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第4章 裏切りと脅迫と忘却
我がままを良いですか? 前編<441>
しおりを挟むソウが帰って行った。
リビングに二人残された、私と冬野さんは微妙な感じだった。
着替えてくると言って、リビングを後にして、着替えて来た冬野さんはルームウェアじゃなくて、私服だった。
「家まで送るよ」
泊まるって選択肢を貰えないのか?
私は泣き出しそうだった。
この期に及んでまだ、突き放すのか?
私は嫌だった。
「帰りたくないです」
「帰って、欲しい」
そうですか。
でも、今日は頑張るって決めたんだ。
ソウに甘える事を覚えろって言われた。
確かに、私は冬野さんに、本気で甘えた事何てなかった。
いつ甘えたいと思ったか?
それを我慢したかなんて、思い出せないけど。
私は今、冬野さんに甘えたいんだ。
「帰りたくない」
「何で?」
冬野さんは私に問いかけた。
無表情で、無感情で、冬野さんが、何を思って、何を考えているか全くつかめない。
「この前、カビリアンで別れる時、私、ユキさんともう一度キスしたかった。それが心残りだったんです」
私がそう言うと、冬野さんは、そっと私のところまでやって来て私の前で膝を折った。
ソファーに座る私にかがみ込むように距離をつめ、唇と唇が触れるだけのキスをした。
いつもは、嬉しくて、気持ちの良いキスだったのに。
まるで、冷たいガラスが触れただけの様に、何も感じられない、虚しくて、悲しいキスだった。
こんなキス、嫌だ。
「冷たい……」
私の言葉に、冬野さんは辛そうな顔をした。
どうして、こんなに冷たい態度を取るんだろう。
「俺の唇?」
冷たいのは、体温じゃない。
冬野さんの心だと言う意味だ。
「ユキさん。マキさんが好きなんですか?」
私の言葉に、冬野さんはきょとんとした。
「どうしてそうとらえるの? マキさん、君に何か言った?」
あぁ、もう。
何で。
何で今。
私の事を君って言うの。
「私の事退屈だって。 冬野さんは私に暫く会いたくないはずだって……」
本当は。
と言うか、いつもなら、もう嫌で、苦しくて、面倒臭いから、もうどうでも良いって。
いつもの私なら、冬野さんを振り切って、歩くor走ってこの場を去って居ただろう。
でも、ソウに言われたから。
逃げずに、好きな人に甘えろって言うから。
今日は、私、絶対逃げない。
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