地味で根暗で残念ですが、直視できないくらいイケメンで高スペックな憧れの先輩に溺愛されそうなので、全力で逃げています。

第4章 裏切りと脅迫と忘却

我がままを良いですか？ 後編＜４４９＞

朝。




冬野さんの部屋の時計は、7時45分。



私は目を覚ますとまた、服を着ていた。



昨夜は遅くて、って言うか、流れでお風呂もシャワーも浴びずに寝てしまったが、全裸で抱き合って眠ったはずだった。



冬野さんも、いつの間にか私服じゃなくてルームウェアだし、私が着ているのはおそらく冬野さんのTシャツで、下はマッパだ。




いつの間にか服を着せられているのも解せないが。



結局、冬野さんは、私を抱きしめて、キスして、触れてはくれたけど。




私を昨夜の一連の話しの通り、私を抱いてはくれなかった。




いや、そもそもだ。



最初に冬野さんが折角抱きたいって言うのを断っておいて。



さんざん、今まで拒んだ挙句、二人で合意の上でさぁって時、私は至らぬ失敗をして中断させてしまった。



冬野さん、何かあの時物凄く、恥ずかしそうに怒ったけど。





あれが致命的にいけなかったのかもしれない。





抱かれたかったのに。




そんな事を考えながら、カラダを起こして洗面所へ向かって洗顔を済ませた。




いつものルーティンでベランダに出て、ワイルドベリーやレモンの木を愛でていると、冬野さんがリビングに起きてきた。





「セイはベランダの植物好きだね。俺とどっちが好き？」



「両方です」




悪戯っぽく笑う私に、冬野さんは顔をしかめた。




「俺、いじけるよ」



「ダメです。いじけないで下さい」




近寄る私の肩を抱いて、冬野さんは私にキスをした。



触れるだけのキスの後、唇を吸って、舌を絡ませて私を翻弄する。




「おはよう、セイ」



「おはようございます、ユキさん」



「早速だけど」





冬野さんはそう言って、また私の肩を掴んだ。



えっ、どうして？！




「な、なんですか？！」



「一緒にお風呂入りたいんだ。 yesかはいで答えてね」




noといいえは何処に行ったんだろう？




「じゃあ……はいで」




私の言葉に、冬野さんは上機嫌で上着を脱いだ。