそ、酔ってんの」
「ん~ん。引っ掛かるか、試したの。 可愛いね、相変わらず」
コドモ扱いかよ。
全然、俺の事、男として見てねえな。
何で、そんな俺に、カラダ赦したんだよ。
マジ、意味分かんねえ。
「もう、帰る。俺、最近、寝てないから。……酒とか、久ぶり飲んだけど。 今日は眠ぃ」
本心だった。
あぁ、こんなにてっとり早く、睡魔を取り込めるんだったら、寝酒も良いかな。
何て思った。
「雅也、チェック」
「店長、又は、マスターって呼べ。 営業妨害だ」
「ごめんごめん」
今日は俺が奢るところなのに、颯爽とカードで会計を済ませ、店を出ると、雅也に呼ばせたタクシーが店外で待っていた。
本当、全然、俺、立ち打ち出来てねえ。
麗のペースだ。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。
どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。
婚約破棄ならぬ許嫁解消。
外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。
※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。
R18はマーク付きのみ。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる